第二話、結婚と諦め。
意識が朦朧とする中、私は彼に支えられて、彼の家まで辿り着くことになる。
彼はどうやら、私のカバンの中を勝手に漁るのは失礼だと思ったらしく、私を自分の家まで運んでくれた。
そして、その後、もちろん彼は―――――。
私を襲うことなく、部屋に一つしかないベッドに寝かしてくれた。
なんと言っても、彼は優しいのである。。。
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彼との出逢いは本当に必然的で、私達の母が友人関係であったため、私達二人も友人関係というか、幼馴染という関係になった。
そこから徐々に男と女という一対の関係に興味を持つことになり、そして高校三年の夏に私達は付き合うことになる。
それから、十年が経った今、私達の脳裏には“結婚”という二文字がこびり付いている。
だが、それと同時に、私の頭の中には“諦め”という二文字が浮かんでいた―――。
それは、私が病気だから・・・。
二度と治ることのない病気だから・・・。
将来的にはいつか治るようになる病気なのかもしれない。
けれど、今の技術じゃあ、絶対に治るなんてことは―――――。
そんなことは医者であるから、よくわかっている。
だから、せめて私が死ぬまで、彼には私の傍にいて欲しい。
それが、今の私の切なる願いだ―――――。
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彼のベッドの上で目覚めた私は、彼の布団からほのかに香る匂いに酔いしれようと、布団を鼻の方に手繰り寄せる。
しかし、私の彼は、そんな余裕を私に与えてくれなかった。
彼「おっ!起きたか!!」 そう言って、私に水の入ったコップを手渡す。
『チクショウ!このケチンボ!!』
私はコップを受け取りながら、そんなことを心の中で叫んだ。
でも、ちゃんとわかっている。
見た目こそチャラい彼の心が、私が思うこの世の中で一番優しいものだってことは。
だけどね、 それを知っていることができるのも、あと少しだけなんだよ?
あなたは気付いていないかもしれないし、勘が良いあなたは気が付いているかもしれない、“私の身体がボロボロだということ”―――――。
でもね、 時々思うんだ。
『私って、本当に幸せ者なんだ』って―――――。
だって、そうでしょ? 大好きな人が、こんなに近くにいてくれるんだよ?
だから、なんだか死を迎えるのも温かく感じるよ。
『それって、とっても幸せなことでしょう?』
今日も私は、そう呟くのだ―――――。