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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
3章 三重「個性」
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7. 魔界

「みんな車に乗ったかな~」


 今日は異世界組に富士宮の名所を紹介する。助手席にシェルフ、一つ後ろはシャモアちゃんとパステルちゃんとその間にケイちゃん。一番後ろにミカンとプラムといった布陣。


「わあい!トモさんよろしくおねがいします!」

「はい、大人しく座っててね」

「はあい!」


 ケイちゃんがいると和むなぁ。今日はたくさん楽しんでもらわなくっちゃ。


「え~あ~こ~ん~つ~け~て~」


 外面気にせずだらけてるシャモアちゃんは気にせずに出発だ。さすがに暑いからエアコンつけるけどね。今日はかなり気温が高いし人数多いから窓開けるだけじゃキツイと思う。ケイちゃんもいるし、体は大事に。


 しっかしまぁ今年は暑いなぁ。今日は晴天だからじっとしてるだけで汗だくになりそう。でもその分富士山に雲一つかかってないから、今日行くところは見晴らしがかなり良さそうだ。


「朋殿、今日はどんなところに行くでござるか」

「もちろん着いてからのお楽しみ……いや、少しだけ教えちゃおうかな」


 まだ住宅街で後ろから車が来ていなかったので一時停車する。面白いこと思いついちゃった。普段なら寒いネタなんだけど、異世界組にやったら面白い反応がありそうだ。


「朋殿?」


 車を止めた後、少し俯いてわざと何も言わずに少し時間を空ける。静かな車内にエンジン音だけが鳴り響き、エアコンから流れてくる冷風が熱を持った肌を徐々に冷やしてゆく。


「今日行くところはね……」


 ゆっくり顔を上げて目が笑ってない笑顔を浮かべて助手席のシェルフを見て、その後に顔を後ろへ向ける。


「魔界、なんだ」


 富士宮には魔界がある、というのは定番ネタ。男子中学生が喜んで使ってそうなこのフレーズ、今日訪れる魔界も公式にこのネタを使ってたりする。こっちの世界の人相手では本気でボケると寒いネタだけど、向こうの世界の人だとどう反応するだろうか。向こうに魔界が実際にあれば面白そうなんだけどな。無かったら「魔界って何ですか?」って素で返されてかえってこっちが恥ずかしい。あれ?そっちの可能性の方が高い気がする。やばいぞ、「な~んてね」って言って強引に話切って誤魔化そうかな。


 と思ったんだけど。異世界組の表情がカチコチと固まってる。助手席のシェルフも同じだ。ケイちゃんだけは意味が分からないと言った表情で周りを見ている。


「あ、あれ?みんなどうしたの?」


 この言葉をきっかけにみんなの体が少しずつ震え始めた。顔が尋常じゃないくらい青ざめてる。


「ちょ、ちょっとどうしたの!」


 プラムもしかして口から泡吹いて気絶してない!?ミカンも瞳孔開いてなんかブツブツ言い始めた!


「ま、ま、ま、ままま、魔界で、ござるか?」


 シェルフは辛うじて会話ができるみたい。


「う、うん。そう。でも魔界って言っても……」


「おろして~!ひいっ!開かないいいいいいっ!」


 あ、うん。ドアは運転席でロックかけてあるから。だからシャモアちゃん、ガチャガチャやっても開かないって。


「お姉ちゃんは私が守るからっ!」


 パステルちゃんはハイテンションモードになってパニックになってるシャモアちゃんを抱きしめた。間にケイちゃんいるんだよ、挟まれてきつそうじゃないの、離れなさい。


「こ、こここ、こっちの世界にも、ま、ままま、魔界があるでござるか?」

「そっちの世界には魔界があるの?」


 こくこくと超高速で頷くシェルフ。


「と、ととと、朋殿は、魔界に行けるのでござるか?」

「うん、わたしだけじゃなくて特に小さい子を連れた家族連れに人気だね」

「に、にんきぃ!?」

「う、うん……」


 シェルフもはぁはぁ息切らして苦しそう。魔界って単語、もしかしてタブーだった?


「ま、まま、まさか……この世界の人は……魔界の住人!」

「いいいいいやああああああああ!」


 いや、住人じゃないよ。お客だよ。シャモアちゃん錯乱しすぎ!


「助けでええええええええええええ」


 ああもう唯一会話できたシェルフも号泣しながら助手席で土下座始めちゃったよ。狭いスペースでよく土下座できるね。パステルちゃんはシャモアちゃんしか目に入ってないし、プラムは相変わらず気絶してるみたい。そうだ、ミカンの目を覚ましてみんなを落ち着かせるよう協力してもらおう。


「ミカン!正気に戻って!」

「ごめんなさい良い子にしてるからごめんなさい良い子にしてるからごめんなさい良い子にしてるからごめんなさい良い子にしてるからごめんなさい良い子にしてるからごめんなさい良い子にしてるからごめんなさい良い子にしてるから」


 あ、ミカンもダメだ。もう収拾つかないよ、どうすれば良いのよ~!そう思ってひとまず家に戻ろうかなと思ったその時、




「みんなしずかにしなしゃ~い!」


 天使の一言で(車内に)平和がもたらされた。




 向こうの世界では「悪いことをすると魔界に連れてかれるぞ」という定番の躾台詞があるらしい。子供のころから何度も聞かされ続けて、向こうの世界の人はほぼ全員魔界への恐怖が刷り込まれている。実際に魔界があるのかどうかも不明なのにみんなあると思ってるし、魔界がどんなところなのかっていうイメージも無いけれど、世界規模で恐れられてるってどういうことなの。しかも恐れられ方が尋常じゃない。世界規模で変な魔法でもかけられてるんじゃないだろうか。案外本当に魔界があって、近付かれたくない誰かの仕業だったりして、なんて言ったらまたパニクるだろうから止めておこう。


 ちなみにこの話を聞いた時のケイちゃん。


「よいこにしてればいいんだよ、おねえちゃん」


 やっぱり天使だった。あと、最後の「おねえちゃん」をシャモアちゃんに向けて放ったのを見ると、ケイちゃんの目からもシャモアちゃんは……


これは酷い。

ちょっとした数行程度のネタにするつもりだったのが悪ノリしすぎました。

文章量が予想を遥かに超えたので分割します。

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