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SF 転生事典

作者: 浅間 数馬

はじめに


 本書はライトノベルで多用される「転生」に関する事柄を集め、SFとして真面目に考察し、独自の解説を行うものである。

 転生については様々な事例(作品)があり、そのすべてを網羅することは不可能である。よって、調査範囲が筆者の嗜好に偏っていることをお断りしておく。


 なお、言わずもがなであるが、本書はフィクションである。実際の物理学を参考にしているが、真に受けないでいただきたい。気になる部分はネットで検索するなどして、真実を確かめて頂ければ幸いである。

 また、文体が多少硬いのは「まじめ」を装っているからである。その点も合わせてお楽しみ頂ければ幸いである。


 1章の序論は事実に仮説を交えたものである。その硬い文章の中でも 1.1 節は特に硬いので、辞書的に参照して頂ければ良いと思う。そもそも事典の体裁を装っているので。

 2章の各論は仮説に所々事実を交えたものである。こちらは気楽にお楽しみ頂きたい。

 3章の試論は転生とは直接関係ないが、SF的に隣接した事項を転生と同列に扱っている。


1. 序論


 転生とは、本書をお読みになっている読者と同じ世界、同じ時代を生きた「意識」が、過去や未来、平行世界や異世界に移り、人間とは限らないその世界の生き物として生活を営むことである。

 一般に、転成した人は元の世界に戻れない。転生先の世界で一生を終えて物語が終わる。

 転生の原理や仕組みは不明であるが、本書では1つの仮説を記す。


 まず、意識とは何かが現代の物理学では明らかになっていない。脳の仕組みや、思考中の脳の活動状況などは徐々に明らかになっている。だが、脳内を移動する電気信号や化学物質の移動が意識かというと、そうではないようだ。もし、そういったものが意識であるならば、AI に意識を持たせることができそうだが、おそらく、現在の AI はどこまで発展しても意識を持たないであろう。


 現代物理学では意識が何で構成されているか解らない。従って、意識が時空や平行世界などを行き来する現象を考察することはできない。

 しかし、それでは話が終わってしまうので、本書では仮説を立てて話を進める。


 その仮説とは、


・意識は「魂」が持つものである

・魂は「ダークマター」によって構成される

・ダークマターは「5次元空間」と「4次元空間」を自由に行き来できる

・魂と肉体は「第5の力」で結びつけられる


という4つである。


 魂という言葉は知られているが、その実態は誰も知らない。だが、その存在は受け入れやすいものである。

 肉体に魂が宿っているから生きている。魂が抜けると肉体は死に至る。この考え方は古今東西多くの人が自然に受け入れていた考え方である。その魂が意識を持っているという考えも自然に受け入れられるであろう。

 しかし、魂の存在は物理学をはじめとする科学で確認されていない。そこで、本書では魂の構成要素がダークマターであると仮設する。ダークマターとは何か? それはこの後すぐに説明する。


 なお、仮説が4つも入ったら論理的ではないという指摘は当然あるだろうが、本書もラノベのひとつであるのでご容赦いただきたいというか、楽しんでいただきたい。


1.1 ダークマター


 人類が観測できていない物質の総称である。宇宙が今の姿を形成するために必要な全質量に対し、人類が観測できている通常物質はわずか 4% である。残りの 96% の物質は観測できていない(見えない)ことからダークマターという。

 ダークマターは電磁波に反応しない。光や電波を発したり反射したりしないため、光学望遠鏡や電波望遠鏡で観測することはできない。

 だが、ダークマターは質量を持つ。質量があると重力が発生し、周囲の空間が歪む。ダークマターがたくさん集まっているところは大きな重力が発生し、周囲の空間が大きく歪む。

 そして、歪んだ空間を光や電波が通ると、空間に沿って光や電波が曲がって進む。この現象は、まるでレンズで光を集めたように見えることから「重力レンズ」と呼ばれる。

 ダークマターがたくさん集まっている場所では重力レンズ効果を生じさせる。地球から見て、その場所の向こう側に適当な天体があれば、そこから発せられる光や電波が曲がって観測できる。つまり、重力レンズの存在は光や電波で確認できる。

