第3話 新しい風
最近雪ひどすぎません??
………雪
何かの題材に使えないかな
部室の扉を開けると、いつもと変わらない温かな空気が広がっていた。
静かな時間が流れていて、先輩たちはそれぞれ本を読んだり、静かに考え事をしていた。
あの静けさの中で、私は本を読むことだけが楽しくて、ただそれを楽しんでいる自分が少し誇らしくもあった。
でも、最近はその誇らしさがどこかぎこちないものに感じられることが増えてきた。
「栞さん、今日はどうしたの?」
凪沙先輩が顔を上げて、私に微笑んだ。
「え?何か変わったことでも…」
「なんとなく、元気がないように見えるわよ。何かあったの?」
凪沙先輩は、優しく問いかける。
私が感じている不安や戸惑いを、先輩はちゃんと察してくれているみたいだ。
「うーん…実は、最近少し迷ってるんです。文芸部に入ってから、すごく楽しいんですけど、でも…最後の一冊を読んだら、どうなっちゃうんだろうって。」
私はその気持ちをそのまま言葉にしてみた。
凪沙先輩は少し黙ってから、ゆっくりと答えた。
「最後の一冊を読んだら…それがどうしたの?」
「それが終わったら、もうこの部室にいる意味がなくなるんじゃないかって、怖くなってきて。自分がこれ以上何もできなくなるんじゃないかって。」
私は胸の奥で感じている不安を、初めて言葉にした。
「なるほどね…でも、栞さん、部室にいる意味なんて、別に本を読むだけじゃなくて、たくさんあると思うわよ。」
凪沙先輩は、優しく私を見つめながら言った。
「本を読むことで、栞さんが得られるものはいっぱいあるけれど、それだけじゃないはず。だって、あなたはただ本を読むだけの人じゃないんだから。」
その言葉に、私はハッとした。
本を読むことが好きだと思っていたけれど、それだけでは終わらないはずだと、凪沙先輩は言いたいのだろう。
私はどうしても本を読むことに偏りすぎて、他の可能性を考える余裕がなかった。
「じゃあ、私はどうすればいいんですか?」
私は思わず声をあげてしまった。
まるで新しい世界に踏み出す勇気が欲しいような気がして、そう尋ねてみた。
凪沙先輩は優しく微笑んだ。
「今は、少しだけ視野を広げてみたらどうかしら。例えば、本を読んで感じたことをみんなと話したり、部室で他の人と何かを共有したりするのも一つの方法よ。」
その言葉に、私は少し考えた。
確かに、本を読んでいるとき、私はその世界に没頭してしまうから、あまり周りと話すことがなかった。
それを変えることができれば、もっと部室に意味を見いだせるかもしれない。
その日の部活後、私は思い切って西園寺先輩に声をかけてみた。
「西園寺先輩、最近読んだ本について、少しお話してもいいですか?」
西園寺先輩は少し驚いた顔をした後、すぐに微笑んで
「もちろん、栞さん。どうぞ」
と答えてくれた。
「最近、すごく面白い本を読んだんです。特にその中の登場人物の考え方が、すごく共感できて…」
私は、少し恥ずかしさを感じながらも、自分が感じたことを話し始めた。
西園寺先輩は静かに聞いてくれて、時々頷きながら応じてくれた。
そのやり取りの中で、私は少しずつ安心して話すことができ、いつの間にか心の中にあった不安が少し軽くなったように感じた。
話が終わると、西園寺先輩はにっこりと微笑んで、
「すごく良い話だね。栞さん、こんなに深く考えているなんて、驚いたよ。」と言ってくれた。
その言葉に、私は思わず顔が赤くなったけれど、心の中で少しだけ自信を持てたような気がした。
「ありがとうございます、先輩。色々話せて楽しかったです。」
その後、私たちは部室の他のメンバーとも話をした。
普段は静かな部室が、少しずつ賑やかになり、みんなが読んでいる本や最近感じたことを自由に話し始めた。
その時間は、私にとってとても新鮮で、気づけば何時間も経っていた。
部室を後にするとき、私は凪沙先輩が言っていた言葉が頭の中に浮かんだ。
「栞さん、部室にいる意味なんて、ただ本を読むことだけじゃなくて、たくさんあると思うわよ。」
その意味が、少しずつ分かってきたような気がした。
本を読むだけではなく、他の人と感じたことを共有したり、違う視点を得たりすることも、この部室の魅力の一つなのだろう。
これからは、本を読むことだけにとらわれず、もっと部室での時間を楽しみながら、自分なりに成長していけたらいいなと思った。
心の中で、少しずつ自信が湧いてきていた。
感想待ってまっす!((