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異世界人の友達と日本を旅しよう  作者: マノイ
1章 富士宮「出会いと再会」
16/466

15. 5万人ライブ!

 昨日は結局シェルフ達が歌ってもやを浄化させた。どうやら自分で作った歌でないと逆効果であるとのこと。


 先に言ってよー


 向こうの世界では歌は自作する文化だったので、他人の曲を歌うとは思わなかったんだってさ。もう浄

化のために歌わないからね。


 富士宮観光は成功だったものの、最後でケチがついちゃったな。3人とも申し訳なさそうな感じになって終わっちゃった。ちょっと心がもやもや。


 でも、そんな気分なんてすぐに吹っ飛ぶのさ。

 だってゆーちゃんのライブがすぐそこに迫ってるんだもん!


 あー楽しみだー


 体作りもちゃんとして、予習も完ぺき。

 ワクワクが止まらないー


 どの曲歌うのかなぁ。

 どんな順番で歌うのかなぁ。

 どんな演出があるのかなぁ。


 生で見るゆーちゃんってどんな感じなんだろう。

 生で見るライブってどんな感じなんだろう。


 前々日、前日と近づくにつれて高まる期待感。

 早くはじまって欲しいような、それでいてもう少しこのワクワクを楽しんでいたいような、この感覚はクセになりそう。




 星野弓弦(ほしのゆづる)


 ベンチャー企業の新規ビジネスとしてはじまったネットアイドルプロジェクト。ゆーちゃんはその第一弾として売り出された。


 ライブで客を厳選する特殊な集客方法はネット上で炎上に近いくらい非難されたものの、方針を変えずに辛抱強く続けた結果、参加者からの口コミでライブの楽しさが広まり徐々に人気を獲得していった。


 ライブコンセプトは「みんなで楽しむライブ」


 このコンセプトの元、他人に迷惑をかける人を排除するだけでなく、ただ聞いているだけというのも許されない。全員がほぼ同じ行動を半ば強要されるゆーちゃんのライブは、宗教だと揶揄されてもいる。どれだけ悪く言われようとも方針を変えないのはすごいなぁと思うよ。


 ゆーちゃんも大変だったろうなぁ。ライブ以外はメディアに露出しない、というルールを徹底して守ってたから奇異の目に晒されることは無かったと思うけど、ネット上には悪意ある書き込みが至る所にあったからね。


 ある程度ファンが増えてからは、「ゆっくり聞くことしかできないライブ」とか「上級者向け耐久ライブ」とか色々な条件付きのライブも開催されて、新規ファンも獲得している。


 そしてゆーちゃんが数年間ライブ活動を中心に頑張った結果、武道館やさいたまスーパーアリーナを満員にすることができるほど人気になったんだ。


 そんなゆーちゃんの出身地は富士宮市。デビューしてからはじめて富士宮市でライブをする凱旋ライブが決まった。記念ライブだからか、なんと5万人も来るらしい。しかも3週連続土曜日にやるんだって。わたしは最初のライブのチケットが当たったんだ。




 ライブ当日。


 一番良い装備(事前購入したグッズ)で身を固め、水分食料チケットの準備は完ぺき。

 さあ行くぞ!


 場所は富士宮北部にある「ふもとっぱら」

 以前某歌手が10万人ライブをやった場所。観客が全員帰るのに数時間かかったらしい。広々とした芝生の向こうに見える富士山が迫力あって素晴らしい場所。


 移動はもちろんバス。自家用車厳禁だよ。


 会場に向かうと人の多さにびっくり。富士宮に住んでたら絶対に見られない光景。TVで見る渋谷センター街みたい。出店もいっぱいあって、長蛇の列だ、うへぇ。


 ひとまず自分の席に行ってみようかな。大体真ん中あたりだね。ステージを中心に大きく十字の花道が作られていて、横に通っている花道が結構近い。これ、ゆーちゃんが歩いてきたらはっきり表情まで見えるかも。


 開演までの間、ドキドキしたり、ぼぉ~っと人の流れを見ていたり、隣の人とゆーちゃんの話をしたりと、そんな感じで時間が過ぎてゆく。


 そして、ついに開演のとき!


「帰ってきたよー!富士宮ー!」


 爆発音が派手に鳴り響く中、フリルたっぷりの可愛いステージ衣装で身を包んだゆーちゃんが出てきて、いきなり超ハイスピードの曲を歌い始め、会場のボルテージが爆発的に上がった。


 夢のような時間。

 一緒に体を動かして、全力で声出して、みんなとの一体感が心地よくて、幸福感で心が麻痺してくるようだ。


 どれくらい経っただろうか、幸せを噛みしめていたあるとき、ゆーちゃんが花道を歩いてきた。


「みんなのところに、行っちゃおうかな~」


 もしかして近くに来ないかな、と思ったら目の前に歩いてきた。


 全力で声援を送るしかない。


「ゆーちゃあああああああああん!!!」


 あれ?目があった?

 一瞬ゆーちゃんの動きが止まって、驚いたような表情になった気がするけど、流石にこんなに人いるのにわたしに気づくわけないよね。




 もうずっと会っていないのに。




 でも、なんとなくだけど、その後のゆーちゃんの歌は、少し弱くなったように感じてちょっと心配。




 アンコール曲も終わり、夢のような時間が終わると、今度は長時間かかる規制退場。ライブの余韻に浸り幸せいっぱいで半ば放心状態なので、長くても大丈夫。仲良くなった隣の人とハイテンションでライブの感想を言い合うのも楽しい。

 

「生『ほっしー』可愛すぎだよーライブ楽しすぎだよー」


 激しく同意。


 そんなこんなでライブ後の時間を過ごしていたわたしのもとに、突然場違いなスーツ姿の女性がやってきた。


「失礼ですが、御影朋様でしょうか」


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