 ダークマターの実態は解っていないが、この方法によってダークマターが集まっている場所は複数発見されている。ただし、重力レンズは、最低でも太陽程度の質量がないと観測が難しい。現在発見されているダークマターのたまり場は、太陽の数十倍以上になる質量のダークマターが集まった場所だけであり、ダークマター1つ1つ(ダークマターが粒子のようなものと仮定した表現)が発見されているわけではない。

 なお、ダークマターを分類し、「ダークエネルギー」と狭義のダークマターに分けることがある。本書では話を簡略化するために両者を合わせた広義のダークマターを用語として使用する。


 ここからが本書の仮説である。以降の文は真に受けずに楽しんでいただきたい。


 ダークマターは宇宙空間のどこにでも存在すると考えられる。我々が生活する日常的な空間にも一定量存在している。だが、光や電波に反応しないので見ることも観測することもできない。

 質量を持つので発見されても良さそうなものであるが、現在のところ発見に至っていない。その理由は、ダークマターに反重力の性質があるためだと考えられる。そのため、重力を用いた質量計ではダークマターの質量を計測することはできない。


1.2 第5の力


 現代の量子物理学では、物質に作用する力として重力、電磁気力、「強い力」、「弱い力」の4つが知られている(ホント)。

 強い力、別名「強い相互作用」とは、クオークを結びつける力である。これにより、陽子と中性子が構成されている。強い力を断ち切るには、重力や電磁力よりも遙かに強い核分裂などの大きなエネルギー反応が必要である。

 一方、弱い力、別名「弱い相互作用」は、原子核のベータ崩壊等の原因となるものである。強い力に対して遙かに弱いのでこう呼ばれている。


 ところで、魂であるダークマターと肉体である通常物質はどのような力で結びつけられているのであろうか?

 先の4つの力は通常物質に働く力である。ダークマターに作用するかどうかは不明である。重力レンズ効果を起こすことは確認されているが、通常物質との間にいわゆる万有引力が働くかどうかは確認されていない。また、光や電磁波に反応しないことから、電磁気力は働かないことが予想される。強い力と弱い力に至っては、ダークマターが既知の素粒子で構成されたものかどうかも解っていないので議論できない。


 本書では仮説として、通常物質で構成される肉体とダークマターで構成される魂を結びつける力として「第5の力」を考える。

 第5の力は通常物質とダークマターの間に働く力である。おそらく、ダークマターにだけ働く第6以降の力も存在すると予想されるが、現時点では考察することも難しい。


1.3 5次元空間


 我々人類が暮らしている空間は3次元の広がりと時間軸が合わさった4次元空間である。

 4次元空間では、自らの意思で上下左右の3次元方向に自由に移動することができるが、時間軸方向に移動することはできない。すなわち、過去や未来への時間旅行は不可能である。

 一方、もう1軸加わった空間が5次元空間である。5次元空間では、第5の軸に沿った方向に移動することはできないが、時間軸方向には自由に移動することができる。つまり、5次元空間を介することで時間旅行が可能になる。


 なお、5次元空間は理論的には存在するが、現在のところ実在は確認されていない。


1.4 平行世界・異世界


 読者や筆者が存在する4次元空間の世界は1つである。だが、同様な4次元空間の世界は複数ある。同時に存在している世界を「平行世界」という。平行世界は量子論から生まれた考えであるが、現実の物理学でも仮説に過ぎない。

 平行世界は複製によって分裂して発生する。複製当初はほとんど同じであるが、時間の経過とともに差異が増えて類似点が減っていく。時間軸上のどこで複製したかにより、我々の住む世界との差異の多少が異なる。


 平行世界は元々1つであったが、何らかのきっかけで複数に複製されたと考えられる。そのきっかけは不明であるが、後述する逆行転生がその1つであると考えられる。

 そして、宇宙創生期に複製された平行世界では、我々の住む世界と物理法則が異なることがある。平行世界のうち物理法則の異なる世界を総称して「異世界」という。たくさんある異世界の中にはいわゆる超能力や魔法などが使える世界もある。


