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迷宮下っ端育成生活  作者: ゴロフォン
6/9

鈍化

 当たり前の事実がある。運動などの現実関係は良く分からないがMMORPG、RPGでもソーシャルゲームでも良い。それらは必ずこの事実に直面するはずだ。

 成長速度が早いのも序盤まで、と。



 進化二回目。レア種族とやらに進化したスライははっきり言ってあからさまにレベルの上がる速度が下がった。具体的に言うならおよそ4日に1レベル上がるかどうかといったくらいだ。おそらくただの廃棄物ではもうスライの成長の糧には殆どなっていない。それでも僅かには入って塵も積もればなんとやら、後はたまに処理の面倒そうなゴミを処理してそれなりの経験値を。寄生持ちで奪っている経験多くなっているとはいえおそらくスライの方が入っている経験はまだ多いはずなのに俺と大してレベルが上がる速度が変わらないどころかスライが1上がる間に俺が2上がるという有様だった。

 進化してから2か月。思わずスライの有り余るスキルポイントで取得可能候補の一つにあった倒したあるいは吸収したモノからの獲得経験効率上昇というスキルを取ってしまいそうになったが、我慢してポイントを貯めている。理由は単純。恐ろしく必要ポイントが多く、しかし最優先で取りたい、そんなスキルがあったのだ。幸い、スライは上位種族に進化したことでレベル上昇時の獲得ポイントが進化前よりさらに1増えていた。つまり1レベルで3ポイント入手できるのだ。だから数えて58日、およそ2か月、14レベル上がったことでようやく取れるようになったのだ。


 万物溶解 140ポイント

 溶解を万物溶解に最上位置換する。不定形水妖系最上位含む三種のみ取得可能。自身に取り込んだ場合アガルド世界に存在する全ての生物を時間経過で溶解可能。防御障壁溶解可能。溶解スキル時より大幅溶解速度増加。全ての生物は回避行為以外でこの能力を防ぐことは不可。保有魔力差によっての万物溶解の完全無効化不可。

 つまり溶解の超絶強化だった。


 あの時、トカゲの人から放り込まれた呪詛石で起こった危機の中思ったのだ。

 あれがスライの手に余って全然溶かせなかったらどうしよう、と。

 初めの初めこそ溺死による戦闘を考えていたが、ゴミ処理めいたことをさせられるようになり、それが仕事になったことでスライの一番の武器は水で息を止めることではなくあらゆるものを溶かし、それを経験値という糧にできることだと俺自身はそう考えを変えた。溶解→吸収→毒浄化のコンボが非常に強力なのだ。おそらく普通に敵を倒したり行動による経験よりかなり経験値の入手量が多いはずだ。初期の成長限界の低さもあったがそれよりもこの経験値効率がこの二回の進化という高速成長をもたらしたともいえる。でも、それでもスライの唯一にして最も強い攻撃手段である溶解も効かない物、あるいは生物もいるだろう。スライよりも格上ならそうなる可能性はかなり高い。だから、どんなに格上でも、どんなに強くとも完全に防ぎきることが出来ないというこの万物溶解のスキルは、スライにとって絶対的な武器になる。

 つまりは必殺技になりうると思ったのだ。ステータスを上げることも考えた。成長資質増加も考えた。だが一つだけ、誰が相手だろうとどんなに格上だろうと絶対に有効打になる。俺はそこに魅力を覚えたのだ。後は火炎耐性を取って俺が覚える弱めの火属性スキルで熟練度を上げ、振り分け可能なステータスポイントを敏捷極振りにして敵により速く取り付けるようにするのが当面の目標だ。

 そして。

 万物溶解に伴い、ゲラーさんが以前冗談と本気半々くらいで呟いていたことがある、スライが出来れば良いが処分は無理だろうな、と言っていたあの呪詛石より恐ろしく面倒な廃棄物達の話。呪詛石のように迷宮の環境を悪化させる危険性こそ無いが呪詛石と匹敵するほどの魔力あるいは高度な防衛機構。それの溶解に挑戦する予定だ、スライが。万物溶解が本当にその大層な説明と名に相応しい力を持っているのか。取り消しできなくてスキル振り直しなんか出来はしないので後悔先に立たずになってしまうが、どれほど溶解から効果が上がったのか。それを確かめるには危険物だが意思を持たず動かず、攻撃をしてこないそんな品々が良い。動く敵、いや人間の冒険者はまだスライに相手をさせたくない。だが、経験値は欲しいのだ。それも大量に。無理そうならゲラーさんに泣きついてすぐやめれば良い。大体そんな方針を立てた。



