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蒸気大革命  作者: あさま勲
二日目
19/50

19

 抱きしめられる感触で目が覚める。

「若だんっ、……坊ちゃん、大丈夫ですか?」

 レイハだった。抱きしめる手をゆるめると、心配そうにクーの顔をのぞき込んでいる。

「大丈夫……」

 クーは、そうこたえる。そして、自分が泣いていたことに気づいた。

「ずいぶん、うなされてましたよ」

「うん。だと思う」

 レイハの腕の中から抜け出し、そして背を向け横になる。全身が、じっとりと汗で湿っていた。

 薬を飲まされ、体中が、灼けるように熱くなったあと、ソラの意識は途絶える。そして、目が覚めたら、こんな体になっていた。

 錬金術関連の書物をひっくり返し、エンナの父の残した解毒剤の説明文などを調べた結果、毒で、使い物にならなくなった部分を切り捨て、残った部分で、再度、体を作り直したらしいとわかった。結果、体重は半分以下の、こんな子供の体に。

 クーは、溜め息をついて身を起こす。

「坊ちゃん?」

「顔、洗ってくる」

 そう言い、ベッドから降りると、クーは部屋を出た。クーが心配なのか、レイハが黙ってついてくる。

 ソラが毒を盛られたらしいことは、すでに周りに知られていた。だから、ソラは死んだということにしたのだ。姿も変わったし、教団の目を欺くには、ちょうどよい。それに、生きているということが知られたら、恐らく次の手を打ってくるだろう。そうなったら、もう対策はない。

 クーは、顔を洗い、レイハが手渡してくれたタオルで顔を拭う。

「本当に、大丈夫ですね?」

「大丈夫。……起こしちゃったみたいで、ゴメン」

 レイハの部屋は、クーの部屋の隣。たぶん、うなされているクーの声が、そこまで聞こえたのだろう。

「朝まで、一緒にいますよ」

「大丈夫だよ」

 力無く言うクーに、レイハは苦笑混じりにこたえる。

「坊ちゃんが心配で、わたしが眠れません」

 本気で心配してくれているのはわかる。だから断りにくい。クーは、何も言わずに、大きく溜め息をついた。

 雨が、屋根や甲板を叩く音が聞こえてくる。まだ、雨が止みそうな気配はない。

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