見習いの始まり
「夢魔の一族のことは、まあいいわ。
おいおい学んでいくことになるのだから。
それよりも、日々の仕事のことを覚えてもらおうかしら。」
ようやく、お仕事の話にたどり着きました。
「はい。」
「貴方は、まだ何も知らないのだから、最初はつまらない仕事に思えるかもしれない。
でもね。丁寧な仕事の丹念な積み重ね、それが、いい仕事には、欠かせないものなのよ。」
なんだか急にいい言葉な感じで語ってきます。
そして、掃除と、完全に力を失った品物を集めるというお仕事を命じられました。
スミは、別な仕事をするのだと言って、もっと下の階層へ行ってしまいます。
僕は、スミが戻ってくるまで、掃除と品集めをするのです。
ホウキとチリトリ、それに小さな精霊灯を受け取っています。
壁に安置してある品物にかざすと、品物が魔力を発しているうちは、精霊灯が灯ります。
いよいよわずかな魔力さえ発しなくなると、精霊灯も灯りません。
その品物を、同じく預かった袋の中に回収していくだけの、とても簡単なお仕事です。
さて。
少し下の階層へ降りても、スミの気配はなかったので、一つ一つの品物を観察しながら掃除をしていきます。
力を失った魔道具達ということでしたが、中には元気な精霊が残っているものもいます。
元々の力が少なければ、わずかな魔力でも割と平気ということでしょう。
こちらに聞こえているとは思っていないようで、ひとりごとのような歌を歌っている精霊がいました。
「くろかみの、むすめーが、あかがみの、おとこのこーを、つれてきたー。
かまととと、いくじなしーが、であってーも、なにもおこりゃしない。
あーあ、たいくつな、あーなー」
おかしな歌です。
僕らのことでしょうか。
スミの髪は黒く、僕の髪は赤い。
それはいいんですけど、いくじなしって……