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エピローグ

 夜風が頬をなでる。

 空には月の白い光。散り始めた桜の花を照らしている。

 思わず目を閉じて息を吐き出す。

 と、

「やっぱりここだった!」

 ぽすんと背中にしがみつく華奢な指の感触。竜杜は首を巡らせて自分の背後を見た。

「一人で来たのか?」

「そーだよ。」と見上げる少女の顔は、どこかふくれっ面だ。

「なかなか帰ってこないんだもん。」

 言いながら彼女は竜杜の傍らに立ち、桜の木を見上げた。

 背中まで伸びた茶色を帯びた真っ直ぐな髪に、スラリと伸びた手足。また背が伸びたことに、横に並んで気がつく。

「心配されるとは、な。」

「だって……」と、少女は印象的な黒い瞳を竜杜に向ける。

「お母さんが不安がってたから。」

「ついでに彼氏と会ってきたのか?」

「彼氏じゃなくて幼馴染の同級生!委員会の話しただけだし。っていうか、お父さんとお母さん、いっつも二人だけで花見行くんだもん。あたしだって夜桜見たい。」

「都と行くのはそういう約束だから。お前を留守番させるのは受験生だから。」

 風邪引いたらどうする、と妻と同じ色の頭に手を置く。

「受験って、本番は半年以上先だよ。」

 そう言いながらも、自分を気遣っての言葉に嬉しくなる。

「そろそろ帰るぞ。」

 踵を返した竜杜を引き止めるように、さぁーっと風が吹いた。

 まるで雪のように花びらが舞い上がる。

「わ、きれい!ねぇ来年は家族四人でお花見したいなぁ。昼間でいいから。」

「嬉しい桜だったらな。」

「どうしてストレートに言うかなぁ。娘を思いやるとかない?」

「それほど柔に育ててない。」

「お母さんと同じこと言ってる。」もーっ、と不満顔。

(そら)、行くよ。」

「うん。桜の花、また来年ね!」

 また来年。

 その言葉を心のうちで繰り返しながら、竜杜はそっと桜の木を振り返った。

アルラの門、最終回とエピローグを投稿しました。

これにてシリーズ完結でございます。

お付き合いいただいたディスプレイの向こうの皆様、ありがとうございました。

1作目の一話を投稿したのが5年前。当時メモ書きだった最終回を、こうしてキチンと書くことができてホッとしてます。いや、本当に「ほーっ」という感じ。

自分が作り上げた世界、作り上げた人物達を書くのは楽しくて、気がつけばサイドストーリーのネタもずいぶん溜まってしまいました。

ひとまずこの話はここで終わりますが、2018年2月の下旬を目処に、そんな番外編をいくつか投稿したいと思ってます。具体的な時期は活動報告にてお知らせしますので、気に留めていただければ嬉しく思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 

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