表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

 ENDTIME~終局へ~


『お兄ちゃん!ただいまぁ!』


 

 ドスッ!


 

『うおっ!』


 

 ドアが開け放たれたと同時に麗華に飛び付かれる。


 

『お兄ちゃん!お帰りなさいのチューして』


 

 んー、と目を閉じて唇をつきだしてくる。


『えっ………と……』


 

 俺がためらっていると


 

『もう!焦らさないでよ!』


 

 ちゅ!


 麗華が首に手を廻してキスしてくる。


 

『ん~………まだ足りないよぅ』


 ちゅ! ちゅ!


 何回もキスされる。


 

『ふふっ。まだ足りないね』


 

『んちゅ!…ちゅ……ん!』


 

 クチュ! クチュ!


 

 さらには、舌同士を絡ませ合う。


 その後もたっぷりとした後


『えへへ!こんなもんかな?』


 

 嬉しそうに笑う。


 その頬は紅潮していた。


 

 悠治はというと、荒い呼吸をしていた。


 

 麗華が激しく求めてきたからだ。


『学校に行ってる間ね……ずっと………ずっ~と、お兄ちゃんのこと考えてたんだ。逃げてないかなって。でも……安心したよぅ!ちゃんといてくれて!』


 

 ぎゅー、と抱き締められる。


 

『なら、なんで学校に?』

『えっ?だってお兄ちゃんが働く代わりに私が働かないと。お父さんが死んだら、二人でどうやって食べていくの?だから、私がたくさん勉強して、いい会社いくの。』


 

 妙に現実的だった。

 もともと、麗華は俺なんかよりよっぽど頭がいい。


『あぁ……お兄ちゃん』


 すりすりとすりよってくる。


 

 俺は赤くなりながらも


 

『ご機嫌だな?』


 

『うん!だってお兄ちゃんが私のものなんだもんっ!あっ!もちろん、私もお兄ちゃんのものだよ?』


 無邪気な笑顔だ。


 言っていることは異常だが。


 

 でも、やっぱり麗華は妹だった。


 こんなことされているのに、嫌いになれない


『こうして抱き合ってるだけでも幸せ今までこんなこともしてくれなかったから。』


 

 ピンポーン


 インターフォンがなる


 

『お兄ちゃんはさ』


 

 ピンポーン また


 

『どんな女の子が好きなの?』


 ピンポーン また


 

『麗華、なってるぞ?』


 

『……無視だよ。そしたら諦めるよ。それより、今はこの時間が…』


 

 しかし


 

 ピンポーンピンポーン

 ピンポーンピンポーン

 ピンポーン………


 ひっきりなしに鳴り続ける。


 

『もうっ!誰なの!私とお兄ちゃんの邪魔する人は!』


 

 怒りながら玄関にいく麗華。


 そして


 そのまま玄関で言い争いを始めた。


 


 麗華が何か言っているのが、とぎれとぎれに聞こえてくる。


 

 麗華が何か言うと、その相手も言い返している。


 ふと、言い返している人の声に聞き覚えがある気がする。


 

 しばらくして、麗華が戻ってきた。


 

『誰だったんだ?』


 

 聞いてみると、麗華は苦々しく吐き出す。


 

『あの腐った女だよ!何様のつもりなのかなぁ!今日無断欠席したのが心配だったからって。』


 やっぱり愛花か。

 心配して来てくれたのか……。


『あげくの果てには、お兄ちゃんの恋人っていうんだよ!ねぇ…おにぃちゃん?おにぃちゃんの恋人は私だよね?あの女とは遊びだったんだよね?』


 

 つめよってくる。


 

『あ、…ああ。』


 

 麗華は満足気に頷き


 

『だから私言ってあげたんだ!

 お前、うざいんだよ!…俺には麗華がいる。ちょっと付き合ったからって、彼女面すんなって。あげくの果てには、お兄ちゃんの恋人っていうんだよ!ねぇ…おにぃちゃん?おにぃちゃんの恋人は私だよね?あの女とは遊びだったんだよね?』


 

 つめよってくる。


 

『あ、…ああ。』


 

 麗華は満足気に頷き


 

『だから私言ってあげたんだ!

