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街道の衛兵の歌

芝居の背景は……街道? 帝国の街道を守る衛兵の物語のようです。

ヒガッシュという領地の名前、そこを治める貴族の名前が、セリフの中でさりげなく繰り返し紹介されています。


竜やら不死の怪物やらが舞台の端をかすめていく演出の中、主役の衛兵は堂々と旗を持ち、剣をかざして歌を歌っています。


うんうん、勇壮で誠実で、忠義と忠勤の塊のような男ですね。

いかなる恐怖にも立ち向かうとか、あなた達を守ってみせるとか……。

え? 終わり?


「アラモードさん、どういう物語なんでしょう? ある領地の街道警備の兵が、一つの魔道具を手に入れたってことですよね? それで、ちゃんと我々は勤めを果たし続けるって、それがどうかしたんですか?」


「……お前さん、気づいてないのか? 竜に、魔物だぞ?」


「ひょっとして、村のダンジョンに来てた奴ですか? でも、通り過ぎただけですよね?」


「んー、なんて言ったらいいんだろうな、帝国の街道を竜が横切るなんてことだけでも、十分あり得ないことだ。

だが、そのあり得ないことが、起こっちまった。

警備を担当する領主としては、何か対策を取って努力してるところをアピールしないと立ってられねぇ。

ところが、肝心の、警戒すべき相手は、いくら探しても見当たらんときた。

それで、この舞台ってわけだ。」


「え、じゃあ、これは、我々は頑張ってますよっていう、宣伝の場に利用してるってことですか? 確かに、出席者には、大貴族から、帝室にゆかりの方々までいらしてますけど……。」


「まあな。魔道具の装備の充実にもこんなに投資してます、って弁明にもなってるわけだが……、この落札額は、もはや精霊石に値付けしてるんじゃねぇな。この舞台に自領のネタを送り込むための、スポンサー料って割り切ってやがるんだ。」


「えぇぇ……。」


「さっき早いうちから勢いよく札を上げてった連中は、最初からそう吹き込まれて来てるんだろう。少しでも競争率の低いうちに勝負を仕掛けたって意味では、いい判断なんじゃねえか? 石自体の価値が上がっちまえば、それだけ競争がきつくなる。意図に気づいて、新たに参戦してくる貴族も出てくるぞ、きっと。」


「僕は、精霊石や魔道具の物語を舞台で見たかったんであって、あんな宣伝芝居を見るために商談会に来たかったわけじゃないですよぅ……。」


「知ってるか? どこかの誰かが帝国領内に巨大なダンジョン作ったせいで、魔物の大移動が引き起こされたらしいぞー。領主も街道の警備隊も、その対応で大わらわなんだろうなー。

……宣伝芝居がなかったとしても、しばらくは戦闘用の魔道具の引き合いに圧倒されちまいそうだ。」


ぐはぁ。

自業自得だっていうんですか……。


「うーん。あれ? そうすると、例の昔の兵器たちも、取引は中止になっちゃうんですかね……」


「連中が本気で備えるなら、そういうことになるんだろうな。今回出品されてるような精霊石で作れる魔道具じゃ、正直、力不足もいいところだろ。」


「ですよねぇ。さっきの石で冷気の魔道具作ったとしても、竜のブレスの前じゃ焼け石に水ですもんね……。」


その後も商談会は大いに盛り上がり、驚異的な入札額が続いていきました。

それでも、僕達の気持ちは、すっかり盛り下がったままなのでした。


「ああ、いったん、休憩に入るみたいですね。」


「次の幕からは、ある程度魔力のある石だろう? 」


「ええと、そうですね。風穴の最下層でも魔力の高かった魔道具や、最下層以外から回収したものが混じってます。ここからは、本当に魔道具目当てのお客さんだと、期待しますよ……。」


客席からいったん離れた貴族たちが、それぞれに休憩所に向かったり、壁際の空間で語り合ったりしています。

どんな話をしてるんでしょうね。どの石を狙うか、どんな魔道具を作ろうかって話なら、ぜひ聞いてみたいところですけど……


貴族達の間を、飲み物を載せたトレイを運びながら、忙しく給仕の者たちが歩き回っています。


ふと、思いつきました。


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