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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
1章 富士宮「出会いと再会」
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2. Girl? ミーツ Girls

 受験に失敗したわけでも、就職できなかったわけでも無い。ただなんとなく、進学も就職も、自分が目指したい道じゃないって思った。


 やりたいことがあるのに、それが何なのか分からない。


 進路を考えはじめたころから、そんな漠然とした不安感がずっとつきまとっていた。とりあえず進学してから考える、という考えも頭をよぎったけれども、このまま進学したらきっと後悔する、どういうわけかそう確信していた。


 それならニートになってやりたいこと考えるしかないじゃない!


 ニートじゃなくてフリーターはどうかって? な、なんのことかな……あーうん、この話はここまで!




 さてさて、急な坂道を下るとそこは湧玉池。湧玉池は富士宮市の観光スポットとして王道な場所。神社よりもこの池を目当てにしてくる人の方が多いんじゃないかと思えるくらい。

 ここは名前の通り大量の水が湧いている湧き水スポット。一日に三十万トンも湧いているらしいよ。水汲み場もあって、休日は汲んで帰る人で結構混雑してる。見慣れると只の池としか思えないんだけどね。あ、でも池から川へ流れ出るところの勢いは結構なものだとは思うかな。


 そしてこの湧玉池があるのが、富士山本宮浅間大社

 

 富士宮市の神社と言えば浅間さんでしょ。富士山がご神体の由緒正しい(らしい)立派な神社です。


 富士宮駅と西富士宮駅の間にあって、道路に面した大鳥居のそばに大駐車場がある。この駐車場にある小さな店の焼きそばが有名だけど食べたことないなぁ。

 大鳥居から参道を少し歩くと楼門があって、その楼門の手前に交差する形で広い砂利道が通っている。この砂利道を湧玉池側から反対側へ抜けると図書館がある。


 浅間さんといえばやっぱり五月と十一月のお祭りかな。たっくさん出店が出てたっくさん人が来るすっごい大きなお祭り。特に五月のお祭りは流鏑馬がオススメ。馬に乗って弓を射るとか超格好良い。小さい頃、友達と一緒にお小遣い持って遊びに行ったなぁ。

 そうそう、らくがきせんべいに富士山書いたらお店の人が写真に撮らせてくれって言ってきたんだよ、すごいでしょ。懐かしいなぁ、また行きたくなってきた。次の五月のお祭り、どうせニートしてて暇だし行こうかな。


 他に人気なのはやっぱり湧玉池かな。TVでは浅間大社の特集よりも湧玉池の特集の方が多く見かける気がする。ま、まぁ人気なのはいいことだよねっ!


 あと浅間さんのイメージは桜かなぁ。砂利道や境内に大きな桜があってとても綺麗。湧玉池の入口から先の砂利道は桜並木になっていて春の景色は圧巻。

 他にも参道を少し東に外れたところにあるふれあい広場の川辺に咲いてる桜が最高。何が良いかって、桜と湧玉池から流れ出た小川と富士山のアングルが絶景なの! 昼間はもちろん、夜も桜が街頭に照らされて美しいんだ。


 あ、浅間さんと言えばお正月も印象的だなぁ。一度だけ年越し参りしてみたけど、人の量が……

 もちろん年越しだけでなくて普通に正月は混むんだよ。車で行くとすごい渋滞するから、いつも少し離れたところに止めて歩いて行くの。もともと観光客関係なく渋滞ポイントなんだけど、なんとかならないのかなぁ。交通量多くて自転車でも時々危ないって思う時があるもん。


 さて、そんな愛しの浅間さんの湧玉池からまだ頑張っている桜並木を通り図書館に向かおうとしたけれど、ふれあい広場の方から綺麗なピアノの音と歌声が聞こえてきた。


「あ、この歌は!?」


 自転車を置いて慌てて向かったけれど、残念、もう歌い終わっちゃったみたい。

 ここしばらく富士宮市内の公園とかで歌っている人なんだけど、歌声が透き通っててすっごい綺麗な人の。それにね、キーボードでの弾き語りで特別なパフォーマンスがあるわけじゃないのに、歌っている姿がすっごい格好良い。

 あとね、感情が伝わってくるっていうのかな、声の響きが胸に染みこんでくるような心地良さがあるんだ。すごく楽しそうに歌っているし、腰まで伸びた長い髪の毛がリズミカルに左右に揺れるのもいい。

 前にも公園で歌を聞いたことがあって、すぐにファンになって、いつかお話してみたいなぁと思ったんだけど、今日は近くに居たおばあちゃんに捕まって話し相手になっちゃってるな。

