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他人の体液が体をめぐる人間の話

精神障碍者の生活

 周囲にごみの積もった万年床で目を覚ます。布団の裏側の一部にはカビが生えて丸くコロニーを形成しているような不潔な敷布団だ。

 私は目が覚めると台所へ行きそこにおいてあるカッターナイフの替え刃のケースに手を伸ばし中身から一枚取り出す。

 そしてアルコールを含ませたティッシュで刃を拭う、防錆の茶色の油が拭い取られティッシュの白色を汚していく。

 拭い終わると私は左手に巻いてある黒く血液の染みついたリストバンドを外し赤黒いティッシュを幾重にも畳んだ傷口にあてがっていたものをはがす。

 一緒に瘡蓋もはがれメリメリとはがれていくまるで血小板で制作されたFRPの様なそれを取り除くとシンクの上に左手を出し、血管や腱とは垂直に30回ほど切れ目を入れてていく。

 痛みは感じている。ただその痛みが他の人が感じている痛みと一緒なのかは私には判らない。

 五分ほど血を流し続けていると流血も止まり、シンクには柔らかいレバーのような半凝固したような血液が残される。

 テッィシュを数枚とり折り畳み渓谷のように凸凹した傷口にあてがいリストバンドで固定する。そしてシンクに溜まった半凝固した血液を流して冷蔵庫からパンと飲み物を取り出して布団へ入る食事を行う。

 この行動を朝、昼、夕、就寝前にルーティーンの様におこなっていると一か月もすると5分も歩けないほどの重度な貧血を起こしてしまい緊急搬送で輸血を受ける事となる。

 輸血量は大体1600ccから2000cc大体4,5人の血液の量、私の中に他人の血液が複数人分共存する不思議を輸血バッグを眺めながら思う。

 赤血球は寿命が120日なので月に一回4~5人分の血液を入れられている自分の身体には何人の存在が共存しているのか不思議な感覚になってくる。確実に自分の赤血球よりも他者の赤血球が多い状態で私という個人は本当に個人だと言えるのかと輸血バックから落ちる血液を見て考えてしまう。

 もちろん私も貴重な医療資源を無駄に浪費してしまっている自覚があるので心苦しいが、一回知ってしまった事は脳内からは消えず、精神的な捌け口としてそのような行動を選択してしまう……選択肢の少なければ少ない人間は私は幸福であると思えてならない。

 こんな人間である私でも社会復帰し、一つの歯車とて生きてゆきたいとは思っているが中々に上手くいくことができない、歯の欠けた歯車が入ると機械は動きを止めてしまう。

 私が今できることは社会を止めないように一人家に引きこもる事だけだ……

 どうやれば欠けた欠片を治す事が出来るか考え行動しても一般人とは違うストレスのはけ口を見つけてしまい深く深くへ沈み込んでいく自分しか存在しない。

 外を目指せば目指すほどに遠くなる光、幸せなるもの達からの侮蔑の目、貴様らも私のように捌け口の選択肢を増やさせてやろうか!?

 腕を切り、薬物を大量服用したりを経験したらお前達はそれでも私の事を批判できるのか?

 私は欠けていないお前達が羨ましい!欠片を取り戻したい!複数人と共存している血液など不快でしかない!お前らに解るか?体の中に自分以外の体液の入っている不快感を!

本音です

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