1ー7「私は…間違ってたでしょうか」
今日、研究所に変わった客がやってくる。
朝日を感じながら、
穢れのない笑顔が玄関に立ってた。
(オーフル)「可愛らしいお嬢さんだ」
(ヘイジー)「ありがとうございます」
(オーフル)「歓迎するよ、ようこそノヴァ研究所へ」
オーフルとヘイジーは抱き合う。
(ヘイジー)「歓迎の挨拶、
ありがとうございます。オーフル様」
(オーフル)「何も無い所だが、ゆっくりしていくといい」
オーフルはヘイジーを離す。
(ヘイジー)「はい、そうさせてもらいます」
にこっと微笑む。
(オーフル)「エンプティーっ!」
叫び声をあげる。
(エンプティ)「そんなに大きな声出さなくても分かるよ…ったく」
俺は階段を下りて出迎える。
(オーフル)「君の話は聞いてるよ、とても素敵な女性だって話だ」
(ヘイジー)「そんな持ち上げられても困りますよ」謙遜で手を振る。
(オーフル)「私にとってはエンプティは可愛い息子のような存在だ…これからも仲良くしてくれると嬉しい」
(ヘイジー)「はい、そうさせて貰いますね」
(エンプティ)「何だか照れ臭いな」
俺は2人の元へ近づく。
(オーフル)「おはよう、エンプティ」
(エンプティ)「おはよう、オーフル」
俺たちは抱き合う。
(ヘイジー)「私ともしましょう?」
ヘイジーが両手を広げて待ってる。
(エンプティ)「今行くよ」
オーフルの抱擁を外して、
ヘイジーに抱き着く。
(ヘイジー)「合体です」
(エンプティ)「合体してるな」
ひな鳥が枝の上で身を寄せ合うように、
俺たちは抱き合う。
(オーフル)「それじゃ、案内してやってくれ」
(エンプティ)「ヘイジー、来てくれ」
手で招く。
(ヘイジー)「はい、それでは」
あひるの親子のように俺の後ろをついてくる。そうして俺はヘイジーを案内する。
2階に行くと、クルークハイトが研究してる。
(クルークハイト)「見かけない人だ」
陰鬱そうな雰囲気が出迎える。
(ヘイジー)「どうも…えっと初めまして…ですよね?」
(クルークハイト)「あぁ、そうだ。自分はクルークハイト、どうせ明日には忘れるさ。自分の名前なんてのはね」
卑屈に笑う。
(ヘイジー)「そんなことありませんよ、クルークハイト様ですね、ちゃんと覚えました」
(クルークハイト)「まぶしい笑みだな…嫌になるくらいに」
そう言って姿を隠す。
(エンプティ)「照れ臭いだけさ、君を嫌ってるわけじゃない」
俺はそう説明する。
(ヘイジー)「だと、いいのですが」
(エンプティ)「3階に行こう、そこには俺の部屋がある」
(ヘイジー)「楽しみです」
螺旋階段を上って、
3階へと向かっていく。
(エンプティ)「あまり、人は招かないんだ。外部じゃ、君が初めてだ」
扉の前でそんなことを伝える。
(ヘイジー)「私が…初めて」
初めてという言葉が嬉しいようで、
何度も口の中で繰り返していた。
(エンプティ)「大した部屋じゃないんだが、驚かないでほしい」
(ヘイジー)「大丈夫です、汚い部屋でも笑ったり、嫌ったりしませんから」
(エンプティ)「君を信じるよ」
俺は扉を開けて彼女を招待する。
日の光が部屋全体に入り、
一瞬だけまぶしくて目が開けれない。
でも、すぐに慣れて部屋の全体が見える。
部屋の雰囲気を一言で言うならば、
空虚。
それがエンプティの部屋だった。
埃は積もっておらず汚れてはない。
しかし…だ。
家具らしい家具は一切なく、
無機質な部屋。
引っ越したばかりの住居のような、
人間味の薄い場所だった。
(ヘイジー)「これは…」
ヘイジーも戸惑っていた。
(エンプティ)「これが俺なんだ、ヘイジー。趣味もなく、研究者として生きる人生。俺は空っぽで中身のない人間だ、だからこそ、部屋に…そういうのが表れる。
つまらない人間だろう?」
