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蒸気大革命  作者: あさま勲
三日目

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なんとか手短に終わらせられないかと頭を悩ませてます。

 汗だくになったクーの身体を拭いて着替えさせるレイハを眺める。

 慣れているのか手際が良い。エンナには、そこまで手際よくできない……というか、人の看病などした事がないのだ。

 クーは、あの直後に風邪でも引いたのか高熱を出した。

 雨の中、飛行汽で塔まで駆けつけ、着替えもせず浮揚船に乗り込み空中戦。身体も冷やした事だろう。無理もない。

「どうも再生者ってのは、錬金術の秘術で若返った者の事だと思う。たぶん教団の専売特許で、統連じゃ再現できないんじゃ無いかな」

 鼻をグズグズ言わせながらクーは説明する。

「その再生者ってのが、教団の指導者みたいな者なんでしょうか?」

「指導者かどうかは、わかんないけど、特権階級なんだと思う。たぶん……いや、間違いなく腕の立つ錬金術師だよ」

 レイハの問いに、クーは答える。そして、エンナに視線を向けた。

「たぶん、美原見の御当主も再生者なんじゃないかな?」

 突然、クーに話を振られ、エンナは戸惑ってしまう。

 再生者かどうかはわからないが、二百年以上、当主が代替わりしてない事は知っていた。滅多に外部の者と顔を合わさないため、代替わりを隠しているだけだなどとも言われてはいる。

 だが、父の話で、当主は不老不死だと聞かされた。そして、父は当主と会った事があるそうだ。だが、当主の姿や性別までは聞かされなかった。

「御当主が不老不死だって話は聞かされてる。だから、たぶん本当の事だと思う」

「俺も聞いた事はあるな。会った事はないが……」

 エンナの言葉をヒスイが裏付ける。

 賢者の塔。クーが寝かされている部屋に、皆が集まっているのだ。

「御当主も緑の髪をしておられます。ソラ様が再生者であるならば、御当主も再生者なのでしょう」

 その言葉で、皆の視線がギンに集まる。

「ギン。お前、当主に会った事あるのかっ!?」

 ヒスイが驚くのも無理はない。ギンは元々は統連の錬金術師であり、美原見の人間ではないのだ。

「ヒスイ様の付き人も、御当主の命でやってますからな。年一回は、お会いしてます」

 涼しい顔で言うギンに、クーは笑いながら問う。

「ギンさんって、一体、何者なの?」

「月に行きたいだけの、しがない錬金術師ですよ」

 どこか楽しげにギンは言う。ここまでギンが感情を見せるのをエンナは初めて見た。

 恐らく、これがギンの本心なのだろう。

「教団の浮揚船……見に行きたいんだけどなぁ」

「まずは風邪を治さないと……」

 ぼやくクーに、エンナは、そう言う。

 薬も処方したので、既に症状には改善が見られている。明日には元気になるはずだ。

 教団の浮揚船は、シルバとラセルが抑えたそうだ。今は、人が立ち入れない場所……賢者の塔の屋上に横付けしてある。

「風邪が治り次第、総導師がお会いしたいそうです。ソラ様と錬金術師である我ら三人も立ち会うようにと」

「つまり、俺とレイハは除け者か……」

 ゲンザが溜め息混じりにぼやく。

「錬金術師のみにしか話せぬ内容だそうです。ただ、ソラ様は特例だとか」

 ギンの言葉に、エンナは考える。

 月に関し、公にしたくない話なのだろう。

 大口径の望遠鏡で観測すれば、月の地表に都市を見つける事もできる。だが、それは廃墟なのだ。

 月の人口は、多く見積もっても千人程度。錬金術師となると数十人しかいないらしい。

 錬金術師でなくとも、月を観測できる手段を持つ者なら気づいているかも知れない。ただ、口にしないだけなのだ。

 この賢者の塔の導師たちは、恐らく、そうなった理由を知っているのだろう。

やっぱり、エンナが目立ちませんね……

ちなみにエンナ以外は皆、雨に打たれて濡れてたんですが風邪を引いたのはクーだけです。

前回の締めでクシャミを連発させた関係上で、特に深い意味はありません。

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