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帝都への帰還

往路で三日かかった道のりは、帰路は二日で済んでしまいました。

今は、僕が御者席で、脇にアラクレイが座っています。

この荷車は楽しいです。

はっはー。


城門をくぐり、帝都に入ります。

しばらく前までは、帝都への入出場は記録の仕組みがうまく動作しなくなったとかで、手続きにひどく時間のかかるものだったのですが、大分改善されたようです。


「前みたいな行列は、なくなったみたいですね。」


「さすがにあれでは商売に差し障りがあるから、厳密な記録はあきらめたんだろう。

持ち運べるような探知の魔道具にも数に限りがある。本気の隠蔽の術を見破ろうと思ったら、相当な術者を何人も交代で張り付けなけりゃならんからな、他の業務が滞っちまう。」


「城門での探知や入出場の記録といえば、都市の魔導機構としては基本的な部分ですよね。それが動作しなくなってしまうなんて、何があったんでしょうね……」


「さあな、そういう事情は、ウラカータの方が詳しいんじゃねぇか?」


帝都の大通りをゆっくり走っていると、凝った機構の魔導荷車に、周囲の注目が集まります。

乗っている僕らがボタクリエ商会の制服を着ているのを見ると、皆納得の表情です。

おっと、この荷車は一般販売の予定はないんですけどね。


土精家の方へ向かっていくと、なにやら屋敷の周囲にまで人だかりがあります。


「今日戻ることは、伝えてませんよね?」


「そうだな。

ミツルギ様も、連絡方法があったとしても、連絡を入れるなら内容や段取りを相談していただろう。それに、何かの催しは、もう始まっているみたいだぞ。」


「屋敷の外にいるのは、普通の市民みたいですね。なんでしょう、皆さん割と楽しそうな顔をしていますね。何かを配っているみたいです。

どうしましょう。ミツルギ様を表に出して、帰還のアピールをしますか?」


「うーん。根拠は俺の勘しかないけどな、何となく、今はまだそのタイミングじゃない気がするぞ。」


「分かりました、まずはこのまま単なる荷物の配送を装って屋敷に入りましょう。」


門番にボタクリエ商会の商紋を見せて、中に入れてもらいます。

邸宅の中から庭まで使って、パーティーのようですね。

外に行くほど身分は低い扱いのようですが、ちょっとした菓子や飲み物が直接の縁のない者にまで配られていて、割と大きな祝い事のようです。


屋敷の裏手から、中に入れてもらいました。

案内は執事の一人ですが、驚いた表情を隠せていません。


「ミツルギ様? どうしてここへ?」


「……あら、私が帰ってきてはまずかったかしら?」


冗談めかして口に出したミツルギ様に対して、執事は気の効いた返事もできません。

「いえ、そのようなわけでは……。そのままパーティーの会場に立たれますか?」


会場に顔を出しては問題があるような、口振りですね。

執事にしては、家の者に対して少々失礼な印象ですが、ミツルギ様も、その事をとがめる様子はありません。

いつものこと、なのでしょうか。


事態を計りかねて、ミツルギ様も黙りこんでしまったので、このままでは身動きがとれません。

困りましたね。

仕方なく、僕が口を挟みます。


「我々は、たった今修行の旅から戻ったばかりでして。ご当主様に帰還の報告を差し上げたいところですが……。」


「おや、そちらはボタクリエ商会の商紋ですな。ああ、ならば問題ありません。では、こちらへ。」


あれ、問題ないんですか。

よく分からないまま、連れられて邸宅の広間に向かいます。


おっと、大勢のお客さんがいらしてますね。

あ、土精家のご当主と、おや、ボタクリエさんですね。

お二人とも、僕たちに気づきました。


「さ、ミツルギ様、出番ですよ。」


声をかけて、送り出そうとしたところ、ご当主が口を開きました。


「おお、コルダ殿! 当分顔を見られぬかと思っておったぞ! さ、さ、こちらへ。」


え? 僕?






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