32. プラム
プラム:ドラム担当
「諸君、百合は好きか!」
『大好きーーーー!』
「私は百合を愛している!」
『うぉおおおおおおお!』
「諸君、可愛い女の子同士の絡みは好きか!」
『大好きーーーー!』
「私には生きるために無くてはならないものだ!」
『うぉおおおおおおおおおお!』
「さあ、叫べ!胸の内に秘めたる熱き百合への想いを!」
『ゆ~り!ゆ~り!ゆ~り!ゆ~り!』
握りしめた拳を顔の横に上げ、胸の前に振り下ろす。全員でリズムに合わせてこの動きを繰り返す様子は、まるで宗教のよ……って私なにやっちゃってるの!?
た、確か恥ずかしくても少しくらいはトークしなくちゃって思って、好きなことなら少しは上手くしゃべれるかなぁなんて思って、みんなも知ってる私の同人漫画作家としてのお話をしていたらこのありさま。
あは、でもきんもち良いいいいい。
「後でお仕置きが必要かしら」
「楽しんでるから弓弦は良いと思うよ」
後ろから邪気を感じるけど気にしたら負けです!
「百合はジャスティイイイイイイイイイス!」
『お……?うおおおおおおおおおおおおおおお』
はぁ、気持ち良いですぅ。よし、このテンションなら次の曲を激しくこなせっ……
「そんなに百合が好きなら、この曲をセンターで歌わせてあげるよ」
「へ?」
え、え、どういうことですか?
予定に無かったことなんですけどー!
「いくよー『トライアングルラブ』」
「ぎゃあああああああああ」
その曲は百合曲だけどっ、百合曲だけどっ、トモさんたち専用曲でしょー!
私がセンターって最後にほっぺたにキスされる!?!?!?
「じゃあねこにゃんがドラムで、あまったダンスチームは適当に合わせながらやろっか」
「りょーかーい」
「ちょっまっ」
「3、2、1、GO!」
うわ、ホントに演奏はじめちゃった。ってちょっとまって、私練習してないから踊れな……てるぅ!反射的に歌っちゃったああああ!うぐぐ、そういえばダンスの練習に何回も付き合ってたんだった。もう、もう、もーーーー!
やだー百合は見るだけが良いの―!
クライマックスで誰にキスされたかは、永遠の秘密ですぅ。
なんておバカな扱いをされているのもまた良い思い出。
このイベントが終わった後、私はアイドルを続けずに漫画家を目指す予定です。
だからトモさんと同じように、私もこれが最後のライブ。
全力でふざけ尽くさないと、ですね。
この世界にやってきて、漫画に魅了されて、かなり悩みましたが自分でも描くようになって、ありがたいことに多くの人に喜んでもらえるようにまで成長出来て、実は何回もプロデビューの打診を頂いているのです。
私はカラフル@すくらんぶるの活動がありますし、そもそも読むことが一番好きなので断っていたのですが、今回のタイミングを良いきっかけだと捉えることにして、挑戦を決めました。
みんなが笑顔になってくれることを、とても嬉しく感じるようになったからです。
ライブでの笑顔はもちろんのこと、私が描いた漫画をイベントに来てくれた人が満面の笑みで購入してくれて『ありがとう』の言葉をたくさんいただける。恥ずかしくて売り子はやらずに奥の方に座っていたのですが、いつだったか申し訳なくなって……違いますね、みなさんの笑顔を間近で見たくて、最近では売り子にも挑戦しています。
そんなことが積み重なったからでしょうか、多くの漫画を読みたいという気持ちと同じくらい、漫画を描いて楽しんでもらいたいっていう気持ちが強くなったのです。
ちなみに、私が目指すのは百合漫画ではありません。
もちろん百合漫画を描かせて頂ければこの上なく嬉しいですが、バトル漫画も恋愛漫画も日常漫画も四コマ漫画も練習しましたので挑戦したいです。
他のジャンルでもガールミーツガールは変わりませんけどねっ!はぁはぁ
さて、そろそろ本来の私のやりかたに戻しましょうか。百合好きとしてのネタ的な私では無くて、ドラマーとしての全身全霊を込めたパフォーマンス。
「そろそろお待ちかねの『いつもの』やりましょうか」
会場にざわめきが広がり、自然と空気にこれまでとは違った熱がこもりはじめる。みんな知らないと思いますが、ステージ上からはその空気の色合いの変化が見えるのですよ。
「ふぅ~」
気合を入れる前に、一旦気持ちを落ち着かせる。はじめたらもう止められない。これが最後の休憩タイムだと思った方が良い。さあやろうか。
「いくぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
トークの間に会場のど真ん中の特設ステージにドラムセットが移動してある。メインステージからはるか遠いその特設ステージに向かって、魔法の力も借りながら走る、叫ぶ、飛ぶ、着地。そして颯爽と座る。
ただ、それだけで会場のボルテージは最高潮に。
後はみんなの声援に負けないように力の限りを尽くすだけだ。
心の赴くままにドラムをかき鳴らし、曲を奏で、体全体を揺さぶりながら、頭を激しく前後に振りながら、喉の奥から声をひねり出しながら、魂を熱く熱く熱く震えさせる。
響け。
響け。
響け。
私の音楽よ、私の想いよ、私の百合力よ、何もかもすべてをひっくるめて、会場に響けええええええええええええええええええええ!
私が覚えているのはただ1つ。
圧倒的なまでの快感だけだった。
あ、もう1つ覚えてることがありました。
ステージ近くの女の子2人組、激しく体を揺さぶりながらも恋人つなぎしてた!百合だ百合!
一番ぶっとんだキャラに変貌したのがプラムです。
当初は恥ずかしがり屋の引っ込み思案というだけで押し通そうと思ってたんですよ。
だって照れ屋さん可愛いもん。可愛いもん(大事
異世界3人組に、サブカルをそれぞれ担当させようと閃いたときに漫画を選んだのも、他の人と触れ合う機会が少ないのでマッチしてると思ったからです。
それがまさか百合に覚醒するとともに、こんな暴走キャラになるなんて。
覚醒してからはとにかく書きやすくて楽しかったのですが、同じことの繰り返しになってくどいので2部では少し自重……できたかなぁ。
同人作家の肩書も、照れ屋が激しくドラムをやるというギャップも、そして謎の百合好き設定も含め、描いてて楽しいかなりのお気に入りのキャラです。
もう少しロリ巨乳を押せばよかったかな。
ドワーフ設定が死んでるのはわざとです。種族は単なる記号にしようと最初から決めてたので。




