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官房会談室にて

副隊長とともにシュッツコイが通された先は、帝室官房の会談室であった。


官房長室ではないのか? 常とは異なる部屋の光景に、シュッツコイは少し疑問に思う。

そこに現れたのは、政務大臣と供の者だった。

ソチモワール、だったか。


直接話したことはないが、何度か見かけたことがある。

太っていて、いつも汗をかき、目線は落ち着かず、一言でいって挙動不審な男という印象だった。


今日も額に脂汗をにじませ、足は心なしか震えているようにも見える。

だが、大臣にまでなった男で、信任も厚いと聞く。

読めない奴だが、油断できない相手とみるべきだろう。


平時の帝室では、総じて軍事警察部門は文官達を優位に置くこととなっている。

こちらから、儀典に従った礼を示しておく。


ソチモワールは、丸々とした手をブルブルと震わせ、礼儀などどうでもよいという態度を示している。

今回のニングルムの失態を、何かの取引にでも使おうというのだろうか。


「シュッツコイ殿。我らはともに帝室に忠義を誓う立場。帝室を脅かす如何なる影をも、許してはおけぬ。その点は、黒の破精部隊長(ニングルム)の名に懸けて、誓えるか。」


何を言いたいか分からないが、少なくとも帝室への忠義について異論はない。

右手を胸に、うなづいておく。


「しかるに、貴殿らニングルムは、なぜに帝都で黒の系統の力を振るったのだ。」


む。何のことだ。


帝都の中とて、警備や調査の関係などで、手の者が術を使うことはあるだろう。

政務大臣自身を監視対象とすることは禁じられているが、政務大臣に接近を図る危険人物などが内偵対象にいれば、身辺をうろつくことはあるやもしれぬ。

それを、気取られたということか?


「すまぬが、末端の工作員の動静まで把握しているわけではない。何か、不快な思いをさせたのであれば謝罪の用意はあるが。」


「不快か……そのような言葉では、片付かぬな。あのような破壊工作が、なぜ行われたのか、その釈明が必要であろう。」


破壊工作か……

少なくとも、イジュワール様の通信網が生きていた時点では、帝都で目立つ破壊工作を行うような打診はなかった。

部隊長まで上がらないレベルの内容だが隠蔽に失敗したか、術に失敗して派手な痕跡が残ったのか。


「帝都での破壊工作の予定は、聞いていない。いつ頃のことであろうか。」


「一日前の早朝のことだ。予定がなかったというのなら、緊急対応であろうか。シュッツコイ殿のもとには、報告が上がっておらぬのか。」


くそ、通信網が途絶えた後のことか。

何の情報も持っていないことを、ごまかすのも無理がある。


「通信の不具合で報告を受けられていない可能性がある。差し支えなければ、事案の内容を、教えていただけないだろうか。

 いや、その前に、私は官房長から出頭命令を受けている。あまり時間を取られるわけにはいかないが。」


「官房長のもとへは、私も一緒に行くことになっている。どのように事態を報告するか、シュッツコイ殿の言葉にかかっているのだ。」


官房長のもとへの出頭に先駆けて、駆け引きのつもりか。

何かを差し出せば、この度の失態に、口添えでもするというのか?


「分かった。続きを聞くしかないようだな。」


ソチモワールは、うなづき、ゴクリと喉を鳴らした後に口にした。


「そなた達には、帝室への反逆の疑いが掛かっている。容疑は、帝国の秘術に対する、破壊工作だ。」


「は? は!?」


副隊長も、これほどに目を丸くした部隊長の顔を見たのは初めてであった。


「事情を、説明してもらえるな、シュッツコイ殿よ。」



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