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迷宮下っ端育成生活  作者: ゴロフォン
4/9

努力を始めよう

 基本的に安全っちゃ安全だ。どうも戦闘より迷宮の衛生環境向上のための廃棄物処理の方が評価されているようで、スライはおそらく戦闘よりは基本そちらの方に駆り出されることが多いだろうというのがゲラーさんの予想だった。

 つまり楽して経験値が手に入る。皆どうしてやらないのか、と思ったがすぐに俺の能力のおかげだと気づいた。つまり、スライムの育成でスキル選択可能な能力を持っている奴がいない、もしくはこの迷宮内にはいないのだ。

 現れた当初は何だこのゲーム的なスキルは、とニートな前世を思い出して微妙に思ったがスキルポイントを自由に割り振れる、というのはやっぱり大きいアドバンテージなのだろう。というよりスライムは最弱な分レベルアップスピードが早いのと限界レベルが低いのが大きかった。後スキルポイント取得増加が20ポイントとかおかしいだろ。俺は50だったのにな 取りあえず当面は進化して寿命は余裕が出来たし、スライの二度目の進化を気長に待ってみるか。どうせ戦闘に出る気配ないし、無理して今すぐ別の生き物を増やして戦力強化をすることもないだろう。



「は、はぁ。えっと……大丈夫でしょうかね?」

 研究室でそれを見たとき、俺はさすがにこれは厳しいと思わざる得なかった。だから否定の意を含んだ疑問の言葉を目の前の2メートル以上はあるごつい鎧を着た二足歩行とか、いや竜の、ようは人型の竜族の幹部に対して投げかけずにはいられなかった。竜族と言わずにリザードマンといったら殺されるから言うなよとゲラーさんが念を押していた人だ。そんなゲラーさんは出かけてくると言ってどこかへ行った。

「大丈夫大丈夫。竜牙兵製造失敗して出来た処理面倒だったごみも溶かせたんだからそのスライム、スライだったか? スライだって何とかなるって」

 今までスライは割と何でも溶かして浄化して経験値にしてきたと思う。だが、目の前の竜族が持っている黒い石らしきそれは拳大の大きさとそこまで大きくもないはずなのに明らかにやばいと言える代物に見えた。俺が見ただけでこれはやばいと生存本能らしきものがアラートを鳴らしてる時点で嫌な気配が凄い。生存本能に訴えかけてくるのは正直初めてだ。

「うーん、まあやってはみますけど、失敗しても知りませんからね」

 こんなこと言いたくないし、スライにここまで危険そうな気配のすることはさせたくないが目の前の男に逆らう=俺とスライの死が濃厚にちらついてるのがな。役立たずは殺すとか言いそうな気の短そうな人だ。ヤンキーっぽいともいう。まあゲラーさんが血の気が多い奴だと言ってたしたぶん間違ってはいない。


「スライ、やばそうだと思ったら一旦吐き出せよ、時間をかけてゆっくりで良い。最終的に消化出来れば良いんですよね?」

「ああ。それでいい、いい。処理出来ちまえばそれで良いんだから問題ねえよ。ただ、放置してたらろくでもないことになるがな」

「一応、それが何なのか聞いても?」

「呪詛石だ。それもとびっきりのな」

「呪詛石?」

「何だ、ゲラーんとこいるのにそんなのも知らねえのか、ああーそういや作られてまだ数か月って話だっけ。名前……まあいいやお前が知らないのなら説明してやるが呪詛石ってのは要は生き物の怨念が凝り固まって出来た石の事だよ」

 凄い嫌な説明が来た。何だその持つだけで呪われそうな代物は。

「この迷宮に潜り込んできた人間にやられた奴、俺らが殺した人間そういうのが残した呪いの塊を迷宮核が吸収してるんだがな。何年かに一回溜まった呪詛をこうやって高密度の石にして排出してるのさ。毎回遠くの人間の街とかに放り込んだりしてるんだがな。何でも溶かすスライムがいるってんで、今回試しにこれを溶かさせようって事になったわけだ」

