65. アルの半ズボンとレオンの剣
午後、一行はシエスタの冒険者ギルドからの連絡を受け、ギルドの建物を訪れた。
ギルド長自らが一行を出迎え、討伐証明書と、欺瞞者に懸けられていた賞金として、多額の金を手渡した。それらの賞金のほとんどは、〈欺瞞者〉に犠牲にされた者の家族や友人が懸けたものだった。
「混沌の地の特性上、また新たな〈欺瞞者〉が現れるでしょうが、ヤツが熟練するまでには時間がかかる。少なくとも、しばらくの間は危険が和らぐでしょう。」
ギルド長はレオン一行を労った。
他の魔獣と違い、〈欺瞞者〉は常に混沌の地の北部と南部に一体ずつしか存在せず、人間を相手にすることで徐々に熟練し、より脅威的に成長するタイプの魔獣だった。
幼い欺瞞者は、比較的手ごろな獲物である無法者を主に狙う傾向があり、そのため一般の人々にとっては、しばらくの間むしろ安全になることが多かった。
夕食を済ませ、それぞれの部屋に戻っていると、ユニスがレオンとアルの部屋を訪れた。部屋の前で、ユニスはアルに小さな包みを手渡した。
「これ。この前、欺瞞者を倒したときに、服がボロボロになったでしょ? エルフが織った布で作った下着よ。特別な処理がしてあって汚れないけど、着替えられるように、2枚入れておいたわ。」
「下着?」
アルは包みを受け取り、中身を確認した。クリーム色と淡い空色の下着が入っていた。
「それ、結構高いものなの。他の人にあげたりしないで、ちゃんとアルが履くのよ。」
ユニスは真剣な口調でそう念を押し、去っていった。
「おお、手触りがいいな。めっちゃ柔らかくて滑らかだ。一度履いてみるか。」
アルはすぐにローブを脱ぎ、下着に履き替えた。
「どう?」
クリーム色の下着を身につけたアルが、得意げにレオンに尋ねた。
レオンは無感情にアルの姿を一瞥した。
「どうって?」
「高級感あると思わない?」
「ふむ、生地は良さそうだな。」
「肌触りがすごくいいぞ。」
アルはあれこれポーズを取ったり、座ったり立ち上がったりして、感心した。
「めっちゃ快適だ。これ、生地が延び縮むみたいだな。」
「そうなのか?」
その言葉にようやく興味を示したレオンは、空色の下着を手に取って触ってみた。アルの言う通り、生地には伸縮性があり、上下左右どの方向に引っ張っても、柔らかく伸びた。
「悪いな、レオン。2枚あるから、一枚あげたいけど、ユニスが俺専用って言ってたから、仕方ないんだ。」
レオンは首を横に振った。
「いや、お前に贈られたものだ。当然お前が履くべきだろう。」
アルはローブを羽織った後、もう一枚の下着をじっと見つめ、ふとレオンに尋ねた。
「女性が下着を贈ることに、何か特別な意味ってある?」
「さあ、分からない。」
「今まで下着をもらったことは?」
「ないな。大抵は手紙と一緒に花やハンカチ、食べ物とかだったよ。」
「うーん。俺は女性に何かもらったのは、今回が初めてだ。
相手がユニスだから、やっぱり深い意味はないかも。自分のせいで俺の服がボロボロになったから、そのお詫びってことだろ?」
レオンからすると、ユニスの行動には何かしらの意図があるような気がした。
「まあ、気に入ったなら、良かったじゃないか。これからはちゃんとそれを履けよ。」
「おう、そうする。」
無邪気に答えるアルを見て、レオンは自分の勘を伝えるべきかどうか迷った。しばし考えた末、最悪の場合、アルの下着が破れて〈あの部分〉が露出するような大惨事を防ぐためにも、知らないふりをすることにした。
*** ***
数日後、グーレンの息子ロクスが、レオンの剣の追加修繕が完了したと、宿に知らせに来た。
ロクスに連れられ、グーレンの鍛冶屋を訪れたレオンは、店の入り口に大きく掲げられた垂れ幕を見て驚いた。そこには、『我、グーレンが鍛えた剣が〈欺瞞者〉を討ち取った!』と、大きく書かれていた。