 うーん、これは時間かかりそう。仕方ない、本を返してからまた寄ってみよう。


 歌は大好き。聞くのも歌うのも曲に合わせて踊るのも大好き。だって楽しい気持ちになれるから。カラオケに良く行くけど、ホールのステージとか広々としたところで気持ち良く歌いたいなぁ。広い原っぱで気持ちよく歌うとかも、想像するだけでも気持ちよくなっちゃう。さっきのお姉さんと一緒に歌えたら楽しいだろうな。




 図書館で本を返した後は神社に寄っていく。神社の近くに来たときはいつもお参りしていくんだ。自転車を置いて境内に入ると、平日なので人が少なく閑散としている。


 あれ?あの人達なんだろう?


 入口右手に不思議な3人がいる。ボロボロの民族衣装みたいなのを着てるけど、コスプレ? まだ少し肌寒いのにあんなに露出多くて寒くないのかなぁ。富士宮でコスプレしてる人って見たことないけど、神社関係の作品のキャラクターなのかな。流行りのアニメは見ているんだけど、全然ピンと来ないや。


 一人はスラっと背が高いモデル体型。175cm くらいはありそう。三人で輪になって話をしていて、入口の位置からだと横顔が見える程度なのに、それだけでも鼻が高めの美形ってのが良く分かる。外国人さんなのかな。というか、すごいシリアスな表情だけど何か困ったことでもあったのかな。


 一人は逆にかなりの小柄。

 だけど……胸がすごいです……

 どうしてロリ巨乳に出会うとこんなにも敗北感に苛まれるのかな。け、決してわたしのおむねが小さいとかそんなことは無いんだよ?学生時代、クラスで中くらい程度だったし、小さくは無いんです!

 それにしても幼い顔立ちで泣きそうな困った表情をしている上に服がやや薄汚れているとかとか保護欲をそそりますね……じゅるり


 はっ!


 危ない危ない、自分が危ない。

 急いで保護しないと、じゃなくて、一人じゃないのだから大丈夫でしょう、うん。


 最後の一人はこちらに背を向けていて良く分からない。背格好は両極端な二人の丁度中間くらい。ときおり小さくピョンピョン跳ねてるのがなんとなく可愛らしい。


 さて、いくら奇特な雰囲気だからといってずっと見ているのも失礼だし、さっさとお参りしようっと。今日はいくらにしようかな……ってええ!?


 ちょっと歩いたら三人目の横顔が見えるようになったんだけど、まさかあれって犬耳? 何あれすっごいリアルだよ。耳のところに犬耳カバーかけてるのかな、すっごい可愛い垂れ耳! というか犬耳だけじゃなくて顔もすっごい可愛い! あー抱きしめたい! あの耳をモフモフしたい!


 はーっ、はーっ、はーっ、じゅる


 おっと危ない危ない、お参りに来たんだった、こんな気持ちじゃ神様に怒られちゃう。それに、いくら可愛いと言ってもあの三人明らかに関わっちゃいけない雰囲気だし(主にコスプレ的な意味で)、変に近寄りすぎて巻き込まれたくないもんね。さっさとお参りして帰ろうっと。


 お参りは願掛けするわけじゃなくて、立ち寄った挨拶みたいな感じなので軽い気持ちで。それでも五円を入れるってことは出会いを期待しちゃてるのかも、なんてね。


 何かいいことありますようにー


 さて、これで用事は終わり、今日はどこに寄っていこうかなぁ。久しぶりの街中だけど、やっぱり足伸ばしてイオンかな。とか思って帰ろうとしたら、あの3人が真剣な表情で社務所の脇の方を揃って見ていた。なんとなくその視線の先を追ってみたら。




 一瞬目の錯覚か何かかと思った。




 人と同じくらいの大きさの薄黒いもやが漂っている。ぼんやりと霞んでいてすぐにでも消えてしまいそうな感じ。近くを巫女さんが通っているけど気づいてないみたい。色は薄いけど見ていて気持ち悪くて結構存在感のあるもやなんだけど、なんで気付かないの?


 神社って神聖な場所だと思ってたのに、あんな変なのがあるなんて。しばらくここには近づかないようにしようっと。


 と思い、外に出ようと前を向いたところ、あの3人が揃って驚いた表情でこっちを見ていた。可愛い……けどあまりにも真剣に見つめられてて何か怖い。


 


 嫌な予感がする……うん、逃げよう


浅間大社はいつかまた出てきます。

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