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北極星を探して  作者: 恋風路とも依
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ACT1 一日目

         ACT1 一日目




何処かの街。


何処かの街からしばらく歩くと、

ひっそりと佇む小さな公園がある。


公園の名前は「北公園」

味も素っ気もない名前だ。


あるのは動かせなくなっている大型ブランコ。

多分多発してる子供の事故のせいだろう。

しかし、子供のはしゃぐ声が聞こえる。

子供はどんなに退屈な場所でも遊びを見つけられる。


そこから少し離れた所にベンチが一つ。

そこにスーツ姿の女が一人。


彼女の足元にサッカーボールが転がってくる。

しかし、彼女は拾わない。

そこに子供が走ってきて、ボールを持ってまた走っていく。

彼女は子供の後ろ姿を見つめる。

そこに……。


幸恵    祥子?


女の名は吉野祥子。

祥子、見上げる。

そこには一人の女。

      

幸恵    あ、やっぱりそうだ。祥子でしょ?

祥子    ?

幸恵    忘れた?

祥子    あ……サチ?

幸恵    思い出した?久しぶり。まだこの辺に住んでるの?

祥子    ずっと、ここ。

幸恵    あ、そう。近くに住んでても会わないもんだね。何?休憩中?

祥子    え?うん、まぁね。


幸恵は、祥子の隣に座った。


幸恵    他に誰かにあったりする?

祥子    会わない。時々電車で見かける程度?

幸恵    え。誰?

祥子    秋田とか。

幸恵    あぁ!ケンケン!?今あいつ何やってんの?

祥子    さぁね。そういや、最近見ないね。

幸恵    実家に帰ったんじゃない?

祥子    あぁ。(少し笑って)東北?

幸恵    そう。

祥子    いじめてたね。

幸恵    いじめてたんじゃないわよ、かわいがってたのよ。

祥子    よく言うよ。

幸恵    祥子、今何やってんの?

祥子    しがないOL。

幸恵    ここから近いの?

祥子    何が?

幸恵    職場。

祥子    駅前。

幸恵    あっそう。

祥子    サチは?

幸恵    私?何だと思う?

祥子    さぁね。

幸恵    お母さん。

祥子    え?へぇ、あんたがね。

幸恵    なに?

祥子    結婚したくないって言ってなかった?

幸恵    そうだっけ?

祥子    うん。

幸恵    じゃあ、変わったんだね。

祥子    ふ~ん。

幸恵    ねぇ、名刺とか持ってないの?

祥子    え?

幸恵    名刺。

祥子    なんで?

幸恵    いや、なんとなく。


祥子は、カバンから名刺入れを取り出し、名刺を幸恵に渡す。


幸恵    (名刺を見て)へぇ、不動産?

祥子    そうだけど?

幸恵    ふ~ん。

祥子    何?

幸恵    いや、祥子っぽくない。

祥子    なにそれ?

幸恵    だって、あれでしょ?家見せて、売ってって人。

祥子    まぁ、簡単に言えば。

幸恵    だって、わからないもん。面白いの?

祥子    え?まぁ、そうね。適当に?

幸恵    そう。

祥子    サチは?

幸恵    え?うん。まぁ…ね。ていうか忙しい。子供育てんのってね。大変よ。うん。

祥子    そりゃ、そうね。

幸恵    全くわかってないでしょ?

祥子    え?

幸恵    変わってないね。

祥子    そうかな?

幸恵    そうやって、すぐわかったふりする。いい子ちゃんぶって。

祥子    そんなことないよ。

幸恵    ……探してもらおうかな。

祥子    何を?

幸恵    家に決まってるでしょ?

祥子    引っ越すの?

幸恵    うん、まぁね。ちょっと検討中。

祥子    ……。

幸恵    決まったらね。お願いするかも。

祥子    あっそ。

幸恵    ずっとこの街なんだ。

祥子    え?

幸恵    仕事場もここでしょ?この街から一歩も出たことないってことでしょ?

祥子    まぁね。

幸恵    退屈じゃない?

祥子    退屈?

幸恵    そう。

祥子    考えたことない。

幸恵    そう?


祥子、不意に時計を見る。


幸恵    あ、もう休憩終わり?

祥子    あ、うん。

幸恵    ごめんね。なんか時間使っちゃって。

祥子    別にいいよ。

幸恵    そう?じゃあ、明日も来ない?

祥子    え?

幸恵    いつも来るのよ、この公園。子供が遊ぶからさ。

祥子    どの子?

幸恵    あの……ほら、あそこで。あっ、今ジャンプした。

祥子    ああ、はいはい。あっ。痛そう。ねぇ、泣いてるよ。

幸恵    じゃあ、行くわ。また明日ね。

祥子    ……仕事が片付いたらね。

幸恵    ええ。


幸恵、子供の方に歩いていく。

その姿を祥子、見つめる。

しっかり母親になっている幸恵。

祥子もカバンを持って、ベンチから去る。

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