 お前、うざいんだよ!…俺には麗華がいる。ちょっと付き合ったからって、彼女面すんなって。 あの女、ショック受けてたよ。ほんと、いい気味だよね?』


 

『…………………』


 

 ごめんな。愛花。

 お前は悪くないのに。


 でも、麗華に刺されなくて良かった。


 愛花が刺されるのも嫌だが、麗華が人を刺して、捕まってしまうのも嫌だった。


 

 俺も頭がおかしくなったかな。自分がこんな状態だっていうのに。


 

『ところで、お兄ちゃん?』


 

『ん?なんだ?』


 

『私が学校に行ってる間、何してたの?』


 

『ゲームしようとしたんだけど、右手が使えなくて本読んでた。』


 

『ふぅ~ん。あ、あのさ、私の机にある本読んだ?』


『読んだけど。』


『うー。恥ずかしいよぅ』


 

 頬をおさえて身もだえている。


 

 確かにあれは恥ずかしい。

 読んでるこっちも恥ずかしくなったぐらいだ。


 

『これからは、あの本に書いたことをいっぱい……』


 ガシャン!


 

 びくっ!


 二人の体が跳ねる。


『な、なんだ!今の音は!』


 

『ガラスの割れる音………かな?』


 

 その後

 下からドアを開けたり、閉めたりする音が聞こえてきた。


 

『ど……泥棒か?』


 

『それにしては、部屋を調べてる様子がしないよ?』


 冷静な麗華。


 その手にはナイフが握られている。


 

 別の意味で冷や汗が流れる。


 トン トン トン


 

 足音の人物が2階に上がってきた。


 

 ガチャ


 

 俺の部屋のドアが開かれる。


 そして、すぐには出て行かずに、部屋で何かしているようだ。


『っ!!おにぃちゃんの部屋を荒らしてる。汚らわしい奴がおにぃちゃんの部屋を!…………殺そう!殺してやる!』


 

『麗華!』


 

 俺はぎゅっと麗華を抱きしめる。


 

 このままでは、本当に麗華は殺してしまうだろう。


 

『おにぃちゃん?……こんな時なのに………もう!……でも………いいよ』


 それをどう勘違いしたのか、服を脱ごうとする麗華。


『ちょ、…ち、ちが…』


『また、私と一つになりたいんだよね

 よし!見せつけちゃおぅ!泥棒さんに』


 ああ、どうして………


 

 その時ドアが閉まる音がする。


 

 そして


 ガチャ


 

 この部屋のドアが開かれる。

 俺は麗華を背中に隠す。

 こんな麗華でもかわいい妹だ

 守りたい!


『えっ?』


 

 しかし俺は、間抜けな声をあげる。


 

 現れたのが意外な人だったからだ。


 対決


『あっ!やっと見つけました!』


 

 満面の笑みを浮かべる愛花。


 

『なんで、あなたがここにいるのかなあ?』


 

 背中から麗華が出ていく。


『…………さっきのおかしい女の子ですか………』


 俺は耳を疑った。

 愛花の口からそんな言葉が吐かれたことに。


『おかしい?』


 

 麗華が聞き返す。


 

 逃げろ!愛花!

 そう言おうとしたとき

 愛花が手に銀色に光るものを持っているのに気付く。


 えっ?ナイフ?


 どうして愛花がそんなものを………


 

『だって、そうじゃないですか!私の悠治さんが、私のことを嫌いだなんて、絶対にありえないですから!嘘だってすぐ分かりましたよ?』


 

『何いってんのかなぁ?あなた?おにぃちゃんはね、私のものだよ!』


 一触即発の状態だ。


 

『ふふっ……私のですよ?何せ私は恋人ですから。』


 その言葉についに、麗華がキレた。


 

『このっ!!殺してやるっ?』


 麗華がナイフを構え、愛花に向かっていく。


 

 俺は最悪の結果を予想し、目を閉じる。


 

『きゃあっ!!』


 しかし、聞こえたのは麗華の悲鳴。


 

 えっ?


 

 目を開けると、そこには肩から血を流している麗華が


『ふふっ。直進してくるからそうなるんですよ?』


 そしてナイフを血で濡らした、愛花の姿が。


 

 あ、愛花がやったのか?


