そして探索へ……
「いやー、前の予定とはちょっと違う形になってしまいましたけど、ダンジョン探索が実現しましたねー。
学園に通っていたころ、模擬討伐戦遊戯で盛り上がっていたんですが、本当に探索に挑戦できるなんて……。
アラクレイさんが避けタンク、ミツルギ様がアタッカー、僕は支援で、ウラカータさんには戦闘以外とバランス取りをお願いする感じですかね。うわぁ、楽しみです!」
「俺も、傭兵や警護の中で魔物と戦うこともあったが、探索は初めてだからな。しかし、自分で作ったダンジョンだろう? 分かっていても楽しみなのか?」
「僕は術を発動させただけで、企画設計はフロイデですし、魔物達は帝国全土から集まってますからね。中身は全然知りませんよ。
魔物も、中に入ってくるときに一度は姿を見てますけどね、ある程度の魔物なら、姿を変えていたものもいるでしょうし、魔素を取り込んで進化したものもいるでしょう。」
「ああ、あの百鬼夜行な……。しかし、ダンジョンの中の魔物に手を出してもいいのか? 霊樹との協定では、お互いに不干渉ということにしたんじゃないのか。」
「フロイデはダンジョンマスターの権限を代行してますけど、ダンジョンマスターも中の魔物を直接支配してるわけじゃないですからね。」
「そういうものなのか?」
「ケーヴィンさんの例があるじゃないですか。ダンジョンマスターの地位を狙う魔物もいるくらいなんですから、言うことを聞かない魔物など、いくらでもいるでしょう。
魔物の側にしても、魔素を食らって強くなりたいとはいえ、代わりに誰かに完全に従属してしまうのでは、強くなる意味が意味がありませんよ。」
「なるほどな。で、どうするんだ?」
「霊樹に、困った魔物を討伐するといって対象を見つくろってもらえばいいでしょう。ミツルギ様やウラカータさんには、霊樹の依頼で困った魔物を討伐するのだと説明しておけば、聞こえも良いですし。」
「ああ、それが、一石三鳥がどうとか言っていた話か。まったく、自分のこととなると知恵が回るというのか……。」
「誉め言葉ですね、ありがとうございます。」
小国の宰相くらいな風格を身に付けていた村長さんには、簡単に事情を説明してあります。
霊樹に従わない魔物を、霊樹と協力して事前に討伐しておこうという狙い。
討伐のために、土精家の剣を受け継いで修業中のミツルギ様を招いていること。
魔道兵器をケーヴィンの工房の地下に運び込んだこと。
今はまだ使えないけれど、ダンジョンから魔物があふれるような事態に備えて、再稼働させられないか研究していく予定であること。
え、そうなのか? というアラクレイの目や、いや、嘘ではないが……というミツルギ様の俯いたうなじ、やはりか! というウラカータの強ばった背筋。
コーダには、どれも目に入っていない様子であった。
そういえば、村長さんの指導者感はますます増していたのに、同じダンジョンマスターのケーヴィンは、なぜあんな方向に行ってしまったんでしょうね……
あれはあれで、迷宮の守護者っぽくはありますけど……
なお、ダンジョン探索編とはならない予定です……
あしからず。