「つまり…組織全体の命令ですか?」

「そうなるな。お前の育てたスライムが意外なほど優秀だってんでどこまで出来んのかって試す意図もあるな。まあ安心しろ。やばくなったら外に捨てに行く方向で切り替えてやるからそいつが死ぬことはねえよ。スライがごみ処理引き受けて迷宮も住みやすくなったって評判良いんだぜ? わざわざ失わせることもねえよ」

「そ、そうですか。まあとにかくやってみますね」

「おう」

 そんな短い言葉。軽い言葉の後にあっさり放り投げられる呪詛石。心の準備が出来ないままあっさりとスライに石は飲み込まれた。

 っ! ステータス!


 スライ レベル32 最大レベル60 生命型スライム

 力 29

 敏捷 28

 魔力 120(156-36)

 生命力 285(325-40)

 所持スキル

 身体水質常時浄化21レベル 魔力再生31レベル 溶解 捕食 溶解強化(5ポイント) 成長資質微強化(10ポイント) 生命強化 魔力再生強化 魔核保護5レベル 魔核増加3レベル 生命水生成 2レベル 浄化水生成 2レベル 生命吸収 3レベル 生命譲渡5レベル

 魔力常時微回復 7レベル 生命成長資質強化・高(35ポイント) 魔力成長資質強化・中(30ポイント) 呪詛保持

 残り未選択能力値3

 残りスキルポイント17


 レベル3上がってる!? って能力値下がってる! やべえ! ステは魔力全振りで、ってレベル上がるの早え! スキルポイント何かに振れるのか、あーとりあえず

「スライ! 俺の生命吸っておけ!」

 スライのゼリー状の体が俺の体に触れる。何かが吸われる感覚がきつい。これ脱力感がやべえ……あとは俺のステを


 ゴクシ レベル6 最大レベル80 使役者

 力 46

 敏捷 48

 魔力 50

 生命力 36(50-14)

 所持スキル

 能力閲覧 成長能力値選択可能 スライム召喚15レベル 寄生主 水魔術7レベル 筋力成長微増 使役生物召喚術1レベル 召喚生物進化誘導 召喚生物取得能力ポイント増加 召喚生物行動可能範囲拡大 取得スキルポイント増加

 残り未選択能力値10

 残りスキルポイント12


 このレベルの上がり方は異様だ、今も数秒に1上がっている。全部生命振りで、スキルは何か……


 召喚生物特性強化 召喚生物により必要ポイント変動

 召喚生物の優れた性質を強化する。対象指定の必要あり。


 レベル上がってこれが出たのか! これで良い! 何が上がるのか分からんがスライが強化されるのは間違いない!


 召喚生物特性強化(生命型スライム) 20ポイント

 魔力再生、浄化、溶解 生命を強化する。    


 よし! ポイントほとんど持っていかれたが問題ない! これでだいぶましになるはず。


 スライ レベル58 最大レベル60 生命型スライム

 力 69

 敏捷 58

 魔力 116(326-210)

 生命力 162(672-510)

 所持スキル

 身体水質常時浄化71レベル 魔力再生72レベル 溶解 捕食 溶解強化(5ポイント) 成長資質微強化(10ポイント) 生命強化 魔力再生強化 魔核保護8レベル 魔核増加4レベル 生命水生成 2レベル 浄化水生成 2レベル 生命吸収 4レベル 生命譲渡5レベル

 取得スキルポイント増加 魔力常時微回復 9レベル 生命成長資質強化・高(35ポイント) 魔力成長資質強化・中(30ポイント) 呪詛保持 呪詛耐性16レベル 特性特化(生命型スライム)

 残り未選択能力値0

 残りスキルポイント69


 ぎりぎりじゃねえか! 大丈夫なのか?


