10話
「とにかく戦ってLvをあげるの!」
「俺は・・・戦いたくない・・・戦いなんて、したくないんだ。なんで人は戦わなければ―――」
「シャラップ!変にキャラかえてないで、ほらとっと行くよ!」
「・・・・ぁ。そうだ、今日こそはDHの続きやらなきゃだから家に帰―――」
「ふん!来なさい。」
「ブッ!」
思いっきり首にラリアットをくらいながら海璃はひきづられて行く。
連れて行かれた場所は人気のない公園だった。
「本当にここなのか?人の気配が全くないぞ。」
「MMPはここを指してるんだからそうなんじゃないの。」
しばらくして公園に2人組みの男がやって来た。
「あいつらが対戦相手か。なんかめっちゃ強そうじゃねーかよ。」
「いいからやるわよ!ふふふ。これで勝ったらLv4になれるんだからっ。」
今からちょうど20分ほど前、海璃と琴音は学校帰りに喫茶店で話をしていた。
実はあの後、家に帰ったら琴音からメールが来ていた。メールの内容は、「サイト見て。なんか更新されてる。」だった。
相変わらず女の子さが全くないメールだった。
“更新”なんて、ブログじゃないんだから。と言いたくなってしまうのだが、そのおかげで色々とハッキリとしたことがあった。
「だから、海璃がLvを一つあげるには一回でも勝てばいいわけじゃん?そんであたしは後Lv3以上を二人倒せばいいわけよ。」
頼んだアイスティーのストローを口に挟んだまま琴音は言う。
「そういうわけで、とっと対戦したいの。別に断る理由なんてないでしょ?」
更新された内容に“対戦版”というものがあり、対戦したいと思っている人がそこに書き込みをして、それをみた人が対戦を受けれるという至ってシンプルな構造のいわゆる掲示板だ。
「まてまて、最低でもLv3ってことは俺より遥かに強いだろ。そんなもんやってられるかよ。・・・・すいませーん。アイスティーもう一つお願いします。・・・・・・・というわけで、先に俺のLvを上げようぜ。」
近くを通ったウェイターさんに追加のアイスティーをお願いした後、琴音に向き直り言った。
「嫌。なんで足ひっぱられなきゃなんないのよ。」
「・・・よく考えても見ろ。Lv1とLv3がどうやったらLv3×2に勝てるんだよ。」
運ばれてきたアイスティーを飲みながら、嫌とハッキリ言う琴音に対して言い返す。
実際、ズブの素人がどうやったらLv3を二人も相手にできようか。仮にも琴音が一対一をしていたとして、自分に回ってくる敵が一体だとすると、Lv1VSLv3.無理な話だ。
「いいじゃない。魔法騎士なんだから大丈夫。それに向こうは戦士二人。余裕余裕。」
確かに戦士は魔法使いと相性が悪い。完全に近距離戦専門の戦士にくらべ魔法使いは遠距離かつ範囲攻撃ができる。そう考えると圧倒的にこちらの方が有利なのだが・・・問題は海璃自身にあった。
「よくねーよ。これ負けたら逆に経験値かポイントかしんねーけど、下がるんだぜ。俺はLv1だから下がんないけど、お前下がるけどいいのかよ?」
「・・・・・・・・・・・・」
琴音はポチポチと自分のMMPの画面を触っている。
「おい。聞いてんのか?」
「・・・・・・・・」
「おい。」
「よっしできた!」
いきなりMMPから顔こちらに向けてきた琴音に驚きながら疑問を口にする。
「何がだよ。」
「対戦場所が決まったわ。ここよ。」
そういって琴音はMMPに表示されている地図の光っている部分を指差す。
「ちょ。待て。さっきまでの話聞いてなかったのか?俺だと無理だって。」
「よっし。お会計は海璃に任せるから。いくよ!」
「おいっ」
最近の若者は人の話を聞かないことが多いらしい。
対戦相手は、B.BとTo-ru、という戦士二人組みだった。
「ふーん。お前らがKAIRIとKotoneか。まさかLv1で挑んでくるとはな笑わせるなぁ。」
ハハハハと大声を上げて、二人組みのデブな方が笑いだした。
「・・・・・お前がB.Bか?」
いつもより低い声で海璃は尋ねる。
「ハハハ・・・ぁ?そうだが?」
「なるほど・・・B.Bはブサイクとデブからとってるわけか。」
すると、見る見る男の顔が赤くなっていく。
「・・・て、てめぇ。Lv1のくせして言いやがるな。そんなに殺されたいのか・・・おい、トオル。やっちまおうぜ!!一人は足手まといだ、負けるわけねぇ!」
デブな男のほうは、もう一人のそこらへんの不良みたいな顔した、トオルというやつに言った。
「ちょっ何挑発してんの!?」
「気に入らないんだな、これが。まぁ余裕だろ。援助たのむぞ。」
そう言って海璃はポケットからイヤホンを取り出し両耳につける。