俺は自分を卑下する。
本当ならばそれは嫌がる人が多い。
でも彼女は肯定的な言葉を投げてくれる。
(ヘイジー)「私は貴方がつまらない人間だとは思わない」
(エンプティ)「ヘイジー…」
(ヘイジー)「つまらない人間は中身の無い人間が揶揄される言葉じゃないはずなんです。多分、本当につまらない人間は人に対してつまらないって言う人間です。ゲームに言うみたいに、相手を物扱いする人間が…きっと本当につまらない人間だと私は思います」
(エンプティ)「そうか…」
中身が無いと思ってる俺にとっては、
救いある言葉だと思えた。
(ヘイジー)「それに、中身が無くても私が居るじゃないですか。きっと私を受け入れてくれるために、中身が空いていたんです。中身が無いんじゃなくて、バスの優先席みたいにきっと開けててくれたんです」
(エンプティ)「そうかもしれない」
欲しい言葉をくれる人間がそばにいるってのは心が安らぐのだと実感する。
冷めきった心に結露が出来た気がする。
(ヘイジー)「それで、何をしましょうか?膝枕?手料理?掃除?何でもしますよ。言ってくれれば粉骨砕身の精神で頑張ります」
ヘイジーは腕をまくって見せる。
筋肉がある訳ではないが、
何だか頼もしさを感じた。
(エンプティ)「そう…だな…一緒にやろうって思ってたことがあったんだ」
(ヘイジー)「それは楽しみです」
ヘイジーは両手を合わせて笑顔になる。
(エンプティ)「実は…」
俺はヘイジーの手を握って、
ある場所へと連れて行く。
それは2階にある研究室だった。
(ヘイジー)「これを入れればいいんですね」
フラスコに入った赤色の謎の液体と青い液体を混ぜる。そうして紫色の液体が誕生する。
(クルークハイト)「なぁ、エンプティ…」近くで実験していた彼が尋ねてくる。
(エンプティ)「そうだ」
(ヘイジー)「次は何しましょう?」
(エンプティ)「これを機械に入れてくれ」試験瓶を数種類渡す。
(ヘイジー)「分かりました」
試験瓶を機械に入れてふたをする。
(クルークハイト)「おい、待て」
(エンプティ)「なんだよ、クルークハイト」
俺は彼に肩を掴まれる。
(クルークハイト)「自分はてっきりデートで誘ったものだと思ったんだが、これはなんだ?」
(エンプティ)「何って、デートだが?」
俺は至極当然とばかりに首を傾げる。
(クルークハイト)「どうみても助手だろう、仕事の手伝いをさせてるようにしか見えないんだが」
(エンプティ)「デートって、何かを一緒にするってことじゃないのか?」
(クルークハイト)「何かってのは何でもいいって訳じゃないぞ。例えばだな、映画に連れて行くとか、服のショッピングとか、そういう定番ってのをやるべきだろう。」
クルークハイトに説教される。
(エンプティ)「そうだったのか、すまない。てっきり、これがデートかと」
俺は少し反省する。
(ヘイジー)「いえ、私はこれでいいんです」
彼女は慌てて否定する。
(クルークハイト)「おいおい、マジか?」
クルークハイトは信じられないって顔をしてる。幽霊が学説で証明できたって聞かせられた時みたいに。
(ヘイジー)「私の意思が無い訳じゃないんです、でも私を追い求めすぎて他人が不幸なると分かってるのにそうするのは、
私には出来ないんだけなんです」
(クルークハイト)「あぁ、なるほど、そういう子か」
彼の中で納得した様子だった。
(エンプティ)「彼女がそう言ってくれるから問題は無いな」
俺はそう思って研究を続けようとする。
だけどクルークハイトに肩を掴まれる。
(クルークハイト)「ちょっと、ごめんな。こいつ借りるから」
(ヘイジー)「えっと、分かりました」
右手を振って俺を見送る。
そして少し離れた場所で、
陰口を話す。
(クルークハイト)「ったく、馬鹿だぜ」
(エンプティ)「いきなりなんだよ」
