50
これにて完結です。
50話ときりの良い数字ですが狙ったワケじゃないです。
汽械式浮揚船の操縦席に座り、レイハは窓から、ぼんやり空を見上げる。
ゲンザは、船内で浮揚船の改良案をまとめていた。実際飛ばした事で、問題点が色々見えてきたそうだ。
「若旦那が戻ってきても、これじゃゲンザさんに取られちゃうかなぁ……」
レイハは呟くが、エンナに取られるよりはマシだ。
クーも喜々としてゲンザと共に案をまとめるだろう。そんな事を考えていると、塔の屋上へクーたちがやってきた。
が、クーはどこか上の空だ。
「坊、どうしたんです?」
「いや、世界って複雑なんだなと考えちゃって……」
船に乗り込んだクーは、ゲンザの問いに苦笑混じりで答えた。
「世界も複雑ですが、この浮揚船の操作も複雑すぎます。無理のでない範囲で、簡略化していきましょうや」
ゲンザの言葉に、クーは溜め息混じりの笑みを漏らす。
「複雑な物事を簡略化するには、まずは理解が必要! ……汽械も世界も根は同じかな」
そう言って、クーはゲンザの図面を覗き込んだ。
「これが汽械式浮揚船か……。飛行船とはだいぶ違うな!」
バタバタとヒスイが入ってくると、興奮したように船内を見回す。
「最終的には、ヒスイさんの飛行船に近い形に操縦系統を持っていきたいと思ってるんですが」
「色々、試してみようよ。正直、何が正しいかなんて、まだわからないんだし」
クーは、ゲンザの言葉で、何かを吹っ切ったようだ。
レイハにとって、ゲンザも手強い相手なのかも知れない。
「カーボライトで人工重力が作れるそうだな。ソラよ。俺にやらせてくれ!」
「できるの?」
「今日にでもラセル師の指導を請う」
楽しげに話すクーとヒスイの姿を、レイハは眩しげに見つめる。
クーは、エンナもレイハもゲンザも好きだと言った。恐らくヒスイも好きなのだ。
船の外では、ギンが眩しそうに沈みゆく月を眺め、エンナは王都のある方向、海の彼方を眺めている。
レイハは大きく息をついて立ち上がった。そして船から降りるとエンナの元へ向かう。
「エンナさん、どうしたんですか?」
様を付けようと思ったが、止める事にした。
「さっきの話で、色々考えちゃって……」
エンナの言葉に、レイハは先ほどのクーを思い出す。
「若旦那は、さっきゲンザさんに言われた言葉で吹っ切ったみたいですよ?」
「え?」
ワケが解らないとでも言いたげなエンナに、レイハはゲンザの言葉を、そのまま口にする。
「世界も複雑ですが、この浮揚船の操作も複雑すぎます。無理のでない範囲で、簡略化していきましょうや……だそうです」
「簡略化なんて、できるのかなぁ……」
予想通りのエンナの言葉に、レイハは言ってやる。
「複雑な物事を簡略化するには、まずは理解が必要! ……汽械も世界も根は同じかな。ゲンザさんに対する若旦那の返事ですよ」
レイハの言葉に、エンナはようやく笑ってくれた。
「正論ですね」
「はい正論です」
そう言って、お互い笑いあう。
「頭、使ってたら、お腹がすいたんで、お昼にしようよ?」
船から降りてきたクーが、皆にそう言う。
レイハとエンナ、二人が笑いながら話をしている事は、全く気にならないようだ。
やれやれといった視線をクーに向けると、エンナも同意したように諦めの混じった笑みを浮かべる。
「そう言えば、ソラ様。この船に名前はないのですか?」
ギンは、降りてきたクーに問う。
この汽械式浮揚船には、まだ名前はなかった。試験を終え、実用化の目処が立つまで命名はしない。それがソラの工房の方針であり、ここ統連に持ってくるまで、試験飛行すらままならなかったのだ。
だが、昨日で結論は出た。
今後、散々いじくり倒すだろうが、この汽械式浮揚船は十分、使い物になる。
もう名前を与えても問題はないだろう。
「昨日、箒で、ここに降りた後に、この船の名前を決めたんだ。流星号ってどう?」
ヒスイやギンの話では、炎と蒸気の尾を引いて飛んでいたらしい。だから、流星号という名前は悪くない。
ただ、その名前を聞いたエンナが、驚いたようにクーを見たのが気になった。
この名前には、エンナが絡んでいるのだろう。
負けないよ?
レイハはエンナを横目で見ながら思った。
クーの性格を考えれば、まだ勝負は始まったばかりなのだから。
エンナのヒロイン化は諦めました。序盤書いてた時はいけると思ったんですが……
ヒロインとしては受け身なところが多すぎて、続編書く事があれば、そのへん考えましょう。
締めはレイハで行きました。中盤以降のレイハは、ヒロイン度が高いですね。
エンナとレイハは、なんかギスギスした感じになりそうなので、最後の最後で少し絡ませてみました。
これが二人の作中で最初の会話ですね。
さて、冷却期間を少し置いてから推敲に入ります。
終盤で付け足された設定に会わせて前半中盤と修正かけますが、極力文章を弄らない方針で行きます。
もし、続編を書く事があれば蒸気大○○といったタイトルにします。
蒸気大活劇、蒸気大冒険、蒸気大逆転、蒸気大団円……こんな感じですか。
要修正箇所を洗い出してみましたが、完成を投げる前と執筆再開時の設定の食い違いは大した問題ではないようです。
設定が煮詰まってないって自覚は当時もありましたんで、踏み込まない方針で書いてたのが幸いしたかと。
大きな問題が教団の浮揚船が現れた日ですね。
時間の流れの描写を入れてないというか何も考えずに書いてました。
この辺、時間変化を書き足す必要があります。
とりあえず自前のパソコンの中だけで修正作業やってます。
終わり次第、こちらに反映させます。
2/4 ラセルの工房が壊されて以降の時間経過のミス。たぶん修正終わったと思います。
現段階で発覚した大ポカは、このあたりでしょうか?
今後も、チマチマとした修正は続けていくと思います。
2/14 浮揚船の核であるカーボライトのスペルはcavoriteです。
ケイヴァーリットって発音の方が、どうも正しいようですが……
H.G.ウェルズの古典SF、月世界旅行に出て来た反重力金属と言えばピンと来る方もいるかと思います。
昔読んだジャンプの連載漫画、アウターゾーンで、わたしは初めて知りました。
でもアレだとケイラバイトって名前で呼ばれてたかと。
元ネタに近い名前を使おうとグーグル先生に聞いてみたところカーボライトの方が正しいらしいと出たのでカーボライトにしましたが、
つい先ほど、グーグル先生に再度、聞いてみたところ、ケイヴァーリットと出ました。
カーボライトだと商品名とかに使われていますので、あまり被らないケイヴァーリットの方が良かったかと今更ながら思います。
でも変更はしません。