 

『っ!!何なの!あんた!』


『いいましたよね?私は悠治さんの恋人だって……』


『おにぃちゃんの恋人は私だよ!!』


 

『ふふっ!嘘ですね。』


 愛花が笑いながら麗華に近づいていく。

 それにともない、麗華もじりじりと後退する。


『悠治さんと、キスをしたんですよ?愛し合ってるんです!ふふっ。入学して、一目見た瞬間に好きになりました。この人のためなら、なんでも出来るって。だから、私は悠治さんに好きになって貰えよう、必死に自分を磨きました。悠治さんが、他の女の子と話していた時は、何度も殺そうと思いました。でも、腕を血が出るほど握って我慢しましました。』


 

 激しい既視感を感じる。

 反撃するチャンスを窺っているのか、麗華も黙って聞いていた。


 

『そして、ようやく悠治さんの恋人になれた時、私は狂いそうになるほど、幸せになりました。』


 頬を赤らめて言う。


 

『ふ~ん。その程度で恋人?ばかじゃないのかなぁ?しょせんキスだけでしょ?』


 

 ぴしっ!


 

 愛花の笑顔が引き攣る。


 

『……どうゆう意味ですか?』


『私とおにぃちゃんはねぇ、もう肉体的に一つになったんだよ!残念だったねぇ!おにぃちゃんの初めての相手は私!あなたじゃないよ!』


 

 勝ち誇る麗華。


 

『嘘ですっ!そ……そんな…初めては私がって。嘘……嘘です………嘘ですよねぇ!!悠治さん!』


 

 俺は答えられない。


 しかし、それはこの状況では、肯定したのと変わらなかった。


『ひっ………ひゃあーーーーーーー!!』


 

 髪を振り乱し絶叫する愛花。


 そして、ゆらり、と麗華を睨みつける。


『ふふふ。殺してあげます。……あなたなんか殺してあげる。………私の悠治さんをとって。そして、あげくの果てにえっち?ふふふ!あははははっ!』


 


 二人が同時に相手に詰め寄る。


 

『『っっ!!!』』


 グサッ


 

 二人のナイフがお互いの腕に突き刺さる。


 そのままグリグリと押し込み始める。


 

『ぐぅっ!……死んで下さい!』


 

『あなたこそ、さっさとしんで、っ!!いいよ?私とおにぃちゃんは、がぅっ!!ずっと一緒にいるのっ!!


 ゴリゴリ


 お互いの刃が相手の骨を削っていく。


 動かされる度に、二人の体に激痛がはしる。


 

 二人ともあまりの激痛に涙を流す。しかし、それでもナイフを相手へと捩込んでいく。


『兄妹なのにですか?あぁっ!ふ、不自然ですねぇ!』


 

『愛の前じゃ、そんなの関係ないっ!』


 

 ズチャ!


 

 二人は示し合わせたように、同時にナイフを抜く。


 

 ナイフの刃はお互いの血で深紅に染まっている。


 

 そのまま今度はお互いの体を切り付けていく。


『悠治さんは私のですっ!』


 

『私のものだよっ!』


 

 ザシュッ ザシュッ


 

『や…やめろぉぉぉっ!!』


 

 俺の静止の声は届かない。

 二人は互いに互いを切り刻み、全身から血を流している。


 ぐじゃ!


 


 ポトッ


 

 俺の目の前に何かがポトリと落ちてきた。


 

『あっ………あぁっ!』


 

 目の前に落ちた、鮮やかな赤い切断面をみせるそれは


『ゆ………指っ!』


 骨まで見えている。


 

『うぐっ!』


 

 胃の中のものが込み上げてくる。


『ぐぅっ!ゆ……ゆびがぁっ!あ、あぁ!死んで下さいぃぃぃ!』


 グチャ


 

『ぎゃああああああ!』


 

 愛花が繰り出したナイフが目を貫く。


 

 麗華は反射的に後ろに下がり、脳までの到達を防ぐ。


『いたいぃぃっ!………いたいよぅ!』


 目から血の涙を流す麗華。


『二人とも、やめてくれっ!なんで、なんでこんなことを!』


 

 悠治の目からも涙が流れている。


 


 二人が争っていることもそうだが、なにより、それに割って入ることのできない、弱い自分にないていた。


 二人の悠治の問いに対する答えは、とても単純で、それゆえにとても純粋だった。


 

『『あなたが死ぬほど好きだから。』』


 

『な、なら、こんなことやめてくれっ!俺は二人に死んでほしくないっ!』


 

 この言葉に二人とも微笑む。


 

 しかし


『うれしい………うれしいよぅ、おにぃちゃん……でも、でもねっ!』


 

『あなたを愛するのは、一人で充分なんです!』


 


 


 届かない。いや、届いてはいるのに、受け取らないのだ。


 その時


 

