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ダウンロード  作者: 深々
2/18

1話



「・・・・機械が苦手だから。なんて言い訳はもう通用しません。なぜなら、この新型音楽プレイヤーMyMusicPlayer。略してMMPには複雑な操作は全くいりません。そして、画面も立体映像ホログラムで再生されるため、お年寄りの方で、「字が小さくて見えない。」なんて思ってる方でも、見やすくて使いやすい!そして、そして、今回出たこの新色は・・・・・」


 街の高層ビルのスクリーンに映し出されているCM。それは最近、世の中の若者の間で広まっている、新型の音楽プレイヤー。MMP(My Music Player)。CMの通り、現代科学の最新の技術が使われており、今年になって世間で広まり始めた、立体映像の技術が使われている。高価な物かと思われがちだが、実際はそんなに高いものではく、一世代前のIpodと同じ程度の価格で販売されているため、学生の間で大人気だ。

 実際に立体映像の技術がフルに活用されているのは、このMMPくらいだろう。TVなどを立体映像にすると、確かにスペースをとらずにすむが、どのみち映像が出ている時のスペースは必要になるため、それほど魅力的ではない。それにくらべMMPは本体のサイズが3×5cmの片手に収まる大きさにもかかわらず、立体映像の大きさは15×10cmほどの大きさで、かなり見やすくなっている。そして何よりイヤホン、ヘッドフォンと本体の間にケーブルがなく無線だ。イヤホンのように小さいものはなくなり易いため、かなり安価で売られている。

 だから、学校での話題はMMPで持ちきりだった。そして、今自分の手の中には新型のMMPがある。新色で、青色がベースになっていてその上に白色で、まるで雲のような模様が入っているやつだった。

 貯めていた小遣いでそれを買い、明日、それを友達に自慢してやろうと思いつつ、ボーっと明日のことを考えていたら・・・


―――ドンッ


「きゃっ!」


 ボーっと歩いていたため、誰かと正面からぶつかってしまったようだ。声からして女の子だろうと思う。ぶつかった感覚からして、向こうもボーっと歩いていたのだろう。


「あっ、すいません。大丈夫ですか?」


 とりあえず、謝っておかなくてはいけないと思い、自分の前でしりもちをついてしまっている女の子に声をかける。


「あっ。い、いえ、こちらこそすいません。私も少し余所見をしていたもので・・・」


 そういって彼女は立ち上がってお尻をパンパンっと払いながらこちらに頭をさげてくる。静かそうな雰囲気で、いかにも押しが弱そうな感じだった。しかし、何より目立ったのはその前髪の長さだった。目を完全に隠すほどにまで長かった。そのせいで歳がわかりずらかったが、着ていた制服で高校生であることはわかった。


「ど、どうしたんでしょうか?私の顔に何かついてますか?」


 ジッと顔を見ていたので、不思議に思われてしまったようだった。とりあえず、何か言わねばと思い、


「あ。いえいえなんでもないんです。・・・き、綺麗な人だなと思って・・・・・あは、あははは。」


 曖昧に笑いながら、言って後悔する。初対面の人にいきなり綺麗はないだろうに、これじゃあナンパと勘違いされそうだ、しかも前髪で顔が見えなくて、綺麗かどうかなんてわからないのに。つい、「女性に対しては、とにかくお世辞。」と日頃から友人から言われていたため、ついこんな言葉が。


「き、綺麗だなんて・・・・ぇ、ぇと、えっと・・・・」


 そして彼女の方はなぜか言葉を本気にしてしまい顔を真っ赤にして俯いてしまった。褒められなれてないんあろうか。普段ならこんなことはしないんだが、こう咄嗟にだと言葉がうまく出てこなかった。


「す、すいませんいきなり。じ、自分はこれで・・・・ぇ、えと、さっきはぶつかってすいませんでした。」


 そう言って逃げるようにその場を去った。その後も彼女がその場で顔を真っ赤にしてボーっと立っていることも知らずに。


 

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