 スライ レベル17 最大レベル99 生きた水

 力 92

 敏捷 110

 魔力 826

 生命力 2532

 所持スキル

 身体水質常時浄化91レベル 魔力再生98レベル 万物溶解 捕食 溶解強化(5ポイント) 成長資質微強化(10ポイント) 生命強化 魔力再生強化 魔核保護8レベル 魔核増加4レベル 生命水生成 2レベル 浄化水生成 2レベル 生命吸収 4レベル 生命譲渡5レベル

 取得スキルポイント増加 魔力常時微回復 27レベル 生命成長資質強化・高(35ポイント) 魔力成長資質強化・中(30ポイント) 呪詛耐性35レベル 特性強化(生きた水)

 残り未選択能力値0

 残りスキルポイント1


 溶解強化が無駄になった感もしないでもない。いやたぶん、消化速度は上がっているはず。でも万物溶解で消化性能カンストだという事はカンストに強化とかしても意味無いだろうという気持ちもないでもない。まあ数値化されていない能力に効果が云々考えても仕方ない。あると前向きに考えよう。


 ゴクシ レベル47 最大レベル80 使役者

 力 56

 敏捷 68

 魔力 60

 生命力 102

 所持スキル

 能力閲覧 成長能力値選択可能 スライム召喚35レベル 寄生主 水魔術8レベル 筋力成長微増 使役生物召喚術5レベル 召喚生物進化誘導 召喚生物取得能力ポイント増加 召喚生物行動可能範囲拡大 取得スキルポイント増加 特性強化(生きた水)45ポイント

 残り未選択能力値0

 残りスキルポイント18ポイント


 まあ戦闘力的に問題なのはスライじゃなくて俺だよな。力と魔力は低め、残り二つのおよそ半分くらいしか上げていない。まず逃亡をしやすいように敏捷、そして最優先は生死に直結した生命力だろう。いや、もう一つある。

 スライの生命吸収による万が一の予備タンクの役割だ。呪詛石で役に立ったか分からないがあの急激な侵食による生命魔力の低下。あれで万が一があるかもしれない。スライに魔力吸収スキルがあればよかったのだがなぜだか無かった。捕食がそれなのかも知れないが呪詛石などの危険物には魔力吸収よりも消費の方が大きくて効果が無かったあるいは分からないくらいの効果しかなかったように見える。仕方ないのでタンク代わりの生命と、戦闘区域からの自身の素早い逃亡のためにこの二つに多目に降っておいたのだ。


 が、まあ正直スライの成長を比べて著しく見劣りする感はある。スキルポイントも18ポイントあっても正直取れて良さそうなスキルなんて俺には無いように見える。有用そうなスキルは軒並み30くらいからだ。つまり現在俺は能力以外での成長は特にない。せいぜいスキルマイナスからの回復良かったな、くらいだ。

 俺の適性は使役者。つまり召喚物の強化に特化しているのだ。

 新しい召喚生物を使役することも考えた。だが、前も思ったがどうみても戦力差が酷すぎる。無いと思いたいが複数の生物を使役することでスライへの支配力が衰えてガブッ、どろどろ、と消化される可能性もあるのだ。というよりどう考えても俺の特性上次の召喚生物も俺自身より強くなるのは間違いない。

 自分より強い生物二体とかちょっとどころかかなり怖いです。いや、スライが裏切るとは殆ど思っていないがあっさり殺される戦力差だと元が屑引きこもりの俺は怖いです。誰かに慕われるような魅力がまるでない事を自覚しているのでスライにスキル効果以外で好かれている自信がない。前は親代わりだなと思った記憶もあるが親は親でも駄目親だ。愛想を尽かされても不思議じゃない。

「はぁ」

 俺の溜息にどうしたの? と言わんばかりに身体の一部を触手のように目の前まで伸ばしふるふると震えるスライ。お前に下剋上されるのが心配だからため息をついているんだよ、とは当たり前だが言えない。それにふるふると俺の方を向いて震える姿は巨大になった今も愛らしく、憎めないのも事実なのだ。たぶんこの辺が住人の皆さんに人気の理由だろう。裏切られることは無いだろうな、とどこかで思っているのはこの愛らしさにやられているのだろう。

「いや、何でもない。明日はゲラーさんにちょっと難しい処理物貰えるよう頼んでみるからスライ、頑張ってくれよ?」

 結局頑張る部分はスライにお任せなのを少し空しく思いながら俺はおやすみと言って目を閉じた。






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