魔王ゴクシの千年譚
この世界の歴史上において、何度か発生したとされる魔王。いずれも強大な力を持ち、人々を苦しめたとされたがならばどの魔王が一番最強なのか、という問いがあるならきっと誰もが、おそらく直に相対していない古の人間族も答えるだろう。
千年を経てなおこの世界に君臨する魔王ゴクシ、と・
千年前、魔王ゴクシはとある迷宮から発生したただのスライムだったという。しかしその資質はただのスライムには収まりきらず一年に二度も進化をするという話が伝わっている。最弱種族のはずのスライムが二度の進化。二度の進化自体は非常に珍しいとはいえ他の個体でもありえない事ではなかったが、高度な魔術障壁ですら溶かせる最上位のスライム種の一部が持つ溶解能力を中位スライム種でありながら持っていたという異常性はあった。名前は残っていないが魔王ゴクシは下級魔物の使役生物で、その主であった下級魔物が魔物の成長を大きく強化する能力を持っていたとされ、それにより強大な力を手に入れたとされる。
ある日魔王ゴクシの生息地だった今は失われた名も無き迷宮へ侵入した当時最高位の冒険者だった4人組、王級小隊と遭遇したとされるが彼らという脅威によって魔王に覚醒したというのは間違いないようだ。王宮小隊は遺体は見つからなかったものの状況から死亡したのはおそらく間違いなくないとされる。
魔王として覚醒したゴクシは迷宮から防御障壁などものともせず這い出て、待機していた魔術師中隊を全滅。近くに当時存在していたアルバノの街を僅か1時間で消滅、その後体積を恐ろしい速度で増殖させながら当時の国家リナベルタ、現在の魔王領ゴクシベルタを覆いそこに住まう住人を消化した。
ここにいたり危機感を抱いた当時の国家、冒険者ギルドは討伐を決定。が、魔王ゴクシの特性とされる人類の能力のおよそ9割以上を低下させるその恐ろしい能力と魔術精霊術あらゆる事象を無効化する能力になす術なく返り討ち。千年経った現在世界の9割以上が魔王領となっている。人類に対して発揮されるその恐ろしい能力に抗う術は生み出されず今日にいたる。
魔王ゴクシに相対したものはその殆どが生還せず、ごく一部の人間がゴクシが己の名を名乗り気まぐれで生かされ半死半生で戻れたのみである。現在のこの世界は魔族が支配種族で人間は被支配種族でしかない。かつての栄光を取り戻す日は来るのか。希望は少ない。だが、少ないとはいえ希望はある。最近勇者と呼ばれる少年の集団が現れているのだ。魔族の能力を低下させるそれは魔王ゴクシの対になる能力ではないかと言われ、いずれ、両者は激突するのは間違いないだろう。人間族の私は勝利を願ってやまない。
カルロ=アムスの書より抜粋 魔王ゴクシについて キヌマス魔族博物館展示 ガダ紅魔伯寄贈
強引ですが完結しました。未完は避けられました。
いろいろ駄目な点も多かった気もしますが未完で終了だけは避けられて良かったです。
ゴクシが最期に願った通りスライは最強になりました。最強タグをつけるべきか迷いましたが主人公は別に強くないので詐欺になるか、と思いやめました。