商談会、開幕
本日二投稿です。
「おおお、こいつは大した催しものだな、コルダよぉ。
建物も豪勢だが、会場の小物も、どれもこれも凝った作りの魔道具ばかり。
これぞ帝国の贅の精髄って奴か。
おお、あのオネェちゃんは、雑誌で見たことあるぜ、ホンモノはさらに美人じゃねぇか!」
「アラモードさん、あまり騒がないでくださいよ、恥ずかしい。それに、皆さん忙しいんですから、邪魔にならないようにするんですよ。」
一流の貴族が集まる催しとなると、その出演者やそれを支えるスタッフも当然一流どころ、裏方のスペースを歩き回っているだけでも、なかなかの華やかさです。
照明や楽器など、演出用の多種多様な魔道具も数多く準備され、その精霊達まで華やかな声を上げています。
「ちょっと、あの新入りの照明装置、私よりメイン寄りの場所に設置されてるってどういうことよ! 歌姫を照らすのは、私のはずでしょうに!」
「いいかい、君たち、僕のリードに従っていれば、いいんだからね。僕の調べをよく聞いて、その身をゆだねてごらんよ……。」
「はぁい、わかりましたぁ。」
華やかながらに、色々と大変そうです。
石の選び方なのか、製作者の性格が反映されるのか、それとも使われているうちにそうなっていくんでしょうか。
お、ちょうど開幕の挨拶にボタクリエさんが向かうところです。
さすがに緊張してそうですね。
ちょっとリラックスできるように、応援の一言でも掛けてきましょうか。
「コルダ、どこに行く?」
舞台袖に向かって歩き出そうとした僕を、アラクレイが肩を掴んで引き留めます。
「え? ボタクリエさんが緊張してるみたいなんで、何か声を掛けてあげようかな、って。」
「悪いことは言わんから、やめておけ……」
「そうですか? ああ、もう行っちゃった……。」
挨拶の機会を、逃してしまいました。
アラクレイは、何が言いたかったんでしょう。
また、後でタイミングがあるでしょうけど。
ボタクリエさんの挨拶は、堂々とした中にユーモアがあって、会場の空気はいい感じに盛り上がっていました。
僕の声掛けが無くても、大丈夫だったようですね。
しばらく前までは、僕も招待したりされたりする側にいたので、大きな催し自体にはそこまで驚くことはないのですが、魔道具の商談会でこんなに大規模なものは、かなり久しぶりだそうです。
僕も、商談会を見るのは初めてです。
第一部は、今回出品される精霊石から数点と、付与術士の紹介を、芝居仕立てにしたものです。
こんな魔道具を作ったら、こんな素晴らしい日々が送れますよ、という提案のメッセージですね。
ウラカータさんに聞いたところでは、高位貴族のパーティーが近々予定されているので、それに向けてのアクセサリーやドレス、あるいはそこで見初めた相手に贈るためのギフト、その辺りを中心に、物語のレパートリーが用意してあるみたいです。
主要な石と付与術師は、一点ごとに競売が行われて、そこで何を作るか構想を語ってもらって、それをまた即興で芝居や歌にするという趣向だそうです。場合によっては、その場で魔道具を作り上げることもあるのだとか。
過去に行われた商談会では、美しく輝くドレスをその場で織りあげて、それをまとったご令嬢を参加者に紹介して見せたり、素晴らしい祝福を帯びた指輪と加護を与える花束を魔道具で作り上げて、その場でプロポーズを行ったり、そんな優雅な出来事もよくあるそうです。
はー。やっぱり、見に来て良かったですね。
楽しみです。
おお、一幕目が、始まりますよ!