(クルークハイト)「いいか、ああも優しい子ってのは稀だ、日本でヘラクレスオオカブトが見つかったってニュースになるぐらいな」
(エンプティ)「はぁ」
何故その例えを今聞かされるのか、
俺には理解できなかった。
(クルークハイト)「分かるか、あの子を大事にしろってことだ。あの子を手放したら断言してもいいが、お前は一生孤独死だ。それが嫌なら大事にしろ、いいな?」
俺の眼前に詰め寄って、
彼の吐息が間近に感じる。
あまりいい気分ではない。
(エンプティ)「分かってるよ、手放す気は無い」
半ばムキになって言い返す。
というか、それ以外に言えないと思う。
大事にしないなんてのは口が裂けても言えない、言ったら最後だ。
何かが壊れる。
(クルークハイト)「今日は何処かに連れてってやれ、研究を手伝わせるのは構わないが初めてでそれってのは寂しいだろう」
彼の吐息が遠のく。
(エンプティ)「俺は別にいいと思うが」
(クルークハイト)「ダメだ」
(エンプティ)「分かったよ」
(クルークハイト)「ちょっと待ってろ」
クルークハイトは机を漁る。
そして何かを見つける。
(エンプティ)「それは?」
(クルークハイト)「クーポンだ、行く理由になるだろう」
チラシだった。
街でイベントがやってるらしく、
景品が貰えるのだとか。
(エンプティ)「そこまで言うなら、誘えばいいんだろ」
(クルークハイト)「あぁ、誘え」
(エンプティ)「ったく…」
お節介だとは思うが、
まぁ、大事なことなんだろうと思う。
だからヘイジーと出かけることにした。
(クルークハイト)「ヘイジーさん、ほら返すよ」
クルークハイトは俺の背中を押して、
ヘイジーの前に押しやる。
(エンプティ)「っと…」
いきなり前に出て何を喋ろうか迷う。
(ヘイジー)「…」
ニコニコとして俺の言葉を待ってる。
(エンプティ)「あー…なんだ…街に出かけようか」
俺は頭をぽりぽりと掻いて、
デートの誘いをする。
俺はなんだかまるで絵画みたいに、
枠にはまってるけれど美しいと思えた。
(ヘイジー)「はい、出かけましょう」
ニコニコ笑う姿は、
誘って良かったと思えるものだった。
アウトレットモールに向かう。
飲食店や、服屋とかいろんな店が入ってる。
人が賑わってて、多くの家族連れが目立つ。
2階までで、エレベーターが無いのが若干の不便さがあるが、まぁ、こんなものだろう。
(エンプティ)「歩こうか、良い店があるかもしれない」
(ヘイジー)「はい」
彼女は俺の隣に並ぶ。
愛らしい顔が俺の方を見上げる。
(エンプティ)「何処か見たいものあるか?」
(ヘイジー)「そうですね」
指を顎に当てて考え込む仕草をする。
(エンプティ)「服とか欲しいか?」
服屋さんのガラスウィンドウに目を向ける。
そして、マネキンが着てるワンピースを指さす。
(ヘイジー)「どうですかね」
あまりいい返事ではない。
言葉が跳ねずに、重さだけが残った感覚。
(エンプティ)「服とかは好きじゃないか」
(ヘイジー)「他人が着てほしいと望むのならば、着ることに意味はあると思いますが、私自身が可愛くなるためならば必要はないって思いますね」
(エンプティ)「勝手なイメージだが、女性は皆が皆、服が好きだと思ってた」
俺は意外に感じる。
(ヘイジー)「別に嫌いなわけではないですよ、プレゼントされたら嬉しいですし。でも…それよりも大事なものがあるから今の私には必要ないかなって思うんです」
(エンプティ)「夢でもあるのか?」
(ヘイジー)「はい、他人にとっては些細ですが私にとっては大きな夢が」
(エンプティ)「その夢を聞かせてほしい」
(ヘイジー)「笑いませんか?」
俺のことを様子見しながら訪ねる。
(エンプティ)「笑わないよ」
(ヘイジー)「えっと、子供食堂…です」
