列を成す異形達
とりあえず、アラクレイを探します。
確かに、村の周囲は静かなものです。
獣や鳥の声、虫か何かの得たいの知れない音が多少聞こえますが、人の悲鳴はありません。
探知にも、激しく動き回っているような反応はないですね。
小走りに駆けていくと、見えてきました。
異形のものから獣から虫から、中には霊体に見えるものまで、たくさんの怪物がおとなしく列を成しています。
おとなしく……
「あ、いた、アラクレイさーん!」
アラクレイと数人の武装した人達が、奇妙な顔をしてたむろしています。
「どうなってるんです、これ。」
「いや、分からん…… さっきから、どんどん集まっては来るんだが、暴れる気配はないんだ…… むしろ、こっちから手を出しても無抵抗なくらいだ。」
「え? 魔獣暴走とか、そんなんではないんですか……。」
「逆よ、逆。ダンジョンから出てきたんじゃなくて、ダンジョンに入りたくて来たのよ。暴れたら入れてやらないって言ってあるから。」
アビスマリアさんの声です。
「どういうことですか?」
「コーダ達がダンジョンを造ったから、中に住みたがってるの。」
「ダンジョン?」
「さっき造ったじゃない。二つも。
特にコーダの方は、派手に力を働かせたから、結構上位の存在まで集まってきてるわよ。」
「ダンジョンを、造った……んですか、僕ら。」
「ダンジョンコアの力って、自分で言ってたじゃない。」
「それで…… ダンジョンは、魔獣を呼ぶんですか……」
「ダンジョンの魔素があれば、魔獣や霊は成長したり繁殖したりできるのよ。
追い散らしてもいいけど、その場合、魔素が溜まっちゃって、別な何かが生まれちゃったりするから、おすすめはしないわね。」
「……おすすめを、聞いても?」
「あたし達は旅に出るんだから、ここの村長さんをダンジョンマスターにしたら? そんで、魔獣達の居場所はもっと地下の奥の方に造っておけば、素材なんかも採れていろいろ役に立つわ。」
「村長さんが、ダンジョンマスター……? 素材……?
ケ、ケーヴィンだとどうでしょう。」
困ったときには、ケーヴィンです。
「あの人は、もうあっちのマスターに成ってるもの。二つ掛け持ちって、おすすめできないわぁ。
どうしてもっていうならできなくはないけど、あたしは一つのダンジョンに尽くしてくれるマスターがいいかなぁ。」
好みの問題なんでしょうか?
それより、ケーヴィンさん、あなたすでにダンジョンの主ですってよ!
「ちょっと、村長さんと相談しましょうか……。」
「言っとくけど、造ったダンジョンは壊さないわよ。」
「そうなんですか……?」
「あのダンジョンだって、小さくても精霊が宿ってるのよ? あたしの子供みたいなものよ? ああやって、魔獣達だって祝福してくれてるのよ?」
これは…… 邪魔だから要らないなんて、言えませんね……
「さっき造ったひと部屋は、僕の想い出の中のものを再現したんです。大切に思ってますよ。」
しかし……、村の中にダンジョンって、魔獣や亡霊が住み着くって、ホントにいいんでしょうか……?
アラクレイの方を、ソッと見てみます。
どうして、何もかも諦めたような暗い目をしてるんですか!