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蒸気大革命  作者: あさま勲
三日目
25/50

25

2/13 少しだけ修正加えました。

 エンナがヒスイの元に行くと、何か雰囲気が違っていた。妙に、よそよそしい雰囲気。

「エンナさん。呼びつけておいて申しわけないですが、今日は、ちょっと失礼させてください」

 エンナを見ると、ヒスイは開口一番に、そう言った。

「はい?」

 わけの分からないエンナ。

「昨日のラセル師の実験、それを教団が問題視しているようです。関係者である、エンナお嬢様のところにも、恐らく、やってくるでしょう。気を付けてください」

 ギンの説明。でも、やはりエンナには、わけが分からなかった。

「問題視って……」

「月までの移動手段を持っているのは、現在、教団のみです。昨日も説明しましたが、教団以外に、その手段を確立できる者が現れた場合、教団の権威が揺らぎかねません」

 大きく息をついて、ギンは言葉を続ける。

「昨日の実験と、同様の手段でも月まで辿り着ける。ソラ様は、そう公言してらっしゃいました。そして、ラセル様も、それが可能であると、おっしゃってました。わかりますか?」

 ソラは、そういった理由で殺されたらしい。それはわかる。でも、あの汽械で、本当に月まで行けるのかは、エンナには疑問だ。

「でも……」

「疑問に思うのは理解できますが、詳しく説明している時間はありません。いま、統連に教団の浮揚船が来てます。理由は憶測ですが、先ほど話したとおりです。恐らく、エンナお嬢様のところにも、やってくるでしょう」

 そう言われても、何か対策がとれるとは思えない。

「実際、ソラは、昨日の実験よりも、お粗末な汽械を造っていただけで消されたんです。浮揚船が来ている以上、エンナさんのところにも、きっと来ますよ」

 お粗末な汽械。そのヒスイ言葉が、エンナにはカチンときた。

「お粗末な汽械って、あなたは、そう言えるほど、ソラさんを知っているんですか!」

「ミスリルの罐が手に入らないから、高い推力が得られない。ソラは、よく、そう言ってました。ミスリルの罐を創ってくれたら、いつか月まで連れて行ってくれるって、昔、約束したんですけどねぇ……」

 エンナの言葉に、ヒスイは、ぼやくように言う。

「ヒスイ様、軽々しく、そういうことは口にしないでください」

 咎めるような口調で言い、大きく息をついて、ギンは言葉を続ける。

「エンナお嬢様も、この件は、教団の者に話さないようにしてください。美原見の家とて、教団と事を構えられるだけの力はありません」

「ソラさんと……、知り合いだったんですか……?」

 エンナは、驚いたようにヒスイにたずねる。そんな話は、ソラから聞かされていない。

「友達だと思ってたのに、あいつは何も教えてくれてなかった。弟のこと、カーボライトのこと。あることを教えてくれたら、俺が創ってやったのにっ! あなたにだって、何も教えてなかったんじゃないですか?」

 悔しげな口調でヒスイは言う。その問いに、エンナは、とっさにこたえられない。

「教団に目を付けられた汽械術師などに手を貸したら、本家の方にも、累が及んだでしょうな。ソラ様は、そこまで考えていたのでしょう」

 ギンは言い、大きく息をつくと、窓の外に視線を向ける。

 エンナも外を見るが、まだ何も見えない。

「ヒスイ様。そろそろ撤収しましょう」

 ギンの言葉に、ヒスイは舌打ちをすると外へと出ていく。

「教団に、あまり迂闊なことは言わないでください。場合によっては、本家としても、あなたを切り捨てなければならなくなります」

 本家に累が及ばないよう、場合によっては縁を切る。そういうことだろう。

「あとひとつ。個人的な意見ですが……。やはり、ソラ様に弟がいたとは、考えにくいのです」

 ギンは、外へ出ようとして、いったん足を止め、振り返ってエンナに言う。そして、外へと出ていった。


 それから、およそ十分後。エンナは、教団の息がかかった者たちに拘束された。

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