レオンが垂れ幕をじっと見つめていると、ロクスが気恥ずかしそうに耳の下を掻きながら説明した。
「あれですか? グルス兄貴が『今は広報の時代だ』とか言って、ぜひ掲げようって強く主張したんですよ。」
「効果はありますか?」
「もちろんです! 注文がめちゃくちゃ増えましたよ。今も仕事が山積みで大変です。」
「それは良かったですね。」
何はともあれ、グーレンの仕事がうまくいくのは、喜ばしいことだと思い、鍛冶屋に入ると、忙しそうに作業していたグーレンが笑顔でレオンを迎えた。
「おお、よく来た。」
グーレンはすぐに金庫からレオンの剣を取り出して渡した。
以前は目立たない地味な外観だったが、今はガードの両側に赤い宝石が細長い目のように埋め込まれ、柄にもより精巧で華やかな装飾が施されていた。
「〈欺瞞者〉を倒したとき、この剣で額をぶっ刺したって言ってたよな? そのときに、どうもヤツの魔力をかなり吸収したみたいだ。
それで色々と調べて試してみたのだが、幻術への耐性が生まれて、さらに魔力付与の限界が広がっていた。
〈欺瞞者〉を討ち、その魔力を一部取り込んだこの剣は、もう名を持つべき存在になったと言える。
それでなんだが、君、何か剣の名前を考えてあるか?」
「いえ、特にそこまでは。」
「そうだろうと思ってな。わしが考えておいた。『欺瞞者殺し』ってのはどうだ?」
レオンとしては、自分の剣に名がつくことに、まだ違和感というか、気恥ずかしさがあった。しかし、この剣で欺瞞者を討ったのは事実であり、剣を作った本人であるグーレンの提案を断るのは失礼な気がした。
(別に俺がこの剣の名を大声で叫んで、振り回すわけでもないし、そう広まることもないだろう。)
そんな考えもあった。
「分かりました。そうさせていただきます。ずいぶん手をかけてくださったようですが、費用はどのくらいお支払いすれば?」
「何言ってんだ? これはわしからの贈り物だ。〈欺瞞者〉をわしの剣で討ったことへのサービスだよ。」
グーレンは満足そうに胸を張った。
「それに、君も店の外のあれを見ただろ? グルスのやつが『こういうのは積極的に広めないと』って言うから、試しにやってみたんだが、効果は抜群だ! おかげでわしの名前もずいぶん知られるようになったぜ。ついでに、この剣の名もどんどん広めてやるよ!」
「いえ、それはちょっと。」
レオンは遠慮がちに制止した。自分一人の力で成し遂げたわけでもなく、まだ鍛錬が必要な身で、変に有名になるのは避けたかった。
グーレンはそんなレオンを見て、にこりと微笑んだ。
「こういうところもギデオンに似てるな。あいつも、無駄に名前が広まるのを嫌がって、静かに生きたいって主義だったっけな。
もっと野心を持てよ。君はまだ若いし、これからもっとたくさんの偉業を成し遂げることになるだろうよ。」
グーレンは手を伸ばし、レオンの背中を軽く叩きながら豪快に笑った。そして、レオンに手紙と小さな箱を手渡した。
「キベレに着いたら、わしの従兄弟のジルドにこれを届けてくれ。ヴルカス鋼の剣を作るきっかけをくれたお礼くらいはしないとな。」
「わかりました。必ず届けます。」
グーレンの鍛冶屋を出ると、ユニスが言った。
「ジルドさんって、グーレンさんの従兄弟だったんだ。親戚なのに、作る武器のスタイルがずいぶん違うのね。」
「知ってる人なの?」
アルがユニスに尋ねた。
「何度かその鍛冶屋に訪ねたことがある。ジルドさんは、美しく繊細な武具を作ることで有名なの。エルフたちもよく利用するのよ。」
「ほう、その人が作った武器を見るのも面白そうだな。」
アルが興味を示した。




