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商談会、その陰で

官房長は、部屋に入ると、低い声で会議机を囲む面々に声を掛けた。


「待たせたな。では、これより商談会第二会場の会合を始めるとしよう。議論は形式ばらずに中身のあるものとしたい。情報を得ている者は、遠慮なく発言してほしい。」


帝室官房長、政務大臣ソチモワール、黒の破精部隊長シュッツコイら三人と、それぞれの腹心。

六人の男が、帝室官房長室で再会していた。


「今頃はちょうど商談会の真っ最中か。第二会場と名付けてみたが、本家の方でも別会場まで用意されるほどの盛況だそうだな。」


官房長が、脇の腹心に声を掛ける。


「はい。流行の魔道具を求める貴族、豪商のほかに、街道都市の警備部門関係者が、多数参加しているとのことでございます。」


あえて最初に部下に発言させることで、全員に発言権があることが示される。


「こんな状況でなければ、ワシも見物に行きたかったところだがな。」


ソチモワールが、ふん、と鼻息を吹きながらつぶやいている。

ぞんざいな口調だったが、咎める雰囲気はない。


ソチモワールの方が、帝室の仕事の関係では十年以上キャリアが長い。官房長が若い時分にはソチモワールの下にいたこともあり、二人だけの時にはソチモワールは砕けた口調で話しているのだが、今日は、あえてその姿をさらしていた。


この場が、儀礼を無視した発言を許されるものであることを互いに確認し、やり取りが始まった。


官房長が、応じる。

「私の情報が正しければ、商談会は、この先にも再び開かれる可能性があるようだぞ。私も、その時には参加したいと願っている。」


「ほう。どういった情報なので?」


「裏を取ったわけではないが、ボタクリエ商会と懇意にしている伯爵の一人が、今回の商談会にどうしても所用で参加できず、ボタクリエに直談判していたところ、そう遠くないうちにまた機会があると言われたそうだ。付き合いの長さからしても、全くのでたらめを口にすることはあるまい。」


「なら、儂からも、一つ。」

ソチモワールが発言する。


「なんだ。」


「ボタクリエ商会が、奇妙な取引を貴族たちに持ち掛けているそうじゃ。なんでも、手元の魔道具で処分しても良いものがあれば、引き取ると。それも、精霊石が対価なのだと。」


「魔道具の処分費用が精霊石とは、ボタクリエ商会は少々ぼったくり過ぎではないかね?」


「逆じゃよ。魔道具に、対価として精霊石を出すのだそうな。」


「処分するからには、使用しない魔道具なのだろう? それも、市場で売ることのできない品ということになろう。その対価に、小さいものだとしても、精霊石を? なぜそのような真似を。」


「その貴族がボタクリエ商会に問うたところでは、制御方法を忘れられた兵器が貴族のもとに死蔵されているのは危険なので、回収して封印する事業を行うのだと。」


「いささか気になる話だな。兵器を集めているというのか?」


「いや、回収する魔道具は、魔力さえ高いものであれば種類を問わぬそうじゃ。」


「魔力の高い魔道具か……。何かの方法で魔力を活用できる術があるのか?」


「帝都にも、魔道具や魔石から放出される魔力を回収して蓄える、蓄魔液の研究をしている者がおりましたね。ただ、効率や費用の面から、まだまだ実用の域には達していないはずですが……。」


「目的はともかく、少なくとも、まとまった数の精霊石を手にしているということは確かじゃな。」


「その点も、謎なのです。多数の精霊石が他国から持ち込まれたという情報は、上がってきておりません。ダンジョン産だとしたら、むしろ出所も領主の宣伝文句の一つにしても良いところですが……」


精霊石の出所……。皆が首を傾げたところで、元冒険者でもあるシュッツコイが、声を上げる。


「例の魔物達を、討伐したという可能性は、どうだ。」



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