風穴
風穴と呼ばれるその穴は、魔道具の捨て場であり、精霊の安置所であるそうです。
ちょっと驚きました。
――いえ、見栄を張りましたね。
ものすごく驚きました。
このような場所があることと、自分が魔道具の最後の行く末に、関心を持たずに来たことに、です。
力のある貴族のところで使われているような魔道具は、壊れるか、用が無くなったら下位の貴族やお金持ちの商人たちに払い下げられるか、どちらかです。
魔道具が壊れると、封じられていた精霊は、依り代を失ってあばれまわり、最後にその魔力を全て吐き出して消え去ります。
ほんとうに低位の精霊の場合、最初から「使い捨て」の道具にしかされません。
火種や飲み水を作りだすような、生活魔法の道具です。
魔力を全て吐き出して、ようやく目に見えるような現象になるのです。
逆に、高位の精霊を封じた魔道具が、力を残したままで壊れると、下手をするとダンジョンや町の一角が吹き飛ぶこともあると読んだことがあります。
なので、魔道具が壊れそうでこれ以上使うわけに行かなかったり、使い道はないけれどまだ力が残っているばあいは、危険なので、人が住むような場所から、遠ざけておく必要があるのです。
この場所の、役割が見えてきました。
魔道具の捨て場といっても、本当に壊れていれば、ただのゴミです。
わざわざこんな風に封じ込めておく必要はありません。
僕がやろうとしているこの仕事が、この魔道具たちを管理することだとしたら、ちょっと、どころか、大変なことになります。
鳥肌が立って、お腹の辺りから、ヘンなふるえと熱さが上がってきました。
思わず、動きを止めたまま、考えをめぐらせてしまいました。
いけない、僕としたことが、これは不自然なふるまいです。
「なんだか、不気味な穴ですね。この中に、魔道具がたくさんおいてあるのですか? それで、仕事というのは何をするんでしょう。」
少し不安げな表情をうかべて、確認してみます。
いや、ホントにこれは、どうしよう。
僕は、とてつもないお宝の山に、出会ってしまったのかもしれません。