表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北極星を探して  作者: 恋風路とも依
2/3

ACT2 二日目

         ACT2  二日目





昨日と同じ公園。

ベンチには祥子が座っている。

子供のはしゃぐ声。


彼女の足元にサッカーボールが転がってくる。

しかし、彼女は拾わない。

そこに子供が走ってきて、ボールを持ってまた走っていく。

彼女は子供の後ろ姿を見つめる。

そこに幸恵が来た。


幸恵    時間あったの?

祥子    なかったら来てない。

幸恵    そうね。

祥子    なんか大変そうね。

幸恵    なにが?

祥子    子育て。よくあんな面倒くさそうなことするよ。

幸恵    ?

祥子    なんていうんだっけ?あの……あれ。

      あ、公園デビューだっけ?やっぱり偉そうな主婦代表みたいなやついるの?

幸恵    (少し笑って)いるね。

祥子    やっぱ、いるんだ。

幸恵    どこでもそうでしょ?そういうとこは昔と変わんないよ。

祥子    ……。

幸恵    あ、ごめん。思い出しちゃった?

祥子    嫌なこと思い出させないで。

幸恵    ごめん。

祥子    もっと別の話ないわけ?

幸恵    そうだね。

祥子    こっちは休憩返上で来てるのよ?

幸恵    それじゃ、本題。

祥子    本題?

幸恵    母親の悩みとかって興味ない?

祥子    は?

幸恵    ほら、現役主婦の悩みなんて聞くことなんてそうそうないでしょ?

祥子    ……いや、そういうことって……。

幸恵    (少し笑って)深い付き合いがないから、話せることもあるよ。

祥子    ……まぁね。

幸恵    祥子さ、全部いらなくなる時ってない?

祥子    え?

幸恵    なんとなくでもさ。

祥子    ……。

幸恵    あの子、今父親いないんだ。

祥子    ……。は?

幸恵    うん、先月離婚して。

祥子    ……。

幸恵    うん。驚いた?

祥子    そりゃ……ね。

幸恵    最初はね、一人で育てるんだって頑張ってたんだけど……。

      いや、むきになってたのかな。

      だんだん、なんか……辛いって言うか、後悔してんだよね。

      離婚するんじゃなかったって。

祥子    ……。

幸恵    うん、後悔。

祥子    ……いいじゃない。

幸恵    え?

祥子    自分が決めたことなんでしょ?

幸恵    うん。

祥子    少なくとも離婚したその時はそれでいいと思ったんでしょ?

幸恵    ……。

祥子    ……違うの?

幸恵    わからない。

祥子    後悔の波になんて飲まれないでよ。自分で決めたんでしょ?

      後悔なんてね、自分が前に進むための道具にしちゃえばいいのよ。

幸恵    ……そうかな。

祥子    そうよ。

幸恵    親ってさ。

祥子    ん?

幸恵    道標だと思うんだよね。

祥子    道標?

幸恵    少なくともやりたいこととか見つかるまでは。

      そのかたっぽ奪っちゃったのかもなって。

祥子    ……。

幸恵    どうしよう。

祥子    捜せば?

幸恵    え?

祥子    道標。捜せばいいじゃない。

幸恵    ……。

祥子    子供に理由見つけようとする前に、自分のやりたいようにすればいいじゃん。

幸恵    やりたいことやったらこうなったのよ。それに、捜して見つかるものじゃないよ。

祥子    じゃあ、迷わないでよ。

幸恵    迷う?

祥子    自分のやったことに迷うくらいなら最初からしちゃ駄目。

      でもね、やっちゃったなら、それをチャンスにして前に進めばいいのよ。

幸恵    前に?

祥子    ある意味道標がないなら、どこに行ったっていいじゃない。

幸恵    ……。

祥子    進まなきゃ。

幸恵    祥子は、強いね。

祥子    ……。

幸恵    私は駄目だなぁ。


幸恵、うつむく。

祥子は、そんな幸恵を見て、

何か思いついたように、

かばんから一冊の本を取り出した。


祥子    これあげる。

幸恵    なにこれ?

祥子    地図。

幸恵    なんで?

祥子    道標見つけるまで、それ使いなよ。

幸恵    迷子になりそうだね。

祥子    何もないよりいいでしょ?

幸恵    それもそうだね。


遠くから子供のはしゃぐ声が聞こえた。

よく聞くと、喧嘩が始まったようだ。

しばらくすると、はしゃぎ声は泣き声に変わった。


祥子    あ~ぁ、また泣いてるよ。

幸恵    そうね。

祥子    行かなくていいの?お母さん。

幸恵    そうね。行ってくる。

祥子    じゃね。


幸恵は子供の方へ向かうが、

ふと足を止め、


幸恵    祥子、ありがとね。

祥子    また来るよ。

幸恵    うん。


幸恵、振り返らずに去る。

祥子、一人になりベンチに座る。


祥子    「ありがと」……ね。私の台詞かな。


携帯電話が鳴る。

しかし、祥子は出ない。

携帯電話のコールはしばらく響いて、

やがて途切れた。


祥子は、鞄の中から、

書類を取り出す。


そして、

ゆっくりと破いて、

空を見上げた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