2話
「おーっす」
「よぉ」
軽い朝の挨拶をしながら、学生たちが靴を履き替えて、校舎に入っていく。
「霧月ー。おっはよー!」
そう言って彼―――山崎大和は軽く背中をたたいてきた。
「ん?おぉ、おはよう、大和。」
何気ない朝の挨拶。だが、大和はこちらの変化に気がついたようだった。
「んん?どうした?なんかいい事でもあったのか?」
「あ。わかる?・・・まぁ後で話すよ。」
ハハハと笑いつつ、彼と一緒に教室へ入り自分の席に座る。大和も後ろの席に座り、こちらが話すを待つかのように、ジッとこっちを見てくる。
「そう、せかすなって。別に大したことじゃないんだけどさ。」
「普段からヘラヘラしてるお前が、いつになくニヤついてんだよ。大したことがあったんだろ?・・・・ほら。ニヤつくの堪えてるのバレてんぞ。」
「あ、バレてた?。」
ハハハと笑いつつ、もう我慢できないとばかりに制服のポケットに手をいれて、中にある物を掴み出して、大和の目の前に掲げた。
「ジャーン!ついに買ったぜ!MMP!ハッハッハ。」
「おぉ!やっと買ったか!これで一緒にDHができるな!もちろんDHはもうダウンロードしたんだろうな?」
そう言いながら彼もズボンのポケットからMMPを取り出した。
「あったりまえジャン!そのかわり曲はまだ一曲も入れてないけどね。」
DH。ドラゴンハンターは今、若者の間で大人気のゲームだ。大和はDHをかなりやり込んでいて、常に早くMMPを買えと言っていたのだった。
そして、昔とは違い、今は、音楽を聴くだけでなく、本格的なゲームやネットなどとMMPでなんでもできるようになっていた。つい最近まで、小型ゲーム機を使っていたので、DHのようなMMP専用のダウンロード型のゲームはできなかったが、それも昨日までだ。
「そうか。そうか。じゃあ、今日俺ん家来いよ。俺がDHの初心者講座を・・・」
―――キーンコーンカーンコーン
大和の言葉をさえぎるようにチャイムが鳴った。それと同時に他の席でしゃっべっていた生徒は自分の席に戻りだす。
そして、ガラッと教室のドアが開き教師が入ってきた。
「おーし。皆、席につけよー。よーし、じゃあHRをはじめるぞー。」
教室に入ってきたのは担任の教師で、体育の教師もしている高山、という教師だ。
「起立。礼―――」
そう言って委員長がいつものように号令をかけてHRがはじまった。
いつも通りに授業が終り、皆が帰り支度をし始めたとき、高山が教室に入ってきた。
「皆、ちょっと聞いてくれないか。」
いつになく高山は真剣な顔をしていた。
「。最近ここらで、よく事件が起こっているのは知っているな?」
そう、最近よくニュースになっている事件がある。つい昨日まで普通だった人間が突如、植物人間になってしまう。という事件だった。はじめの事件が起きてから、何度も同じことがおきるため、同一犯の犯行ではないかと思われている。どの人も、昼にフラッといなくなったと思えば、夜に公園や路上で倒れている所を発見されているため、拉致されてなんらかの薬を飲まされたのではないかと考えられているのだが、被害者のからだからは薬物の反応は全くでてなく、事件は謎につつまれたままだった。
「どうも、昼間に拉致されているらしく、その上被害者は皆、高校生だ。」
一番の問題はそこだった。犯人は高校生ばかりを狙っているのだ。いままでの事件はすべて高校生が被害にあっていた。
「だから皆も、帰りは一人では帰らないように。それじゃあ帰っていいぞ。」
その言葉を聞いて、皆が帰りだした。
「よし。俺らも帰ろうぜ。」
「おぅ。直接俺の家に来るか?」