8話
―――ポォン
MMPがメールを受信した。どうやら、2人とも来ていたようだ。
お互いに顔を見合わせながら、メール画面を開く。
―――やぁ。このメールを見てくれているということは能力を使ったかい?
ここで発表だ。
今、この能力を使うことができる人間は256人。
そして残念にもMMPを壊され、目覚めぬ生きる屍となってしまった人間はこの中の13名だ。
能力者はまだまだ増え続けるよ。
そろそろこの能力について疑問を持ち始めた頃だろうと思ってね。
そのことについて教えようと思うんだ。
私は最初に君たちに『進化して』欲しいと言ったのを覚えているかい?
私の目的はね、君たちに、この世界を未来へ導く存在になって欲しいと思っているんだ。
この腐った世界を正しい方向へ導いてくれる先導者にね。
君たちには自分たちが“特別”ということを認識してもらいたいんだ。
そのための能力なんだよ。
「ほっほう。コレハキョウミブカイ。」
「嘘つきなさい。棒読みになってるわよ。」
まぁ、今の君たちに言っても実感がないのはわかる。
でもそのうち分かるようになる日がくるよ。
私たちはこの世界をどうにかしたい。
そのために君たちに協力して欲しい。かわりにこの“能力”を私たちは提供しよう。
メールにはそう書かれていた。
「256人って結構いるんだな。・・・・生きる屍か・・・それって植物人間のことか・・・?」
そんなことも知らなかったのか。というような目線を投げかけてきながら琴音は答える。
「そうよ。最近ここら辺で話題になっている事件はMMPを壊された人間。」
「それにしても、あの事件。確か被害者13人だよな?全員ここら辺の人間じゃないか。」
「それが疑問なのよ。どうも能力者はここら辺にだけいるみたい。」
何故この町なのか。なんの特徴もないこの町に何故・・・。
「植物人間になってしまうのは本当みたいだな・・・できれば戦うべきなんかじゃないんだろうけど、そうもいかないんだろうな。実際にこんな力を手に入れてしまったら・・・・」
「まぁ、どうもこの能力使えるのあたし達みたいな若い人だし、使いたくなるのは必然でしょ。」
「確かにな・・・それにしてもMMPが壊れたら植物人間になっちゃうのか・・・・」
海璃は考えるようにして下を向いた。
「何?ビビっての?」
そんな琴音のからかうような言葉を耳に入らないかのように海璃は下を向いて何かを考えていた。
「・・・・・植物人間・・か・・・・・・・あ、そういえば。」
そう言って海璃は部屋についている時計を見上げる。
「もうこんな時間だ。そろそろ帰らないと親が心配するんじゃないのか?」
時計の針は8時をさしていて、外も暗くなっていた。
「あ。ほんとだ。そぅね。」
そこで、琴音はふと疑問に思ったことを口に出してみる。
「海璃の親は?この家、他に誰もいないようだけど・・・」
「なんだ?お茶でも出して欲しかったのか?」
「いや、違うけど・・・旅行でも行ってるわけ?結構家広いから・・・一人暮らしではないでしょ?」
二人は戦闘が終わったあと海璃の家に行き、この能力について調べていた。しかし、家には2人以外に気配はない。
「今は・・・出かけてるんだよ。」
「海璃だけおいて?」
「なんだっていいだろ。色々あんだよ。」
「・・・・そう。まぁいいや。じゃ、あたしはこれで帰らせてもらうわ。」
「送っていこうか?」
からかうようにして言う海璃に対して笑いながら琴音は言った。
「いらないって。そんくらいわかるでしょ。・・・そんなことよりアドレス教えて。」
そう言って自分のMMPを取り出す。
「MMPのアドレスか?携帯じゃなくて?」
「どっちでもいいけど・・・海璃はあんまり信用できないからねー。」
笑いながらそう言って琴音は自分のMMPを操作し始める。
「今日のアレ、まだ根に持ってるのかよ。」
「当たり前でしょ!ほら・・・MMP出して。」
海璃もMMPを操作し、琴音のMMPの真正面に持っていく。
「・・・・はい。これでOK。まぁ、なんかあったらメールして。・・・・それじゃ。」
そう言って琴音は玄関へ向かう。そして、靴を履いて玄関のドアを開けたとき、振り返って言った。
「あ・・・・それと、今日からパーティー組むんだから、ヨロシクね。海璃。」