彼女は言葉を切り出す。
(エンプティ)「子供食堂?」
(ヘイジー)「将来の夢は子供食堂を開くことです。廃棄する予定の食材を集めて料理して、大人は別に一人分の料金だけでも構わないけど、
もし金銭的に余裕があるのならば2人分出してもらうんです。
そうしたら顔の知らない子供の食費が1つ浮きます。
子供には手紙を書いて貰って、感謝の言葉をボードに張ってもらいます。
それを見た大人が感激して、奢って、子供たちがご飯を食べて…そういうサイクルが出来ることを私は望んでるんです」
(エンプティ)「いい夢じゃないか」
(ヘイジー)「笑いませんか?」
ヘイジーの中で不安があるようで、
何度も訪ねてくる。
(エンプティ)「何が引っ掛かる?」
(ヘイジー)「私は…自分の中で優しい…いえ…正しいって思うことをしたいんです。
でも…そのことを嫌がる人もいるから」
(エンプティ)「あぁ…なるほど」
善を揶揄う人は一定数存在する。
まるでそれが可笑しいことであるかのように。それは恐らくではあるが、自分には出来ないから他人を嘲ることで仲間を増やそうとしてるのかもしれない。お前には善行は出来ない、俺とお前は同じだろって。
俺にはそんな風に心の声が聞こえる。
(ヘイジー)「だから、もしかしてエンプティ様も同じ…かなって」
(エンプティ)「ヘイジー」
(ヘイジー)「っ…!」
俺が彼女の名前を呼ぶと、
身体をびくっと震わせる。
それは殴られるのではと思って目をつぶるみたいに。
(エンプティ)「君の夢は誰かに笑われるべきものじゃない。もしも、笑われることがあっても、俺は君の夢を否定しない。それに、もしもそれが現実になったのならば、きっと子供たちが感謝してくれるはずだ。
それはとても正しいことじゃないか、ヘイジー?」
(ヘイジー)「そう…かもしれません」
俺の言葉が染みたかどうかは分からない。
でも、今はバンソウコウ程度の言葉でいい。
彼女の不安を拭えたのならば、それで。
(エンプティ)「そういえばチラシを貰ったんだ」
(ヘイジー)「スイーツ100選?」
(エンプティ)「何かのフェアだろう」
スイーツ各種が10%OFFと書いてある。
これを機に買ってほしいということだろう。
(ヘイジー)「気になりますね」
(エンプティ)「行ってみるか?」
(ヘイジー)「はい!」
俺たちは店に向かう。
菓子特有の甘い香りを漂わせて、
何だか人を幸せな気分にさせる。
ハズだった。
でも、何だか様子がおかしい。
(エンプティ)「ん…?」
何だか騒がしいな。
周辺の人がざわめき始めてる。
(ヘイジー)「何があったんでしょう」
ヘイジーも不安を感じてるようだった。
(エンプティ)「少し気になるな、行ってみよう」
(ヘイジー)「分かりました」
俺たちはその現場へと足を向かわせる。
店の中で喧嘩をしてるようだった。
それは、些細な理由だった。
でも、理由こそ些細だが問題は大きくなっていた。
(客A)「てめぇがぶつかったんだろ」
(客B)「お前の方が先だろうが!」
荒っぽい雰囲気の男たちが胸倉を掴みあって、今にも喧嘩しそうな雰囲気だった。
会話の内容から察するに、
どっちが先にぶつかったのかという、
本当に些細なものだった。
これでも人に怒れるのだから、
俺との感覚が全然違う。
(エンプティ)「大したことじゃない、俺たちは関らずに…ってヘイジー?」
いつの間にか彼女が居なかった。
すると、すでに喧嘩の間に入ってることに気付く。周囲の人たちも驚いていた。
荒っぽい男たちの間に可愛らしいメイドの女性が入っていったのだから。
(客A)「誰だよ、てめぇ」
(ヘイジー)「あの!」
ヘイジーは大きな声を出す。
(客B)「てめぇには関係ないだろ?」
(ヘイジー)「喧嘩するなら私を先に殴ってください、不満があるんでしょう?
