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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
1章 富士宮「出会いと再会」
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4. 連れてきちゃったでござる

「脱いで」

「「「え?」」」


 時間は少しさかのぼる。


 犬耳っ娘が日本語で痛い痛いとのた打ち回ったのは一分程度で収まったけど、その後もまだ頭を痛そうに押さえていた。


「びょ、病院に行かなきゃ」

「だ、大丈夫ー」


 はっきりとした日本語で断られちゃった。なんだよー日本語話せたんじゃないの。


「他の二人も言葉通じるのかな。この子大丈夫って言ってるけど病院に連れていった方が良いでしょ」


 二人は困ったような表情で何も答えてくれない。


「どうしたの?おおーい」


 やっぱり無反応だ。


「ちょっと待っててー」

「大丈夫なの?」

「うん、もう頭痛いの収まったからー」


 犬耳っ娘はスッキリした表情で軽く伸びをしている。確かに大丈夫そうだけど頭痛は危険だから病院で検査してもらった方が良いんだけどなぁ。


「この二人もお話できるようにするねー」


 わたしの時と同じように今度は犬耳っ娘と他の二人が額を合わせ、それぞれ悶絶した。

 そして「痛いですー」「痛いでござるー」と叫びだした。

 ござる?


 どういうことなのよ。




 三人とも落ち着いたようで「もう二度とやりたくないよー」とか「ここまで辛いとは思わなかったです」などと痛みの感想を言い合っている。

 いやいや、わたしを無視しないでくださいな。


「それじゃあそろそろ説明してもらえるのかな」


 この言葉にお互い顔を見合わせた三人。どんな話が聞けるのかな。ってあれ?関わりたくないなら話聞かずに去れば良かったのでは。

 し、しまった!


 そんなわたしの内心など露知らず三人が返してきた答えは。


「ごめんなさいー」

「申し訳ないでござる!」

「申し訳ございませんでした!」


 おお、これはまた綺麗な DO GE ZA が並んでいるでござる。

 ござるって何よござるって。

 イオンの人気のない場所で怪しいコスプレ3人を土下座させているわたし。

 勘弁してください。

 早く立ち上がってもらわないと。

 相手にプレッシャーを与えないように、優しい口調で、穏やかな笑顔で一言。


「脱いで」


 って、違う違う!さっきのセリフはもっと後。




 さて困った、どうしよう。

 3人は土下座の後、


「これ以上ご迷惑をおかけするわけにはいかないでござる」


 背が高い娘から妙なござる言葉が放たれ、そそくさと去ろうとしていたけど、何かしら困っていることは間違いないんだよね。平穏なニート生活を送るためにはこのままさようならがベストなんだろうけど、この3人をこのまま野に放って良いのかなぁ。

 何かしら事件を起こしそう。そしたら変な罪悪感が芽生えそうだし……


 なんて頭の中では理由づけしてるけど、説明してって言った時点で無意識に決めてたんだよね。

 わたしは学生時代、色々あってお節介迷惑とも言われたことがあるくらいお人よしキャラだった。不審ではあるけど悪い人には見えない3人をこのまま放置するなんて、できるわけがなかったのである、まる。


『関わるなら責任もって全力で関わりなさい!』


 昔投げかけられた言葉が頭をよぎる。そうと決めたら気合を入れよう。

 とはいえ、このままこの怪しい風貌の3人と外でお話してたらわたしも変な人扱いされちゃうので、仕方なく家に連れて帰って話を聞くことにした、ということで家に帰ってから冒頭の一言だよ。


 説明になってないって?

 いやいや、当然のセリフだよ。だって、


「3人ともすっごく臭い!女の子が出していい匂いじゃない!」


 家に無理やり連れて帰って臭いから脱げ、うん、セーフだよね!


 ぷるぷる恐怖に震えている3人が可愛、もとい、徹底的に綺麗にしないと。

 まずは犬耳っ娘、もといミカンちゃんから。

 名前だけは帰り道に聞いておいた。

 犬耳っ娘はミカンちゃん、背の高いござるさんはシェルフさん、ロリ巨乳がプラムちゃん。


 我が家のお風呂はかなり広いので4人で入っても余裕ある自慢の一品。浴槽を毎日洗うのがかなり大変なんだけど、お風呂大好き一家なのでそこは頑張っちゃう。

 ミカンちゃん、プラムちゃん、シェルフさんの順番でお風呂場にぶっこみ、隅から隅まで念入りに洗ってあげた。

 ごちそうさま。


 4人でぬるめの湯船につかっている間、少しだけお話もできたよ。


「無理やり連れてきてごめんね。聞きたいこといっぱいあるけど、落ち着くまで待ってるから。逆に今わたしに聞きたいことあるかな?」


 そう言ったら、洗っているときは真っ赤でずっとうつむいているだけだったプラムちゃんが最初に話しかけてくれたの。かぁいい声だったなぁ。


「あの、歌が好きなんでしょうか?」

「歌?うん、大好きだよ。どうしてそう思ったの?」

「洗ってる間ずっと鼻歌を歌ってたから好きなのかなって思いました」

「あれ?そうだった?気づかなかったなぁ。歌は聞くのも歌うのも大好きだよ」

「そ、そうなんですね……あの、実は私達も歌が好きで、いつか、ト、トモさんの歌を聞きたいです」

「わーそう言ってもらえると嬉しいなぁ。今歌おうか?」

「え、あ、ううん、もっと後でじっくり聞きたいです!」

「うわー照れるなぁ。うん分かった、それじゃ約束ね」

「は、はい!よろしくお願いします!」


 会話はそのくらいだったけど、3人とも気持ちよさそうな蕩けそうな顔をしていて、リラックスしてもらえている様子。良かった良かった。


「……」


 脱衣所にお母さんの気配。帰り途中に電話で頼んだ服を買ってきてくれたみたい。




 可愛いー!

 三人が着ているのは、動物を模した室内着。


 ミカンちゃんは犬。

 プラムちゃんはこぶた。

 シェルフさんはキリン、て、照れてる!


 ドライヤーで丁寧に髪の毛を乾かして、と。うん、まだ臭いはするけど大分良くなった。


 あとは毎日丁寧に洗えば……フヒヒ……


 あ、ミカンちゃんがちょっと震えてる。


 その後は早めの夕飯。

 3人とも最初は恐る恐る手を出していたけど、一口食べたら猛スピードでバクバクと食べはじめた。お母さんのご飯美味しいもんね。なんとなく誇らしい。


 お風呂に入り、ご飯食べて、ようやく落ち着くことができたので、居間で一休み。中央の机を挟んで窓側のソファーにわたし、扉側のソファーに3人が座ってお茶を飲んでいる。3人ともソファーの柔らかさが気になるみたい。でもあんまり跳ねないでね、壊れちゃう。


「これほどまでに私達をもてなしてくださり、本当にありがとうでござる」


 ござるさん、いやシェルフさんが話を切り出した。

 かたじけないでごさる、じゃないのね。


「これから話すことを信じてもらえるかは分からないでござるが、決して嘘はつかないと誓うでござるよ」


 話の内容よりも無理やりな感じのするござるの方が気になりそうだ。



「順を追って話をするでござる。でもその前に一つ重要なことをお話しするでござる」

「うん」



「私達はこことは違う世界からやって来ました」









「そこはござるじゃないんかい!」



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