「おっ?」

「あ」

 レベルが限界値を超えた。

 前と同じようにスライの体が膨れ上がった。


 スライ レベル3 最大レベル99 生きた水

 力 80

 敏捷 72

 魔力 316(626-210)

 生命力 1262(1772-510)

 所持スキル

 身体水質常時浄化91レベル 魔力再生98レベル 溶解 捕食 溶解強化(5ポイント) 成長資質微強化(10ポイント) 生命強化 魔力再生強化 魔核保護8レベル 魔核増加4レベル 生命水生成 2レベル 浄化水生成 2レベル 生命吸収 4レベル 生命譲渡5レベル

 取得スキルポイント増加 魔力常時微回復 27レベル 生命成長資質強化・高(35ポイント) 魔力成長資質強化・中(30ポイント) 呪詛耐性35レベル 特性特化(生きた水)

 残り未選択能力値5

 残りスキルポイント99


 収まった……のか。何となく原因らしかった呪詛保持のスキルが消えている。そして魔力と生命の減少が止まっているどころか緩やかに回復し始めている。終わった……な。でも進化選択の余裕がないほどやばい状態だったのか。

 いや、単に進化の可能性が一つしかなかったのか。


 ゴクシ レベル16 最大レベル80 使役者

 力 46

 敏捷 48

 魔力 50

 生命力 24(80-56)

 所持スキル

 能力閲覧 成長能力値選択可能 スライム召喚25レベル 寄生主 水魔術7レベル 筋力成長微増 使役生物召喚術5レベル 召喚生物進化誘導 召喚生物取得能力ポイント増加 召喚生物行動可能範囲拡大 取得スキルポイント増加 特性特化(生きた水)45ポイント

 残り未選択能力値0

 残りスキルポイント-13ポイント


 スキルポイントマイナスになってるとか。これからスライが進化するたびにごっそりスキルポイント減らされるのか……厳しいな……でもスライ恐ろしいほど強くなったな。既に俺の能力値と20倍以上違うのがあるんですが。そもそも生きた水って何だよ。後スキルポイント99ポイントはどうしてこんなに? おそらくレベルアップ分と進化の分だろうが。先に凄いいかれてるな……

「すげぇじゃねえか!」

「は?」

 隣を見ると疲れた俺とは対照的に竜族の男ははしゃいだ様子で歓声を上げていた。

「俺スライムが進化したところなんざ初めて見たぜ! しかもこれ、能力なら幹部もいけそうな感じだぜ! スライ! お前すげえじゃねえか! あと……誰だったか。お前もすげえよ。こんな奴育てられたんだからな。たぶんお前召喚物の能力強化する力かなんか持ってるぜ。お前魔物育成士に就くことになるかもしれねえな」

 名前覚えられてねえ。いや、普通はスライ>>>超えられない壁>>>俺だよな。能力的に。

「はは、召喚した生物じゃないと駄目そうですけどね」

「ならスライム専門か。まあとにかくよくやった。間違いなくスライはかなりに地位まで行けるぜ。お前もついでに良い所まで行けるだろうさ。まあだいぶ疲れたみたいだし今日は休め。お前らへの明日までの接触禁止を命じておくからゆっくり休んでおくんだな」

「はい。ありがとうございます……じゃあもう帰ってもいいですか」

「ああ、お疲れ様。いや、良いもの見れたよ。それに呪詛石まで溶かせるならまだあと何回かは進化出来そうだな。これからも頑張れよ。スライ。後、覚えてなくて悪い、名前は?」

「ゴクシです」

「ゴクシも頑張れよ。じゃあな」

 手を振って竜族の幹部の男は去って行った。

「お前本当に凄いじゃないか。まさか生きた水をこの目で見られるとはのう」

「ゲラーさん?」

 ふと気づいたらいつの間にいたのかゲラーさんが俺の左に立っていた。目の前の急成長した既に巨大スライムと言っても良いスライを眺めながら俺に話しかけてきたらしい。いつの間に? いやここは研究室だからいてもおかしくないがいつ帰ってきたのか。

