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剣の継承者

さて、ここからは精霊さん達の出番です。

ザオリストさん、このさまよえる悪戯小僧に、引導を渡してやってください。


「キャキャキャ……? なんだ、そいつは……? なんだ……? 覚えのある、波動……?」


「久しいな、おぬしは…… そうか、勇者ムサシの携えていた剣の精霊か。記録があるぞ。」


「キャキ……? お、お前はなんだ…… なぜ俺のことを、初代様のことを、知っている……?」


「知っている、そうとも、よく知っているさ。

ふぅむ。おぬしも、ムサシと一緒に、二度失われたことがあるな。三体目の、再生体として記録が残っておる。まあ、お前さんは、覚えてはいないだろうがね。」


「キ…… キ…… お前! 教会の連中か! 何をしに来た!!」


「ようやく、思い出してくれたようだな。勇者ムサシめ、こんなところで教会の秘術の真似事をしていたとは。

それで。おぬしは、ここで何をしている。」


「何を、だとぅ? 俺は、初代様の残した、この家を、庭を、守っている! 誰にも、渡したりはしねぇ!」


「ムサシは、そんなことを言い残していったのか?」


「キ、キ、キ! 初代様は、この家が大好きだった! 俺と、初代様で作った、この家が……。どいつもこいつも、勝手に作り変えようと、しやがって……。」


「おぬしは、ムサシの思い出を、守りたかったというわけか。」


「誰も! 初代様のことを! 覚えていやがらねぇ。違う、忘れようとしてた。困った者扱い、しやがって……。あ、あんなに、必死に、戦っていたのに……。」


「勇者をめぐる哀しい物語は、わしもたーくさん、知っておるよ。忘れはせん。いや、忘れることを許されておらん。」


「てめぇが、それを言うのか!」


「犯した罪を、自身以上に覚えている者は少なかろう?」


「その罪びとが、どの面下げて、やってきた。」


「思い出すのだ。おぬしの初代様は、何と言っておった。」


「忘れるわけがねぇだろう。こうだ。

『お前はわが剣、わが家。わが魂を継ぐ者を、(たす)けてやってくれ。』

……でもよぉ、いねぇんだよ。初代様の魂が、どこにもよぅ……。」


「気付いておらんのか? お前がどれだけ暴れようと、この屋敷に通い続けた者のことを。」


「あぁ……?

この、ボンクラ令嬢の、ことか……?

こいつは、俺を、この剣や屋敷を売り飛ばそうと、しつこく動き回っていやがっただけじゃねえか。」


「違うな。この娘は、お前を自由にしたがっていたのだ。今の土精家にあっても、お前にはどこにも行き場があるまい。」


「コイツが…!?

お、俺は、俺は……初代様の、剣だ……。自由なんて、要らねぇ……。

だいいち、どうしろってんだ。

俺はダンジョンだ。今と、何が変わる。

知らねぇ誰かを住まわせて、じっと剣を抱えてろっていうのか。」


「それなら、あたしの出番だねぇ。」


「お前は…… なんだ!? どこにいた!?」 


「失礼な奴ねぇ。あたしはアビスマリア。あんたの運命を、もう一度回してあげようってことよ。

ほら、初代様とやらに、あんたも育てられたんだろう?」


「ああ…… 俺は、大した精霊じゃなかった。初代様は、俺を長い間使い続けて、鍛えてくださった。」


「じゃあさ、今度はあんたがこの娘を育てなよ。そしたら、この娘もまた、どこかで次の精霊を育ててくれるだろうよ。」


「育てる……?」


「そうだよぉ。あんたと初代様で終わりの物語じゃないんだ。どこからか続いてきたんだし、これからも続いていくんだ。」


「どうやって、俺がその娘と過ごすっていうんだ。ここに一人で住めとでも?」


「だから、あたしの出番だって、言っただろ?」


どうやら、お話が、ついたようですね。


剣の柄に、手を添えます。

剥奪ではなく、アビスマリアさんの力を借りるだけ。

少しばかり、ダンジョンの、形を変えるのです。


「それじゃ、力を抜いてくださいねー。」


「な!? てめぇ、俺達の言葉が?」





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