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取引の打診

商談会は思っていたのと違うものになってしまったし、死蔵品の取引も風前の灯火です。


なんだかなぁ。

アラクレイと二人でたそがれていると、スタッフの一人が、こちらを指差して誰かに声を掛けています。

誰かが来るのでしょうか?


「おや、ボタクリエさんが。」


「ほぅ。貴族様達への挨拶で、忙しかろうに。」


ボタクリエさんが、早足に向かってきます。


「ああ、コルダ様! こちらに!」


「ボタクリエ様、どうされたのですか。何か問題が?」


「ちょっとこちらへ。」


脇の小部屋の一つに、連れ込まれます。

衣装置き場ですね。

アラクレイも、一緒です。


ボタクリエさんが、指輪の魔道具を発動させてますね。

盗聴防止です。

秘密の、お話ですか。


「コルダ様、別件でお話のあった取引の方ですが……」


ですよねー。がっくり。


「魔道具の引き取りの話が、殺到しております。声をかけた貴族家に限らず、本日挨拶をして回る度、ことごとくの家から打診を受けるのでございます。

このままでは、お預かりした精霊石が、今日のうちにも尽きる計算になります。」


へ?

思わず、垂れていた顔を引き上げます。


「ど、どういうことでしょう。皆さん、武器が必要になったんじゃないんですか?」


「明言されたわけではないのですが、どうやら、皆様の家に残されてきた魔道兵器を、今の当主達は、扱えなくなっているようなのです。」


「……それって、武門の貴族にとっては、深刻な問題なんじゃないですか?」


「その事実が明らかになった日には、大変なことですよ。役職によっては、お役御免、貴族の位も降格ということになりかねません。」


「使えないから、手放して、代わりに使える武器を用意しようってことですか……」


「魔道兵器の力は各家の機密ですからね。多少威力が下がったところで、それを指摘できる者はいません。装備の近代化や更新だと言い逃れられます。」


「それに、今日の競売で、精霊石の相場は跳ね上がっている、か。精霊石で支払うってんなら、魔道具の供出は、貴族にとってかなり有利な取引になったってことだな。」


相場操縦してるつもりは、ないんですけれども!


アラクレイが、溜息をついています。


「で、どうするんだ。取引は、追加していくのか。」


「そ、そうですね。いずれにせよ、拡大していくつもりだったのですから、早いか遅いかの違いでしかありません。

では、ボタクリエ様、こちらも預けておきます。百五十ほど入っています。ただ、ちょっと問題がありまして。」


「ひゃ、百五十! ええ、それだけあれば、質は低くても全く問題ありませんとも!」


「いえ、本日出品されているものと比べて、かなり高位の石となっているので、相場や説明をどうするか、考えた方がいいかもしれません……。」


「な……!?」

「待てよ! なんで、ここで高位の石を追加する流れになるんだよ!」


アラクレイが、僕の肩を抱えて衣装の陰で詰め寄ってきます。


小声で、反論します。


「だって、しょうがないじゃないですか。風穴で回収した残りは、ケーヴィンに預けてきちゃいましたし、手元には、例の倉庫で回収したものしかないんです。取りに行く暇は、ありませんよ。これでも、倉庫の分の下位から半分くらいですから……。

 それに、精霊達とも、新たな主を探す約束をしてますから、いつかは手放さないと。」


「後出しでどんどん高位になっていくんじゃ、ますます、この商談会が何かの事前工作みたいじゃねえかよ……。」


「そこは、否定しませんけど……。」


おっと、袋の中をのぞいたボタクリエさんが、呆けたような、形容しがたい表情になっています。


「こ、これほどの石……。何ていうものを、見せてくれるんですか、コルダ様は……。長年商売をやっていますが、これほどの精霊石が、このような数で集まっているのを、わたくしは目にしたことがありません……。」


いや、この先ますます高位の石になっていくんですが!


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