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迷宮下っ端育成生活  作者: ゴロフォン
1/9

気づいたら魔道生命体

女の子にもてたりは間違ってもありません。モンスターが人化することもありません。恋愛もありません。人とはほぼ確実に敵対します。奥に引きこもる後方でぐだぐだやってるのでたぶん人と会わないで終わる可能性も。


恋愛は対人経験があってこそ書けるものです。


        これはそれが魔王に至るまでの物語




 正直自分はただの穀潰しだという自覚があったし、何の才能もないことも顔も底辺なのも自覚はあった。人間なんて死んじまえ、と毎日のように恨み言をこぼしていた自覚はある。

 ニートをやっていたと思ったら異世界転生を果たしていた。お前の名前は594番目の生成物だから今日からゴクシな、と言われた。訳が分からない。



「よし、ごひゃくきゅうじゅうー、ん? ごひゃくきゅうじゅう何体目だったかの?」

 そんな俺が眠りから覚めたと思ったらどう見ても家の中じゃ無かった。石っぽい冷たい灰色の床。目の前にいる白髪の小さな黒人。皺の刻まれた白衣らしきものを纏った老人だった。

「え、と? あれ?」

「ん? 言葉を発した? 作ったばかりだというのにもう声が出せるのか」

 少しばかり驚いた様子でこちらを見る科学者らしき爺さん。作ったばかり? …あれ? この状況って誘拐された……んだよな? 誘拐された俺、目の前には研究者っぽい爺さん。改造物の小説って大怪我で仕方ないことも多いがそういう場合って本人の了解なしにされることが多いよな、とどうでもいいことが思い浮かぶ。

 まずい。あれ? これ、まずくないか!?

「えっと、すいません。良ければどういうことなのか聞いても……良いですか?」

 頭に逆らったら殺す機械を埋め込まれた、なんてお約束も多い。これは下手に行かないとまずいよな、と思いながら引きつり気味の笑顔で話しかける。

「話せるのか……ああ、これはどこかの魂がこの身体に入り込んだわけか。うーむ。眠気が止まらなかったからなぁ。どこかで術式を間違えたか」

「え、と」

「おお、すまんの。ふむ、まずはお前に言っておくことがある。おそらくその様子では自覚が無いだろうからなの」

 ん? お前は儂に絶対服従なのだ! とか無茶言いそうな感じではないが嫌な予感はする。

 爺さんは薄くなった白髪頭をかきながらぽつりと言った。

「元のお前はもう死んでおる」


 驚くほど取り乱さなかった。話によると元の身体の俺は既に死んでいて冥府に行こうとしていた魂がじいさんの術式で引っ張られ、今の身体に入り込んだらしい。顔と身体が元の身体にそっくりですよ? と言ったらだからお前が引っ張られたのではないか、と返された。この身体と俺の魂が非常に親和性が高かったから俺の魂がやってきた。生まれ変わっても俺の容姿は底辺なんだなとそれを聞いて妙に笑ってしまった。この容姿レベルぐらいが俺にはお似合いということなんだろう。ネット小説なのでお馴染みの、少し変則的だが異世界転生というやつなのだろうか。

「ふむ、生前の名前を名乗って良い、といいたいのだが身体だけでなく名まで生前と同じにしてしまったら能力の高低も前世に引っ張られる可能性がありそうだ。お前は生前英雄か何かだったりしたか?」

「まさか。ただの親の脛かじってた糞ニートですよ」

「くそにーと? まあ親の脛かじってたという言葉からろくなものじゃないのは分かった。では新たに名をつけるがよいな。何、生まれ変わって前世の未練を切るための儀式のようなものだ。それともどうしても前いたところに戻りたいかの?」

 ゴミ扱いされたニート時代に戻りたい? マゾじゃないのでありません。

「未練なんて全くないですね」

「それは良かったの。もしそうだとしたら不良品としてお前を処分していたところだ。無理やり連れてきたのに不満を覚えられてこちらに牙を向けられても仕方ないからの。前世に未練が無いというのなら問題ない。何、そう酷い労働環境では無い。基本収入は高い方さな」

 死亡フラグ回避! よくある元の世界に帰りたい、何て言ってたら終わってたのか。 未練なんて覚えない友達ゼロ非リア充万歳! ……だいぶ空しい。というより仕事?

「仕事?」

 聞き返す。え、仕事をさせられるのか?

