復讐旅の途中
以前投稿した短編の続きです。
『なぁ』
「なにさ」
僕達は現在旅の途中。生き返った場所から宰相がいるという、この体の持ち主の出身国へ向かっている……途中。
なんだけど……。
『さっきの話聞いたろ』
「そりゃねぇ……まさか戦時中とは……」
『「はぁ」』
剣と一緒にため息をつく。その宰相も打ち首になって仇討の相手がいなくなってる可能性があるという事実に僕たちは頭を抱えていた。
それはなぜか。僕達の復讐相手がいなくなってしまってるかもしれないのに、そのことに関しての通知がこうした神様らしき側から何もないから。
生きているということなんだろうかと思いながら「どうする?」と質問する。
『戦争に参加するのか? 行こうぜ!』
「いや、この状況で宰相ぶっ殺しに行く?」
『だな……別に殺してもいいけど』
「まぁそうなんだけど」
『あのおっさん腕はいいんだが猜疑心強くてな……そのせいで俺こんな状況になったし』
「ああそう。大変だねー救国の騎士も」
『本心から言ってないだろ』
そんな軽口をたたきながら、それでも僕は歩みを止めない。
体が軽くてどこへでも飛んでいけそうなのだ。これで立ち止まるという選択肢はない。
「いやーこの世界の体は結構軽いねー」
『それはたぶん鎧のせいだろ』
思い切り速度を上げて歩く……というより地面を踏みしめてから一歩で数メートル移動する。
もはや瞬間移動といっても過言でもない移動距離。自分で操っている体だとは思えない。
「この世界の人ってみんなこんな感じなの?」
『いや、お前の認識がおかしい』
「そう?」
僕からしたらこの人たちが僕達のように普通に動いてるのが不思議なんだけど……まぁいいかな。
「あとどのくらいかな」
『何が』
「国」
『あー……このペースだと、二日?』
「だいぶ近いね」
『寝ずにだぞ』
「……それはきついね」
そういいながら通りがかった野盗の首をすれ違いざまに刎ねていく。
『こわっ』
「そう? 単騎駆けなんて相手を一発で絶命させないといけないじゃん」
『そりゃそうだろうけどよ……』
「それに、乱戦で構っていられるほど余裕なんてないよ」
『まぁ、な』
通り過ぎるまでに十人切り伏せて他の奴らが逃げたらしいけど気にしない。僕らには宰相に復讐するというだけの目的しかないのだから。
「死なない体ってのも便利だよね」
『事情を知らないやつが見たら普通にどこか行った感じで怒られるんだけどな』
「そこは別にいいんじゃない? どうせ宰相殺せばおさらばするんだし」
『それもそうか』
傷なんてのも気にならない。気が付けば回復しているし。まったくもって便利な体だ。
これも復讐するまでの仮初のチート能力なんだよね……。
そんな意味のないことを考えながら移動する。
単純な移動だというのに景色の移り変わりが速い。自分でやっといて何言ってるんだと思われるだろうけど、ジェットコースターを体感してるぐらいに錯覚する。
慣れたせいで新鮮味も困惑もないんだけどね。
『初日でやればそりゃなれるって』
「鍛えればこの世界の人みんなできるでしょ。きっと」
『どうだろうな。お前みたいな体の動かし方を知ってればできるんじゃないか?』
「そんなもんかね」
口調を少し変える。理由としてはこの体の主の口調が僕の口調とあっていないから。ごまかすのが面倒だし。
つまりそれは人が近くにいるということを示しているんだけど……視界が変わりすぎてるから目でとらえるのが難しい。向こうもそうだろうけど。
「面倒だね」
『つぅか、現状すれ違ってもお前の事とらえられないだろ』
「だけどね」
そのまま気が付けば隊列を抜いていた。誰も僕が通り過ぎたことを認識してないらしい。
ちらっと後ろを見て確認した僕は再び前を見てこの速度を維持した。
ついに到着した。野宿して一日半ぐらいで。
『俺の身体すげぇ……』
「感心していないで。このまま行く? それとも、この雰囲気の元凶の軍潰してからにする?」
そう問いかけたところ、『どっちでもいいんじゃね?』なんて軽い口調で返ってきた。
「君の復讐の旅なんだけどこれ?」
『んなこと言われてもよ……宰相殺すという目的ならどちらの過程を踏んだって一緒だろ?』
「長引くかそこで終わるかのどちらかだね」
『だったらどっちでもいいんだよなぁ正直言って』
「あ、そう」
『任せる』
「え」
あくまで君の復讐なんだから僕を使わないでほしいんだけどなぁ……そう思いながら僕は腕を組んで考え、答えを出した。
「敵軍追い払ってから宰相殺そう。そうしたほうが国に降りかかる災難が減るだろうし」
『そんなもんか。ッシャ! 行くぜ!』
「少しは君が決めてよまったく」
そう思いながら仕方なく国へ入ることなく宣戦布告してきたであろう国から侵攻してくるルートへ向かうことにした。
さっさと終わらせよう。そしてさっさと成仏しよう。
そんなことを考えながら。
では