「お前は自分が思っておるより凄いことをやらかしておるぞ。やはりそうか……生きた水はスライム派生かそもそもスライムの祖が生きた水の可能性も」

「えっと? ゲラーさん。生きた水って?」

「お、おう。そうか。知らぬか。説明しておくとだな。生きた水というのは生物関係の研究者の間では生命の祖と呼ばれておる生物じゃ。生命の海から高純度の魔力を含んだ意思を持った動く水がまず生みだされ、それが地上に群生していた植物と混ざり、動く樹人となり、その身を肉と換え動物が生まれた、という説が一応あっての。その最初の高純度の魔力を持った意思を持った水が生きた水、と呼ばれておるのじゃよ。ほぼ植物のみが存在する秘境にほんの僅か存在しておるそうでの。その特徴は、向こうが見えるほどに澄んだ水、これまた向こうが見えるほど澄んだ透明な魔力核じゃ。スライム種はすべてが色がついている、あるいはついていなくとも濁っているのが常じゃ。スライだってさっきまで透明度はそれなりに高かったとはいえ向こうが見えるほど澄んでいたわけでも無かったし、魔力核は色も赤かったじゃろ? 身体も魔力核もどちらも澄んでおるのは生きた水と断じて問題あるまいよ」

 長い説明で分かりにくかったが、生きた水は珍しいらしい。どうも原始生物扱いらしいな。先祖返りでもしたのか。

「その存在は希少にして能力も高く捕獲も困難だとか。というより捕獲しようとしたら地に染み込んで逃げられたという例が多いしの。専用道具で捕獲してもどうも不快さを覚える環境に弱いのかすぐ死んでしまう。死んだら魔力核も溶けて何の変哲もないただの水になってしまうところが生きた水と名付けられた所以じゃの」

 え? ストレスで死んでしまうのか? 目の前のふるふる震えるスライを見る。ストレスであっさり死ぬのか……お前、大丈夫なのか。

「まあ天然の生きた水は厳しいがスライはお前の召喚物じゃろ? おそらく気分で死ぬのはあるまい。まあ扱いは注意すべきじゃと思うがの。お前はやはり育成能力が高いの。手法が優れているという意味ではなく、何らかの特性、召喚物の成長を著しく強化する能力がある、という意味での。まあお前は現場に立って戦うよりそちらがむいているのじゃろうな。おそらくそれ方面の仕事を割り振られるじゃろう」

「そうですか……いや、スライだけで手一杯そうなんですが」

 他の生き物育てるとか言ってたがスキルポイント的にちょっと無理そうでした。

「それで良い、まあそのうち余裕が出来たら他のを育てる、ぐらいで問題ない。いや、スライだけで十分すぎるほどの成果じゃよ。正直儂はお前の事を低く見すぎていたのかもしれん」

「いや、俺自身は全くたいしたことはありませんからね」

「お前の身体能力がどうだとか魔力がどうだとかそれはどうでもいい。これほどの生物を短期間で育てたというのが素晴らしいのじゃよ。まあ呪詛石と、消化、吸収を主とするスライムの特性あってこそじゃがな。だが、おそらく他のものが同じことをしてもこうはなるまい。だからお前が凄いのじゃよ。身体能力や知能、魔力保有量が優劣だけがすべてを決めるものではないよ。これはお前だけが持つ、素晴らしい力じゃよ……誇っていい。もう一度言おう。お前はお前が思っているほど悪くは無い」

「あー……その、ありがとうございます。正直褒められた事殆どないのでどう受け取っていいのかわかりません」

「前世は前世じゃ。今のお前は素晴らしい能力を持ったこの迷宮の住人。前世がどうであろうとその事実は変わるまいよ」

「ありがとうございます」

 特に何か他人より凄い事をした覚えは無い。きっと他の頭のいい誰かが俺の能力を持てばもっと良い結果を出せたろう。



 だが、まあ昨日よりは今日。今日よりは明日今のところは成長しているはずだ。こんな俺でも毎日少しだけでも成長していると分かるのが良い。いくら伸びるか楽しいのだ。だからこのまま限界が来るまで、少しずつ努力を重ねていこう。

 まあそんな事を思ってても今は寄生しかやっていないから全く恰好がつかないが。






主人公単騎無双は無いです。戦うのはいつだって誰かと共に。そしてそれは人間族はよほどのことが無いと共にはいることはありません。スライム人化も無いです。


たぶん戦うことは殆どない。むしろ戦う時が来たらその時点で迷宮壊滅しかけています。

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