12話
―――ピピピピピピ
部屋に鳴り響く目覚まし時計の音。布団から手だけを出して目覚ましを止める。
「・・・ん・・もう朝か。」
しばらくしてからもそもそと起き上がる。
昨日遅くまで能力のことについて考えていたためあまり眠れていなかった。
あの後、海璃と琴音のLvは上がった。そして、海璃と琴音はそれぞれ新しい能力をダウンロードすることが可能となった。琴音はファイアボールとファイアォールのLvが2に上がり、新しい能力は範囲魔法だった。海璃が新しく覚えた能力は武器生成だった。
「ふ、ふぁぁああ~」
大きく欠伸をしてから部屋から出てリビングへ向かう。
「おはよう。」
返事がないと知りながらも挨拶をする。
冷蔵庫を開き、朝飯用においてあるヨーグルトを取り出す。
「ふぅ。・・・・眠いな・・・・」
食べ終えた後のヨーグルトのカップをゴミ箱に入れて、洗面所へと向かう。
「・・・隈・・・できてんな・・・」
鏡で自分の顔を見る。夜更かししたのが一目でわかる顔つきだった。
顔を洗い、葉を磨いたあと自分の部屋へと戻る。
制服に着替えてから鞄をとり部屋をでる。
「・・・おっと。忘れるとこだった。」
部屋の出口で止まり部屋の中へと戻る。
「・・・・・」
無言で机の上のMMPを見つめ、それを掴んでズボンのポケットへしまい込む。
そのまま玄関へと向かい、靴を履いて扉を開ける。
「・・・それじゃ、いってきます。」
誰もいない家に向かって言う。返ってくるのは静けさだけ。
フッと自嘲気味に笑いながら家を出て学校へ向かう。
「おーっす。霧月」
「おぅ。」
学校へ行く途中で大和と出会い、一緒に学校へと向かう。
「最近、DHやってる?」
「あ、ゴメン。ちょっと忙しくてやってないわ。」
「ふ~ん。まぁ確かになんか眠そうだしな。」
大和と会話をしながら教室へと向かう。
そして、海璃は自分の席についてすぐに机に突っ伏す。
「大和ぉ~。先生来たら起こしてくれぇ~。」
「おいおい。学校きてすぐにかよ。」
海璃を見て大和は笑いながら自分の席である海璃の後ろの席へと座る。
と、そんな時。
―――ポォン
突然MMPが鳴った。
「グゥ~。」
「おい霧月。携帯・・・じゃなくてMMP鳴ってるぞ。」
「・・・・グゥ~。」
「・・・・霧月。先生来たぞ。」
「はっ!・・・て、おい。まだじゃないか。」
騙されたことで大和を睨みながら海璃は言う。
すると大和は海璃のズボンのポケットを指して言う。
「MMPにメール着てたぞ。先生来る前に見といた方がいいんじゃないのか?」
「メール?・・・誰だよこんな時に・・・」
海璃のMMPのアドレスを知っているのは学校では大和の他にDH仲間だけだ。
学校に来ている今、MMPにメールなんてしないだろう。となると・・・
「琴音か・・・」
from:Kotone
to:KAIRI
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朝っぱらかゴメン
今からこっちの学校来て!
「やっぱりか・・・」
「・・・・・霧月。お前、いつの間に彼女なんか・・・」
「ちげぇよ。」
後ろからメールを覗き込んできた大和に笑って返す。
海璃の顔は中の中、良く言って中の上。成績はそれなりで運動神経もそれなりだ。身長は165cmよりちょっと大きいくらいで、高1男子にしては小さい。だからもちろんのことモテたりはしない。それゆえ大和は海璃に女らしき人からメールが来たことが不思議でならいないのだ。
「だって女だろ?お前が女とメールとか・・あれ?まさかその名前で男?」
「女だよ・・・・一応な。」
こんなことを本人の前で言ったら怒ることが容易に想像でき思わず笑みを浮かべながら
「ちなみに彼女じゃない。色々あって知り合っただけだよ。」
「ふ~ん。まぁお前が女と付き合うとは思えないけど・・・で、どこの高校なんよ?」
「えっとな・・・・ぁ?あいつどこの高校だよ。」
高校生って言うのは知っていたが、何処の高校とまでは聞いてない。
急いでメールを打つ。
from:KAIRI
to:Kotone
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お前何処の学校だよ
すると間髪入れずにメールが返ってくる。
from:Kotone
to:KAIRI
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親咲女子高校!
早く!
「へぇ~親咲か。お嬢様学校じゃねーかよ。お前いつの間に知り合ったんだよ。しかも『早く!』とか、おぅおぅ愛されてんねー」
「彼女じゃねーよ。仕方ない・・・寝るか。」
「ぇ?何言ってんの?行かないのか?」
「だって眠いし。」
「これ・・・かなりの急用なんじゃないのか?」
「・・・急用かもしれないな。だけど親咲まで行く気になんかならん。」
そう言って海璃は机にもう一度突っ伏し始める。
―――ポォン
from:Kotone
to:KAIRI
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早く来て!
ヤバイ!
「おい・・・『ヤバイ』とか言ってんぞ。」
海璃のMMPを勝手に操作して、メールを見た大和が言う。
「・・・だっる。なんでこんなことしなきゃなんねーんだよ。・・・はぁ~。後、任せたからなー」
そう言って立ち上がり、制服を羽織りなおして鞄をとって席を立つ。
メールからしてかなり急用そうだ。能力者関係の可能性もある。
「OK~任せろ。そのかわり、後で報告な~」
変に勘違いしてる大和を無視してそのまま教室を出て行く。