「何、偶にこの迷宮に入り込む冒険者と呼ばれる人間を始末する仕事さな」



 ふぁんたじーばんざい。

 ようするに俺は迷宮の下っ端守衛として生み出されたということだった。あれだ。近いのはたぶんホムンクルスというやつだろう。寿命とかまずそうじゃね? と思ったので聞いてみたら種族進化すれば大幅に伸びるから頑張れば大丈夫さ、何て答えが返ってきた。長生きするためには強制的に頑張るしかない。何もせず成長もしなかったら食事睡眠を取ってもおそらく二年ほどで死ぬだろうといわれた。寿命短えよ! と憤ったら使い捨てのつもりで作ったからなぁ、すまんなぁと謝られた。いや、俺の魂が入り込んだのは偶然だろうから仕方ないが。死ぬ気で頑張るしかない。戦いたくないわーとか言ってられる状況じゃなかった。


 成長するには創造神が定めたレベルという身体の経験値のようなものを貯める必要があるそうで、それは何か行動をすればわずかずつ入るがほかの生き物を殺す、特に強い生物を殺したときに大きく経験値が入るらしい。種族限界までレベルを上げれば進化をし、別の生物に生まれ変わるのだとか。お前の種族は限界値が低いから限界値まで上げるのは無理というほどではないよ、と言われた。俺の利点は初めから意志があるので自由行動出来ること。自発的な知的行動がとれること。まあ頭は悪かったからそういうのは期待できないが命令されないと動けない、というよりは自発的に動き回った方が経験値が入りやすいのは間違いないじゃろとのことだった。



「そういえばゴクシ、お前何か能力に目覚めなかったかの」

 一通りの説明が終わった後、ゲラーと名乗った爺さんからそんな事を聞かれた。名前は594番目に作ったからゴクシな。酷い、って言ったら種族進化したら自分で新しい名前を名乗れば良いと言われた。珍しく意思を持っている個体だろうが強くなる前に死んでしまえば結局はそれまでは数多くいるただの人造生命体と変わらんかったということじゃしな、とさらに酷いことを言われたが諦めた。

「能力?」

「おう、偶にいるんじゃ。何らかの固有能力に目覚める物がな。珍しいというほどでもないが目覚める能力によっては非常に大きな力を持つ者もおる。前世の記憶を持って生まれたお前じゃ、何かあるかもしれんなと思ってな」

「能力、ですか」

 そんなものあるのか?

「おそらくあるとしたら前世由来のものじゃろうな」

 前世由来? 自慢じゃないが何にも才能が無かった俺だ。そんな物覚えが無い。一般人よりは右から左に流れるように頭空っぽにしながらネット小説読みふけっていたことくらいか。

 ステータスっていったら俺のステが見れたりしてな。


 ゴクシ レベル1 魔道人形

 力 3

 敏捷 2

 魔力 5

 生命力 8

 所持スキル

 能力閲覧 成長能力値選択可能

 残り未選択能力値0

 残りスキルポイント1



 見れた。どう見てもこれが固有能力ですね。ゲームばっかりしててこういう類の小説ばっかり読んでたからこんな能力手に入ったんですね。

 ……うん。前世由来だ。

 まあ理由はどうあれ成長を選択できるのもスキルを好きに取れるのも間違いなくチートだろう。使える頭があれば。

頭が悪かろうがこまめに何か考えるようにして少しでも頭の回転ましにしないとな。これからの行動が生死に直結するのだ。頭が悪いままでもいい。考える癖をつけようと思う。考えることをまずは習慣にしよう。

「どうした、何か思いついたのか?」

「いや、前世俺何の才能もなかったなあと思って悲しくなって。まあだから親の脛かじって生きてたんですけどね」

「ま、まあ所詮前世じゃからな。何、今の身体はもしかすると何か才能を秘めておるかもしれんぞ?」

「腹が出て太ったおっさんにしか見えないです。前世の俺もそうでしたが……というよりなんで戦い目的なのにこんな動けなさそうな体にしたんですか?」

「うん……すまんな。眠気でどうかしてたんじゃ。まあその体だからお前と親和性が高かったということで良ししよう。それでいい。それがいいんじゃ」

「そ、そうですか。まあすぐ死にそうなので取りあえず身体を鍛えるのが先決ですかね」

「そうじゃな。後で鍛錬用具を置いてあるはずの倉庫に案内しよう。頑張るのだぞ。初戦使い捨ての人形ではあるが、意志なき人形よりはこうやって言葉を交わせるお前の方が情が湧くからの。ある程度は生きていくための協力はしよう。弱そうな冒険者を優先的に回す、とかの」

 それ、凄く有難いです。いや人間殺せと言われても怖気づきそうだが結局は他人の命より自分の命。

 まあ前世があれだから俺は人間は嫌いだ。たぶん普通の人間よりはあっさりと殺せるだろうなと思う。



ゴクシ  レベル1 魔道人形

 力 3

 敏捷 2

 魔力 5

 生命力 8

 所持スキル

 能力閲覧 成長能力値選択可能

 残り未選択能力値0

 残りスキルポイント1

魂特性名 天級人類敵性存在

敵性存在(人間族) 常時1キロ以内のゴクシと敵対状態にあるもので人間族に属するすべての生物の能力を3割減少する。いかなる存在も抵抗不可。

特定天級結界(人間族) 人間族の手によって発生する一定以下のすべての現象を無効化する。ゴクシの能力によって無効化する範囲は変動する。

感情悪化・極(人間族) いかなる人間族もゴクシに対して好感度が上がることは無い。


人間族とは 人間、エルフ、ドワーフ、バードマン、一部の獣人などの光の祝福を受けた二足歩行の知的生命体の事。


人と仲良くなることはよほどのご都合主義をねじ込まない限り無いです。相対したらほぼ間違いなく殺し合いです。

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