『何があったんだ?下のリビングの………』


 

 父がいつの間にか帰ってきていた。


 

 そして、今のこの部屋の状況を見て言葉を失う


 

『なっ……』


 

 それが命とりだった。


 ズサッ


 

 二本の刃がその体に突き刺さる。


 

 一本は愛花が首に突き立て、もう一本は麗華が心臓に突き刺した。


 

『おま………ごふっ!!』


 

 ドサッ


 

 口から血を吹き出し、父が倒れる。


『邪魔しないでよ……お父さん。』


 

 それを二人は冷ややかに見つめる。


 二人とも、人を一人殺したというのに何の反応もない。


 

 俺は言葉が出せない。


 父……………さん?


 

 春人はぴくりとも動かない。


 あっさりと死んでしまった。

 本当にあっさりと。


 再び二人は向き合い切り付け合う。


 

『死んでよ!』


 

『あなたこそ!』


 

『うぐぅ!おえぇっ!』


 

 俺はついに我慢仕切れずに、胃の中のものを吐き出す。


 

 二人に避けるなんて言葉は存在していない。


 心臓に向かう攻撃は、自らの手を貫かせて止める。


 そのため


 ポトッ ポトッ


 と二人の指が悠治の前に転がり、その生々しい切断面や、気持ち悪さを再度、悠治に見せ付ける。


 

 胃の中のものを、全部床にぶちまけてもまだ足りない。


 

 もう、痛覚などなくなっているだろう。


 それでも二人は止まらない。


 

『あははははっ!』


 

『ふふっあははははっ!』


 笑いながらナイフで相手を刺していく。


 

『『死ね!』』


 

 ずぶっ!


 

『うっ!』


 お互いの繰り出した攻撃が、ちょうどお腹に刺さる。


 ぐりっ ぐりっ ぐりっ


 それをお互いに捩込んでいく。


 

『ぐっ………っ!い、いい加減……諦めたら…どうですか?』


 

『そっ……そっち…こそ…うっ!おにぃちゃんは……私の…もの…あぅ!』


 

 二人の体が、ズルズルと崩れ落ちていく。


 ドサッ


 

 二人揃って床に倒れる。


 

『お、おい!れ、れい…あ、あいか!』


 えっ?死んじゃたのか?


 

 呆然とする悠治


 

 しかし…まだ二人は息をしていた。


 

 ぬちゃぁ


 

 自分のお腹からナイフを向き、こちらに顔を向けた。


『ひぃ!』


 俺は反射的に後ずさってしまう。


 二人の顔は血だらけで、麗華は片目から何かが溢れている。


 

『ふふっ!……もう…ダメ…みたいです………悠治さん…』


 

 ズリッ


 

 愛花が這いながら、こちらに向かってくる。


 

 俺は腰を抜かしながら下がる。


『えへへ!……おにぃちゃん…私もダメだよ……体中から力が抜けているよぅ…』


 ズリッ


 

 麗華も這いながら近づいてくる。


 二人が必死にこちらに向かってくる。


 

 俺はそれに応えないといけない。


 

 そう思っているのに、体が勝手に後ろに下がってしまう。


 

 二人の異常さに恐れているのだ。


 

『あぅ~。……にげないでよぅ……おにぃちゃん!』


『ふふっ!……あと……少し…です。』


 ドスッ


 背中に固い壁の感触が。


 

 ガシッ


 

『あっ!』


 

 二人に服を掴まれる。


『ふふっ!つかまえた。』

 二人に抱き着かれる。


 

 ペロッ


 

 両脇から耳を舐められ、ふぅ~と熱い息を吹き掛けられる

 いろんな意味で震える。


 

 そして、二人は同じ言葉を悠治の耳元で囁いた。


 

『『一緒に死んで?』』


 俺の目に

 振り上げられたナイフが映る。


 

『お兄ちゃん』『悠治さん』


 


 


『『愛しています』』


 

 ドスッ


 その言葉とともに、悠治の心臓に二つのナイフが突き刺さる。


 

 そして、悠治の瞳は光を失った。


 

 二人は事切れた悠治を、愛おしげに撫で、お互いを睨む。


 

『お兄ちゃんは私のものだよ?』


 

『私のものです!』


 そして、二人は悠治の胸からナイフを抜き取り、自分の胸に当てる。


 

 あの世でも、一緒がいいなぁ


 

 そして、

 二人の心臓がナイフによって切り裂かれた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