第1話 退屈な日常
新作です()
一応全20話の予定……
たくさんの人に見てもれるといいなぁ…
何気ない日常に嫌気がさしていた。
教室の空気。
同じ顔ぶれのクラスメート。
毎日のように繰り返される授業。
毎朝同じ時間に目を覚まし、制服を着て、同じように学校に通う。
昼休みも、
放課後も、
何をしても特に面白いことがない。
そんな日々が、私の世界を静かに、
でも確実に、彩りを失わせていた。
その時、ふと思った。
「何か変わったことがあれば、少しでも日常が面白くなるんじゃないか?」
変化が欲しかった。
でも、何をどう変えればいいのか、まるでわからなかった。
ただただ、ぼんやりと『退屈だ』と思っているだけ。
それに気づいた私は、どうしても現実を変えたくなっていた。
そんな時、文芸部のポスターを目にした。
「本が好きな人、集まれ!」と書かれたポスター。
その言葉が、私の心にまるで触れたかのように響いた。
「本が好きな人」か。
それなら、私も当てはまる気がした。
本を読んで、物語の中に自分を沈める時間は、確かに退屈な日常から少しだけ逃れる方法だった。
もし文芸部に入ったら、何かが変わるかもしれない。
それがきっかけで、少しでも非日常を味わえるなら、私は迷わず飛び込むべきだと、直感で感じた。
そして、部室を訪れることを決めた。
「こんにちは。」
初めての部室のドアを開けると、ふわっとした本の匂いと共に、数人の部員がこちらを向いた。
私は少し緊張しながら、目の前の部員たちに軽く挨拶をする。
「いらっしゃい!1年生かな?私は3年の藤堂花麗っていうんだ。一応副部長やってるよ。」
すぐに明るい声で迎えてくれたのは、優しそうな女の先輩だった。
彼女は笑顔で手を振り、席を空けてくれる。
「本が好きなの?ここには色んな本があるから、きっと楽しめると思うよ!」
文芸部には、私と同じように本を読むのが好きな人たちが集まっているのだろう。
藤堂先輩のその言葉に、私は少し安心した。
「ありがとうございます。藤堂先輩」
私は笑顔で返し、部室に足を踏み入れる。
部屋の中には、棚に並べられたたくさんの本があり、どれも魅力的に見えた。
その一冊一冊に、これまでの私の退屈を少しでも消してくれるような力が宿っている気がした。
「じゃあ、栞さん座って。好きな本を見つけて、ゆっくり読んでね。」
私は部室の隅の椅子に座り、一番近くにあった本を手に取った。
本を開くと、まるで現実が遠のくような感覚に包まれた。
物語の中に入り込むと、私はその世界の一部になり、まるで別の場所で生きているかのようだった。
退屈な日常から抜け出す手段として、本を読むことは最も手軽であり、最も心地よい方法だった。
「どう? 本、読んでみて楽しい?」
声をかけてくれたのは、部長の睦美凪沙先輩だった。
彼女は穏やかな笑顔を浮かべて、私を見守っている。
凪沙先輩は、物静かな雰囲気を持ちながらも、何かしら深い洞察力を感じさせる人だった。
「はい、とても楽しいです。」
私は素直に答える。
その後、私はほぼ毎日、文芸部で本を読んだ。
部員たちは書いたり、話したりすることが多かったが、私はただ本を読んでいることが楽しくて仕方なかった。
先輩たちの作品を読み、話を聞き、少しずつ自分がその世界に溶け込んでいくのを感じた。
でも、少しずつ気づき始めたことがあった。
どんなに本を読んでも、
どんなに物語に没頭しても、
心のどこかで何かが足りないと感じるようになったのだ。
それは、無意識のうちに『もっと何かをしたい』という気持ちから来ているような気がした。
文芸部の本棚を見渡すと、残された本はあと一冊だけだった。
その本を読み終わったとき、文芸部にいる意味がなくなるのではないかと、なんとなく不安に感じていた。
私は、どうしてもその一冊を読みたくないという気持ちと、読み終わることで自分がどうなるのかを恐れる気持ちが入り混じっていた。
その一冊に対して、なぜか異常なほどの執着心を抱いていた。
それは、私が文芸部にいる意味を見つけるための最後のチャンスのような気がした。
もしかしたら、それを読めば、私は自分の居場所を見つけられるかもしれない。
でも、読んでしまうことで、すべてが終わってしまうような気もして、どうしても手を伸ばせなかった。
「栞さん、どうしたの?」
いつの間にか、藤堂先輩が私の隣に立っていた。
「あ、あの、本のことなんですけど…」
私はどうしてもその本に手を出せなかった理由を説明しきれず、口ごもった。
「その本、気になるんだね。」
藤堂先輩はにっこりと微笑んで言った。
「でもね、栞さん、本を読むのは楽しいけど、読むだけじゃ終わらないんだよ。本を読んで自分の心を動かして、そこで得たものをどう生かすかが大事なの。」
その言葉に、私はどこかホッとした。
無理にその本を読まなくてもいい。
私が読んだ本の数だけ、心の中に物語が広がっていることを忘れずにいればいいのだ。
私は少し肩の力を抜き、もう一度本棚を見つめた。
そして、ラスト1冊を手に取る日が来ることを、まだ少し楽しみにしながら。その日が来るまでは、今読んでいる本を心から楽しもうと思った。
それが、私にとっての新しい始まりだった。
感想ください((おい
↓内輪話
あっ文芸部の子って案くれた先輩まじでありがとうございました!!