『二話 その男、頭領』
タカマガハラ――会議室
円になったテーブルに何人か人がいる、ツバの長い帽子を被った男やいかにもなチャイナ衣装を着た男、きらびやかな装飾を付けた老人が茶を飲んでいた。
「皆さん、今日は集まって頂きありがとうございます」
そこに意が現れそう言う。
「………遅いぞ、我々には時間がない」
帽子の男は意を睨む、そこに老人が。
「ホッホッホッ、そう怒るでない『シック』よ」
老人はボロボロの歯を見せつけて笑う。
「そうネ。妖怪の被害はこの国が多い、忙しいアルヨ」
胡散臭い喋り方はチャイナ衣装の男だ。
「まぁいい……話を始める。我々の国に出現した『巨人』の力を持つ者だ」
その発言に周りがざわめく。
「巨人とは、なにアルカ?」
「これは考察だが……この国に現れた妖怪と同じように神に敵対する者と考えている」
「ふむ……巨人か……まだ大きな動きを見せてない限りなんともいえんのぅ……」
老人は髭を撫でながら呟く。
「数年前のキョンシー大発生もあったから油断は出来ないネ」
「しかしここの支部長はどうなっている」
シックは意に言う。
「申し訳ありません……いまだに連絡がつかず……」
「まぁ海外支部もそれなりに頑張るわい、気を張ってはいかん」
「むぅ……そうアルネ」
「では会議はこれで……」
そういうと皆ぞろぞろと部屋を出る。
意は誰もいなくなった会議室にいた。
「はぁ……やれやれ、うちのお偉いさんは何をしてるのやら」
そう言うと会議室から出ていった。
「ん………重い」
光は体にかかる重さで目が覚めた。目を開いてみるとそこには森がいた。
「んにゃ……健ーうへへへ……」
なんとも幸せそうな顔である、しかし起こす訳にはいかない、どうするか。
「ね、ねぇ……起きてよ」
取り合えず揺すってみた、が反応は無し。
はぁ、とため息を吐いた時だ。
「むぐっ……!?」
何かに口を抑えられた、それは何なのかすぐに分かった。森の唇であった、そうキスしてしまったのだ。
「んー!んー!」
一体どんな夢を見ているのか、なかなか離れない。そこに………
「おーい、任務が入ったんだが……」
健が入ってきた、健は二人を見ると静かに部屋を出る。
「んぐっ!ま、待って!」
なんとか引き剥がし呼び止める光、健はドアのほうを向いたままこちらを見ない。
「いやー邪魔したな、すまんかったわ」
と言うと部屋を出る。
なんてことだ、とんでもない誤解が生まれてしまった。
「んあっ、なに?」
どうやら目が覚めたようだ、私を見るとすぐに離れ。
「ご、ごめん!何かしなかった?」
したよ、思いきり。しかし口には出さず何もしなかったと言っておく。
「よかったー」
「あ、あのさ」
私は寝言が気になっていたので聞いてみた。
「健のこと、好きなの?」
「………っ~~~~!?」
声にならない声をあげ、顔を真っ赤にする。
「ななななんでわかったの!」
あ、好きなんだ。
「い、いや寝言で」
「ね、寝言!?そんなこと言ってた!?」
うわあああ、と森は頭を抱える。
「だ、大丈夫。言わないから」
「ほんと?」
涙目で顔を上げる
「うん、言わない。さ、行こ、朝食まだでしょ?」
「う、うん……」
私と森は部屋を出る、廊下を歩き、人が賑わうホームに着くと。
「お、やっとか。ああ、何も俺は見てないからな」
健が話し掛けてきた。
「やっぱり何かあったの!?」
森が私に詰め寄る。
「な、何もないよ!」
そんな様子を健はニヤニヤと眺めていた。
「さ、飯でも食うか!」
と健は言う、私はこの状況を変えたいので賛同し、着いていく。
「タカマガハラに食堂はあるがよく分からねーもんばっかなんだよな、だから外の物が断然いい」
「だねー、何が入っているのか表記されてないし」
と森、流石にそれは怖い。
「てなわけでここだ」
着いたのはよくあるファーストフード店。
「ん、何にする?」
「私チーズ」
「あ、私も」
「じゃあ全員チーズな」
暫くし、注文した品を受け取った三人は店内で食べていた。
ヴーヴーと健の携帯がバイブする、健は携帯を取り出し画面を確認すると真剣な表情になった。
「任務だ、どうやらこの近くらしい」
「分かった、行こう」
「そうだ、これ」
と健は妖力レーダーを渡す。
「まだ持ってなかっただろ?一応俺らのことも登録しておいた」
レーダーには青い丸が二つ写っている、これが今目の前にいる二人ということか。
「ありがとう、行こう!」
三人は店を出ると、妖怪が出たという場所へ向かった、そこは民家が並ぶ住宅街であった。そこに一人、誰かがいた、それは今の時代には珍しく着物を羽織っており、昔を感じさせる人物であった。そして周りには倒れているタカマガハラの人たち。
「お前が妖怪か……」
健が呼び掛けるとその人物はゆっくりと振り返る。
「ええ、そうです。私が妖怪です」
ゆっくりと、正確に彼は答えた。
「だったら問答無用!神力解放!「タケミナカタ」!」
手から放たれた蔓が男を襲う、しかし一瞬にして姿が消え
「なに!?」
次には健の懐に現れ、健を蹴っていた。
「健!神力解放!「モリヤ」!」
鉄の輪が男が捕らえるが。
「効かん」
ボロッ
土色に変色し、ボロボロと崩れていく。
「そ、そんな……」
ガタガタと震え、森は後退りする。
「甘いぞ童、そのような力では私に敵うわけもない」
「っ!神力解放!」
「遅い」
私はなんとか援護しようとしたがいつの間にか男は私の目の前にいた。
そして衝撃、段々と薄れていく意識のなか、私は彼を睨み続けた。
「……弱い、これでは簡単にこの世界を妖怪のものに出来てしまうではないか……」
世界を……妖怪のものに………?私は彼の言葉を聞き、気を失った。
男はそのあとその場に佇んでいた、そこに。
「頭領ー!こんなところにいましたか!」
と、猫の耳を着けた少女が走ってくる。
「ん、おお『猫太』か、どうだそっちは」
「絶好調ですよ!上手いこと奴らの気を反らせました!」
「うむ、よかった。あいつら……吸血鬼共は厄介すぎる」
「ですよね!突然海の外から来たと思えば威張り散らして!」
「ああ、しかも最近では人間と共存を考える吸血鬼もいると聞いた、そんなことをすれば私の計画は難しくなる」
と彼は猫太の喉を撫でる。
「はぅ~、頭領ぉ~」
と猫太は甘えた声を出す。
「………よし、戻るか、そろそろタカマガハラの奴らも来るだろ」
そういうと二人の姿は消えた。
久しぶりの更新です、最近ポケモンばっかで更新出来てません、情けないです。