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ミツルギの帰路

村でケーヴィンに仕立ててもらった魔道荷車は、凝った装飾に斬新な機構を備えたものでした。


車体と車輪周りを別々の魔道具として仕立ててあり、それぞれが風と土の精霊の力で自由に動いて車体を安定させるように働くという仕組みです。

帝国の街道も、主要路以外は石畳が荒れていることが多いのですが、この魔道荷車は、速度を維持したまま滑らかに乗り越えていきます。


アラクレイは御者席に陣取って機嫌良さそうに魔道荷車を疾走させ、街道で荷も持たぬ早馬を追い抜いた時には騎手が目を丸くしていました。


結構な勢いですが、ウラカータは、その脇で平然と世間話に付き合っています。

もう、単なる商売人を装う必要もないでしょうね。


僕とミツルギ様は、後方の客室の中にいます。

魔道荷馬車と言いつつも、荷物を載せる予定はほとんどありません。

ただし、後方の荷台の下、普通の人には分からない場所に、圧縮装置を備え付けてあります。


そう、これは僕らのための専用の荷車! 

むしろ、荷車のような形をしているのは、圧縮装置を誤魔化すための偽装なのです。


この魔道荷車があれば、ダミーの魔道具を一、二点積んでおいて、あとは剥奪して抜け殻を圧縮していくだけで、まとめて貴族の倉庫を回ってしまえます。

ボタクリエ商会のルートでは扱いにくい取引が出てきたときに、僕らが直接出向くこともできるということですね。


もちろん、ウラカータやミツルギ様には内緒です。

ケーヴィンには、ダンジョンに潜っている間に、他にも色々な便利魔道具を作ってもらっていますので、そのうちの一つ、単に巡航速度の速い軽装の馬車と思っているでしょう。


と、またミツルギ様がもの思いにふけっていらっしゃいますね。


「ミツルギ様、霊樹に害をなす魔物の討伐に、ご協力いただき、ありがとうございました。いやあ、霊樹の精霊には、ずいぶん感謝されましたよ……。

ほら、霊樹にいただいた枝と花。これだけでも、ちょっとした価値だと思いますよ。討伐で得た精霊石も、魔道具が作れそうなものが七つに、細かいものは三十ほどもありますか……。」


まだ我々の請け負った仕事は、終わっていません。


移動に片道三日と話してありますので、半月も立たずに帝都に戻れば、正味一週間しか修行していないことになってしまいます。

例のダンジョンは少し時間の流れが早いので、僕らの体感としては、十日間はダンジョンに潜っていたのですけどね。


修行完了と認めてもらうには、ただ強くなったことを示すだけでは難しいでしょう。

というわけで、少々話は盛らせてもらう予定です。


「ミツルギ様、修行の報告の要点は、もう頭に入りましたか。」


「ああ。そのことばかり考えているからな、さすがに私でも覚えるさ。


……我々は、とある村の村長より、新たに生まれたダンジョンの調査を依頼された。

ダンジョンは屋外型の精霊の里で、巨大な霊樹がその場を統治していた。

我々はその霊樹と対話を持つことができ、霊樹から精霊の里を荒らす魔物の討伐を依頼された。

魔剣を使いこなすための修行を重ねながら、里の植物を荒らす魔虫や魔獣を駆除、討伐することに成功した。


で、本当か、と疑いの声が上がったら、反論だな。

里の霊樹からは感謝の印としてこの霊枝を受け取っている。

ここで、枝を持ちあげて見せるんだろ。

また、魔獣を討伐して得た素材や精霊石はこれこれだ。

こっちは、コルダ殿達が掲げて見せてくれると。


で、このような短期間にと疑問を呈されたら、精霊の里では時の流れがこちらとは違っていたようだ、と説明しておくと……」


数分間の演説の筋書きを、ちゃんとポイントを押さえて把握しているようです。

ミツルギ様、頑張りましたね。

そう、あなたは地道な努力をちゃんと重ねられる、偉い人なのです!



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