なら、その思いをぶつけてください」
ヘイジーの言ってることはぶっ飛んでいた。
男たちに殴れと言ってるのだ。
(客A)「馬鹿か、てめぇは…」
通行人も戸惑ってるのが分かる。
喧嘩を止めろと言われるだろうと想定していたに違いない。でも、出てきた言葉は殴れだ。
(ヘイジー)「私は自分のやってることが馬鹿だと思いません、だってあなた達は自分のやってることが間違ってないって思うから、怒り、相手に理解してほしいと思うから怒鳴ってるんでしょう?」
(客B)「そうだよ、こいつがぶつかってきたから舐められたままで居られるかって思って怒ってるんだ」
(客A)「はぁ?てめぇが俺を舐めてるんだろうが」
話は互いに自分が正しいと主張するばかりで、一向に解決に向かおうとはしない。
(ヘイジー)「私にはどちらが正しいとは言えません、ですが喧嘩両成敗という言葉があります。なので、2人で私の顔を1回ずつ殴ってください。そうすれば、不満が解消されるでしょう?」
(客A)「人を殴ったからって解決する問題じゃねぇんだよ!」
彼は怒声をヘイジーに浴びせる。
(ヘイジー)「ですが、目の前に居る貴方は彼を殴ろうとしたのでしょう?」
(客A)「それは…」
通行人は言葉に詰まる。
(ヘイジー)「貴方たちの怒りがくだらないと思いません、だって本人にとってはとても大切なことだから怒ってるんでしょう?
そのことを周りが判断してはいけないことです。他者の気持ちを理解するってのはそういうことです。なので、殴ってください。そうすれば私は貴方たちを理解できる気がするのです」
ヘイジーは両手を広げて、目をつぶる。
殴ってくださいと言わんばかりのポーズだ。
(客A)「くそっ、気味悪い女だ」
(客B)「面倒くさくなってきたな…」
男たちは互いに背を向けて、歩き出すのだった。一応、この喧嘩は収まった…ということなのだろう。
(ヘイジー)「ふぅ…」
彼女がため息を吐くと、
周囲で見ていた観客は問題が終わったとばかりに、さーっと去っていった。
(エンプティ)「ヘイジー、ああいう危ない真似はやめるんだ」
俺は不満を口にする。
(ヘイジー)「私は…間違ってたでしょうか」
(エンプティ)「どういことだ?」
(ヘイジー)「目の前で喧嘩が起きてるのを止めなくてはと必死だったんです、私は考えた。そこで出した答えは、相手を理解すれば…理解する姿勢を見せれば落ち着くんじゃないかって…でも…これが良い結果になったのか分からくなって」
(エンプティ)「お前は何も悪くないさ、ヘイジー」
(ヘイジー)「エンプティ様…」
彼女の仲裁方法が正しいかどうかは分からないが、今はただ抱きしめておこう。
悪くないと伝えるのが大事だと思って。
人に対する正しさなんてのは、
分かる人の方が少ないんだ。
でも、理解してくれる人がそばにいるって伝えるだけでも違うと思って抱きしめたのだ。
それが俺の思う正しさだ。
(エンプティ)「そろそろ帰ろうか」
(ヘイジー)「はい」
菓子を買って店の外を出るのだった。
せっかく買ったので試食する。
中身はドーナツで、中身が無い俺にぴったりな気がした。口に運んでみると、
甘いはずの菓子が、少しだけ苦い気がした。
(エンプティ)「分からねぇなぁ」
人の気持ちの難しさに俺は戸惑うばかりだ。




