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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
最終章 山梨「これからも」
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42. やってみよう!

 泣いてるどころじゃないや。


 頬を流れる涙はそれこそ滝のように勢いよく流れ落ちていて、きっと地面には大きな染みが出来ているんだろうな。前が見えないのも当たり前だ。


「うぐっ……うえぇっ……」


 あ、ダメ。泣いてるの自覚したらもっと溢れてきちゃった。手で拭きたいんだけど、左腕はゆ~ちゃんにがっつりホールドされちゃってて、右手は玲菜に抑えられていて動けない。うう、せめてみんながどんな反応しているのかくらいは見ておきたいよー


「うえぇっ……ゆ~じゃ……でいな……うぅ」


 もうまともな言葉にならないよ。ああこれどうしたらよいの!

 なんて冷静な思考と、狂おしいほどに悲しい気持ちが混ざっていて変な感覚。


『トモちゃーん!うしろうしろー!』

『トモーーーー!うしろ見て―!』

『うしろうしろー!』


 え、何?うしろ?

 なにその変なコントみたいなの。


「ひぐっ……でへへ……」


 おかげでちょっとだけ悲しい以外の気持ちが湧いて来た。後ろってシェルフたちのことを見ろってことだよね。目の前すら見えない状態だけど……せっかくのみんなの言葉なんだから受け止めようっと。


 目をぎゅっとつぶり、頭を強く左右に振って涙を強引に吹き飛ばして止めさせる。


 よし、これで視界が戻って来た。両腕が固定されてるから難しいけど頑張って後ろを振り向いて……と。




 そこにはわたしたちがこれまで決して見せなかった姿があった。




「ぐうぅっ……くそぉ……」


 両こぶしを握り締め、流れる涙をぬぐおうともせず歯を食いしばって立ち尽くす、すみれさん




「ううっ……」


 両手で顔を覆って膝を地面について嗚咽をもらしているのは、ねこにゃん




「ううぇーん!ううわーーん!」


 流れる涙を両手で拭い続けながら号泣が止まらない、プラム




「うわああああああああああああああああん!」


 膝と両手を地面につき、崩れ落ちて慟哭するミカン




「…………」


 空を見上げながら、声も無く涙を流し続けるシェルフ




「おねえじゃあああああん!」

「ぱすてるううううううう!」


 抱き合って頭を突き合わせて悲しみをぶつけ合うシャモアちゃんとパステルちゃん。




 ああ、そうか。

 わたしだけじゃない。


 みんな同じ気持ちだったんだ。

 みんなこれほどまでに悲しい気持ちを抱いてたんだ。

 あはは、なんだよそれ。


 やめて、やめてよ。

 こんなの見ちゃったら、もうわたし止められないよ、止まらないよ。


「ううううう」


 わたしの左肩に顔を預けているゆ~ちゃんは静かに強く泣いているし、いつの間にか玲菜もわたしの右手に額をあてて震えながら泣いている。


「ああ……」


 こんなのもうダメだって、ダメ、ダメだよ。


 ねぇ、みんな。


 なんて、特に考えもせずに前を見たわたしの目に入ってきたのは、仲間たちに負けず劣らず号泣しているみんなの姿だった。


 あ、ダメ、限界。


「うわああああああああああああああああああああん!終わりたくないよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


『ともおおおおおお!』

『御影ざまああああ!』

『トモ殿おおおおお!』

『ドモちーーんーー!』

『ドモざあああああん!』


 それがどれだけの時間だったのか、わたしには、わたしたちには分からない。

 全員が1つに集まって、もみくちゃになりながら、わたしたちはそれこそ涙が枯れるまでずっと、想いをあふれ出し続けた。


 やめたくない。


 その強い強い想いを。




「ひっぐ……ひっぐ……でもぉ、続けられないんだもん。みんな、やりたいことあって、だから無理だもんっ……でもやめだぐないよおおぉ」


 わたしにとって、みんなとの生活は、自分の夢と同じくらい大切なものに育っていた。だから、どっちかを選んでどっちかを諦めるなんて、そんなの辛すぎる。


「ものがだりのしゅじんこうなら、どっちもえらぶ!って言うんだろうけどね、え゛へへ」


 それを選んだら、きっと中途半端になる。

 わたしたちがやりたいことって、本気の本気で全力でやりたいことだから、中途半端なんて絶対やだ。


「どうじよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 地面にぺたんと座り、子供のようにワンワンと泣いてみる。ここまでみっともない姿を晒したんだから、もう徹底して情けなくなっちゃうもん。もう知らない!


「お……おい朋、アレみろよ……」

「ふぇ?」


 涙を浮かべたままのすみれさんが驚きの表情で見ていたのは、このライブに集まったみんなの方だった。その視線の先を追うまでも無く、わたしの目に飛び込んできたのは、色鮮やかなペンライトの光。


「うそ……」


 その光は、ある一定の範囲内が特定の色で塗りつぶされていて、大きな大きな文字となっていた。







『やってみよう!』







 それって、両方ともやるってこと?

 それは無理だって…………


「どうして最初から諦めてたんだろう」

「み~……ちゃん?」


 思わず口に出てしまった。

 でもそうだよね。

 なんで最初から諦めちゃったんだろう。


 みんながやりたいことは、みんなが本気で時間をかけて取り組みたいことだって、良く分かってる。

 だからこそ、それだけに集中することは当然で、他のことをやっている余裕なんてないと思い込んでた。

 もちろん実際そうかもしれない。


「でも、やりもしないうちから諦めるのは、わたしたちらしくない、よね」


 どっちもやりたいんだったら、どっちも満足するだけやれば良い。

 そうだよ、それがわたしたち、『カラフル@すくらんぶる』じゃん。


 わたしたちの心は、やりたいことを1つに絞って努力することじゃなくて、やりたいことを全部やりつくしたい、そう感じている。


「あはははは、ねぇ、みんな、そうだよね、みんな!」


 何も言わなくてもこの想いは通じている。だってほら、さっきまであんなにべそかいてた仲間たちの顔が、希望に満ち溢れて光輝いているんだから。


「俺は、料理人になる!」


 突如、すみれさんが立ち上がり力強く宣言した。


「私は、もっと多くの職業を経験します!」


 そこにねこにゃんが乗っかる。


「私は漫画家になります!」

「私はライブを続けるよ~!」

「私もミカンと一緒に続けるでござる!」

「うふふ、私はパン屋になるよ!」

「私は可愛い服を沢山作りたい!」

「私はもちろんナンバーワンアイドルとして走り続けるよ!」

「私は管理栄養士になるわ!」


 みんなが本気で抱いた夢の数々。わたしの夢も、そこに入れて!


「私は……私はっ……私は富士山をまもる仕事をしたい!」


 そして今のわたしたちの夢はこれだけじゃない。


「そしてわたしたちはっ……!」




『アイドルもやりたいっ!』


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