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死を買う商人

本日二話目の投稿です。

あどけない表情で、問題の件に切り込んでくる。

少しずつでも、正直に話すしかあるまい。


「反応はございました。強力な魔道具の提示が来ております。ただ、どれも、古かったり、使い手を選ぶものだったり、あまり実用性のないものばかりでして。」


「ああ、それはもちろん、そういう品こそまさに私の求めているものですから。

で、どのような品が?」


話をそらさせる気もないか。

ならば、敢えて、極端な例を示すとしよう。


「正直に申しましょう。例えば、大量の破壊兵器です。先の、魔王討伐戦争時代の。」


ああ、わしは、見てしまった。

子どものようにはしゃいで笑みを浮かべる、その瞳の奥に、本当は異なる色があるのだということを。


ボタクリエは、机の手元にあったグラスを掴み、勢いよく飲み干す。


「……しかし、私は、このように強力な兵器を大量に集めることに、少々恐れを抱いているのです。」


「恐れ、ですか。何を恐れるのです?」


今さら、手を引くことなど許されるわけがないか。


「私どもは、ご存知の通り、貴族向けの装飾品や身の回りの工芸品、インテリアなどを主に手掛けてきた、いわば雑貨商でございます。

強大な武具や兵器などというものと、すっかり縁のない商売をしておったものですから。」


「死の商人のようなふたつ名の付く、風聞を恐れますか。

なるほど。これは、確かにボタクリエ様にとっては聞こえが良くないかもしれませんね。

可憐なアクセサリーを売るはずの商人が、魔物を殺す斧や槍を集めて回っているというのは。」


コルダは、ふぅむ、と首をひねって考えている。

ボタクリエとしては、名を惜しんでいるわけではないが、訂正を言い出せずにいた。


「では、こうしましょう。

ボタクリエ商会はとしては、これは『平和のための歩み』であると称してください。危険な兵器を持ち寄っていただければ、平和のための協力への感謝として、精霊石や魔道具を差し上げる、と。

 やっていることは変わりませんが、ボタクリエ商会は、世の中から過剰に危険な兵器がなくなることに尽力していることになります。死を売る商人どころか、死を買い上げる商人ですよ。」


「は……? 平和のための、歩み、ですか?」


「実際に使えもしない巨大な武力など、愚かしいものです。万が一、暴君のような者が手に入れたら、危険極まりない代物でしょう。それならば、回収して、安全なものにしてしまえばいいではありませんか。」


「安全といっても、どうするのですか。」


「風穴に似たような施設に、心当たりがあるのです。」


「ほう!? 風穴は、今受け入れを中止していると聞いています。あのような貴重な施設に、代わりになるものがあるのですか。」


それは、初耳の情報である。

並みの商人であれば、これだけでも一世一代の勝負をかけるに足る材料といえる。


魔道具の廃棄に困っている話は、帝都のどこにでも転がっているのだ。

いち早く回収と運搬廃棄の段取りを付ければ、かなりに広い範囲の顧客を囲い込めるはずである。


「しかし、コルダ様の知るところとなると、相当に遠いのでしょう?」


「そうでもありませんよ。ええ、荷馬車の足でも、三日もあれば着くでしょう。」


「まさか、帝国の内部なのですか!?」


驚いて立ち上がった拍子に、ボタクリエはテーブルに置いていたグラスを弾き飛ばしてしまう。

転がり落ちかけたグラスをするりと拾い上げて、コルダは微笑みながら告げる。


「興味がおありのようですね。では、集めた魔道具を持って、一緒に行ってみるのはいかがですか。」


ああ、つまり、この情報が対価であると、そういうことか。



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