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商談会、三日前

いよいよ魔道具の商談会も間近。

ボタクリエ商会では、事務所も会場も、最後の準備に忙殺される人々がひしめき合っていた。


「ふぅ……む。」


ボタクリエは、商会の執務室で、二つのリストを眺めている。

一つは、商談会への参加者の名簿。


商談会への招待には参加の希望が相次ぎ、招待状を送っていなかった、日ごろ付き合いのなかった貴族や商家からも問い合わせが続いている。


今のところ、今回は内々の商談会として断りを入れているが、付き合いの深い家の口利きがあれば、断るのも難しくなるだろう。


付き合いの深い客たちも、ここぞとばかりにその口利きの価値を引き上げて、参加したい客の気持ちを煽っている頃合いだ。

明日あたり、口利きの申し出が次々と舞い込むに違いない。


当然、駆け込みの客も織り込み済みで会場は準備している。

仮に主催会場に入れなくとも、別会場に滞在して競売に参加してもらえる仕組みも想定済みだ。


貴族を中心とした会場内の客に対しては、舞台による演出をステータスとして感じてもらい、豪商を集めた別会場の客には会場内の客を資金力で凌駕することによって周囲の人間に印象付ける場を設けるという、二段の構成をボタクリエは企画しているのだ。


準備は忙しいながらも順調に進んでいるが、想定外の状況も発生している。


それが、もう一つのリストの中身である。


「むうぅ……ん。」


商談会への招待と並行して打診していた取引の方で、秘蔵の家宝と称する魔道具の放出の申し出が、予想よりもかなり多いのだ。


死蔵の品があれば、ものによっては精霊石と引き換えさせてもらうという消極的な打診の形を取っている。


あくまでこちらに主導権があり、引き取る品や対価を設定できる条件となっており、申し出が多いことは歓迎すべきことなのだが、その内容に偏りがあることが、いささか気になっていた。


古式の強力な装備品、討伐戦争時代の砲撃兵器、他にも、発動に複数人の術者を必要とはするような大規模な魔道具、大量の魔石を消費し機密扱いのはずの魔道具など、貴族でさえ用法に苦しむような品が多いのだ。


当然、一般に流通するようなものでもなく、相場など存在しない。

ボタクリエ商会でも取引のノウハウがなく、鑑定はしたものの、担当している歴戦の従業員達も、どうリストに説明を付すべきか、苦心の跡がうかがえる。


ボタクリエとしても、「個人携帯用対戦車大型魔道弓。魔力量AA+、千三百メルテル先の重魔道装甲を貫通したとの伝承あり、ただし使用者は極めて高位の弓術士に限られる模様。外形に軽微な損傷無数、中規模修復跡あり。」などといった品の対価をどう設定したらよいか、明確な指示を出せずにいた。


コルダからは、魔道具は強力であるほどよく、用途や使い勝手の悪さ、一般的な評価や人気の有無は問題としないという話を聞いてはいる。


しかし、いかになんでもこのような品、どこにどうやって販売するというのだろうか。

そもそも、これらの武具や兵器を集めて国外に持ち出すことなど、通常であればとても許可されるものではないだろう。


コルダは、個々の取引相手とは一切顔を合わせないと明言している。

名前も出さないことになっている。

取引の表に立つのは、あくまでボタクリエ商会だ。


「これではまるで、謀叛の私兵を準備しているようではないか。」


ボタクリエは苦笑し、そして背筋がヒヤリとするのを感じる。



ブックマーク、感想、ありがとうございます!


だんだん、自分に書けるものが分かってきた気がします。

ご指摘等いただければ、もう少し成長したりするかもしれませんので、よろしくお願いします。



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