風穴の中
「それで、仕事というのは何をするんでしょう。」
内心は期待に打ちふるえつつ、不安と緊張でふるえているかのように装います。
実際、緊張はしているのですが。
「おいおい、そんなにビビるこたぁねえよ。何も呪いのアイテムがわんさと並んでるわけじゃねえんだ。
仕事ってのも、あれだ。ちょっと掃除したり、整理をしたり、なんだ、爺や婆の話し相手になってやったり、お供え物したりってくらいなもんだ。」
アラクレイは頭をかきながら、たどたどしく話しかけてきます。
僕に気をつかってくれているようです。
「真っ黒な穴にちょっとびっくりしちゃっただけで、大丈夫です。
これからお仕事をするんですから。さ、行きましょう。」
イーオットとムクチウスが、うんうん、と頷いてくれています。
風穴の脇に造られている、フタのような扉で地下に向かいます。
アラクレイが手のひらを当てると、魔法紋が光ってカギが外れた音がしました。
扉は手動、中はハシゴです。
フタのような扉を閉めると、中は真っ暗になってしまいます。
三人とも、精霊術の小さな明かりを灯します。
僕も、真似をして明かりの術を灯します。
何も術が使えない振りをするのも、先々説明が苦しくなりそうですからね。
それにしても、やはり、ここでは魔道具はほとんど使われないのですね。
きっと、この風穴や夢魔の島を建設した人も、魔道具の中の精霊の声が聞こえたのでしょう。
僕と同じように。
ハシゴをしばらく下りると、行き止まりになって扉が壁についています。
アラクレイが扉を開けると、中は上からの光が照らしていました。
風穴は、上からの光は入ってきているようです。
らせんのように、風穴にそって人が何人か通れるくらいのくぼみが掘ってあって、そのくぼみの壁に、色々な魔道具があります。
壁にかけてある武器やお面、さらにくぼみが掘ってあってその中に収めてある指輪のような小さな品々。
雑貨のお店や、学院の博物館のようです。
ほとんどの品物がくすんでいたり、歪んでいたり、さび付いていたりすることをのぞけば。
最後にハシゴを下りてきたイーオットが、後ろ手に扉を閉めてから説明してくれました。
「ここが、風穴です。この螺旋回廊が、ずっと地下深くまで、続いて行くんです。」