魔獣の群れ
「なんでしょう? 村の周囲に、いっぱいいますね。村の人?も、ところどころに。」
アラクレイの顔色が変わっています。
「やばい気配がする! ケーヴィン、使えそうな魔道具用意しとけ! コーダ、魔獣の襲撃かもしれん、付き合え!」
「ええぇ… あれ、魔獣ですか!? あの数ですよ? どうやって二人で相手するんですか……」
僕も、食べ物を狩ったり、身を守り生き残るという技術は鍛えられているのですが、たくさんの魔獣を撃退するなんて戦いは、やったことがありません。
派手な術を使うだけなら、魔石もありますし、ぶちかますことはできますけど、こんな村の近くで激しい火の渦とか巨大な炎の壁とか作り出したらどうなるか、火を見る前から明らかですよう……
「村で、戦える連中も出てるみてぇだ。放っておくわけにはいかねえだろう。」
そりゃ、そうですけども!
びびっている僕と、戦いに備えて予備の武器などを装備し始めたアラクレイに向けて、アビスマリアさんが冷たく言い放ちます。
「魔獣でしょ? 手を出さずに、放っておけばいいわよ。」
アラクレイが、ギラリと目を光らせて、ケーヴィンを睨みつけます。
「お、俺じゃねえよ、奈落の聖女様が言ってんだよ。」
言いながら、目をそらしたまま、僕にアビスマリアさんを渡してきます。
全然さりげなくないですよ。
「わかりました、アラクレイさん。行きます。
その代わり、少し待ってください。」
ケーヴィンさんから、アビスマリアさんを受け取ります。
「今から、村の人たちのために、避難所を作ります。村の人たちが、そこに逃げ込む、そのお手伝いをする。それくらいなら、僕にもできることがあると思います。」
怖い顔をしていたアラクレイが、ニヤリとしました。
「そう来たか。それじゃ一発、でかいハコを作ってやろうじゃねえか。」
アラクレイが、ついて来いと合図して走り出します。
向かった先は、村長の屋敷の前。
「ここの村長の家は、集会所を兼ねてる。この村で一番大きな建物だ。戦えない連中は、そこに逃げ込んでるはずだ。だが、でかいだけで頑丈でもなんでもねぇ。その地下に、立てこもれる部屋を作ってやってくれ。
ケーヴィン! お前は、村長に説明してこい。俺は、外に出てる連中に声を掛けてくる。建物に被害は出るかもしれんが、金で片付くことならどうにでもなるだろ?」
確かに、この村の家屋敷程度、百回買い占められる資金があるはずです。
「アビスマリアさん、力を借ります。全力で行きますよ。」
「別に、放っておけばいいのよ……?」
アビスマリアさんは、まだブツブツ言っているようです。
アラクレイを怒らせたくはないのか、僕にしか聞こえない声ですが。
さぁ! ダンジョンコアの力、僕も使ってみます! むしろ、使ってみたかった!!
「ま、ダンジョンを作ってみたいっていうなら、あたしは別にいいんだけどさ。」
「じゃあ、行きますよ、アビスマリアさん!」