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最初の競り

おお、一幕目が、始まりました。


一点目の精霊石は、風と水の精霊を主に宿す、涼やかな薄青の石ですね。

淡い光の演出の中、軽やかな音色で舞台が盛り上げられています。

美しい女性の踊り手が、水と氷をモチーフにしたアクセサリーを身に付けて、高原の湖でしょうか、そんな幻想的な風景の中でたたずんでいます。

周囲に、同じく美しい女性たちが数名、ゆっくりと踊りながら囲んでいます。


おや、場面が変わって……、強い光とオレンジの背景、どうやら暑く乾いた陽射しが照り付けているということでしょうか。他の女性たちが、力や生気を失ったようにうなだれた踊りとなっていく中、主役の女性だけが清楚な雰囲気を保っています。

ああ、あのアクセサリーの力で、踊り手の周りだけは涼やかなまま、美しくたおやかに居られるというメッセージですね。なるほど、分かりやすい。


ボタクリエさんに最初に渡した石たちは、風穴の最下層に大量に廃棄されていた生活用の魔道具から回収したものです。

今舞台で紹介されている石は確か、冷蔵の魔道具に使われていた精霊ですね。

それほど大した魔力ではなかったと思いますが、穏やかで安定した精霊でしたし、一点目ですから、手頃で扱いやすいものから徐々に盛り上げていくということなんでしょう。


精霊さんも、最下層から脱出してきて、こんな舞台で紹介されるなんて、よかったですねえ。

転生成り上がり物語の始まりですよ。


お、競りが始まりました。


「ねぇ、アラモードさん。」


「……なんだ。」


「この出品目録に、開始価格とか、想定価格とか、書いてあるじゃないですか。」


「……おう。」


「札の数字が、想定価格から、五倍くらい多いんですけど、僕の読み間違いでしょうか?」


「……あれだけの人数が、一斉に間違えて札を挙げるなんてこと、ねぇよ。」


「あの石って、別段高位のものじゃないですよね。」


「……そうだな。目録の中でも、下から数えた方が早い。」


「先ほどの演出は素敵でしたけどね……。」


舞台の裏の方でも、事務方は興奮気味に数字の話をしているようです。


「変な術とか暗示で競り上げているとか、そんなこと、ないですよね?」


「ボタクリエのおっさんは、商売でそういうことするタイプじゃなさそうだがな……。

だいたい、大物貴族たちを集めてそんなことしたら、発覚した日には帝国どころか大陸中に居場所がねえよ。」


落札者が、決まったようです。

想定価格の実に八倍。

会場で、どよめきが起こっています。


司会者のアシスタントが、落札者の下で話を聞いています。

見たところ、身元を隠すような感じではありませんね。

貴族のようですが、着ている服は、制服か軍服のようなデザインです。


聞き取った話が、念話の魔道具で舞台裏に伝えられてきます。

掲示板に情報が次々と表示され、それを脚本家、配役担当が一瞬のうちに打ち合わせて筋書きをまとめていき、さらに衣装担当や楽団に指示を出していきます。

三分ほどの間に、芝居が決まったようです。


護衛役だった若手の俳優がメインに抜擢されたようで、「俺が!?」と興奮しています。

数人のスタッフが走り寄ってきて、化粧や衣装をあっという間に変えていきます。

地味だったはずの一護衛が、あっという間に、きらびやかな正装の剣士に。

掲示板に表示されているどこかの貴族の紋章も、ちゃんと盾に反映されています。

武闘気さえまとっているような、魔道具の演出です。


すごい! この舞台裏を見られただけでも、来た甲斐がありますよ。


さっそく、幕が上がって芝居が始まります。



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