2. 各論


第2章では序論で述べた基本概念を用いて転生について考察する。


2.1 魂


 魂はダークマターによって構成されたものである。ダークマターは質量を持つが、反重力の性質を持つため、重力式質量計ではその質量を計測できない。そのため、質量を持った魂が我々の肉体内にあっても、通常の体重計で計測できる質量は肉体を構成する通常物質の質量のみとなる。


 魂と肉体は第5の力によって結びつけられている。

 魂と結びついた有機物を生命という。有機物と魂は生命に必要条件であるが、ただそこに存在するだけでは生命にはならない。生命になるためには、第5の力によって肉体と魂が結びつく必要がある。

 人工生命の研究が成功しない理由は、有機物に魂を結びつけることができないからである。


 魂は記憶、意思、思考能力、感情を持つ。ただし、魂単体ではその能力を十分に発揮できない。持てる能力のすべてを発揮するには肉体の脳が必要である。


 生物には肉体の構成が単純なものから高度なものまで様々なものがある。魂も同様に単純なものから高度なものまで様々である。単純な肉体には単純な魂が、高度な肉体には高度な魂が結びつくことが一般的であるが、例外もある。

 高度な魂が持つ能力を活用するには高度な脳が必要である。従って、単純な肉体と結びついてしまった高度な魂はその能力を発揮することができない。それどころか、魂の能力自肉体も成長できずに肉体にあったレベルまで退化してしまう。

 また、植物にも感情があると言われているが、これは植物の体にも魂が結びついているからである。ただし、植物には脳がないのでその魂は比較的単純なものであり、知的な行動はできないのである。


 魂はダークマターで構成されるため、5次元空間と相性が良い。通常、肉体から抜け出た魂は第5の力によって5次元空間に引き込まれる。

 余談だが、魂が抜けた肉体を「骸」という。また、肉体から離れたものの、5次元空間に移行せずに4次元空間に留まっている魂を「霊」という。


 5次元空間に移行した魂は縦横高さの他、過去や未来への時間軸の移動が可能になる。ただし、魂が自らの意思でどの方向にも自由に移動できるわけではない。

 これは、4次元空間に居る我々が自らの力で空を飛べないことと同じである。我々が空を飛べない理由は、自らの体だけでは重力に逆らう力を出すことができないからである。よって、主に地形や建物、乗り物などを用いなければ高さ方向を移動することはできない。

 魂がどのように時間軸を移動しているのか、その手段については今後の研究課題である。


2.2 誕生


 新たに肉体が生まれる際に、新しい魂が作られる。魂の作られ方は生物毎に異なるが、人間の場合はそもそも卵子と精子のそれぞれに魂の素がある。この魂の素が融合されて新しい魂が構成される。

 また、DNA にもダークマターで構成された部分があり、細胞分裂の段階で魂の構成情報が複製されている。

 脳が発達した生物の魂は、脳の成長とともに魂も高度に発達し、高度な感情や高度な思考能力、大量の記憶力を持つようになる。


2.3 死


 老衰や病気、怪我などによって肉体が生存できなくなると第5の力が弱まり、魂が肉体から抜け出る。これが生命の死である。

 生命の肉体を構成する一般的な細胞は、細胞分裂の回数に制限がある。この制限に達すると細胞が分裂することができなくなって老いていき、やがて死にいたる。だが、魂にはそのような制限はない。すなわち不老である。

 余談だが、ガン細胞は細胞分裂の回数に制限がない。このことと魂の関係はまだ明らかになっていない。将来、ガン細胞の研究が進むと人は不老になれる可能性がある。


 さて、一般に肉体から抜け出た魂は5次元空間に移行する。しかし、事故などで急激に肉体が破壊される際には、魂が抜ける間もなく破壊されることがある。この場合、魂は死を迎える。魂は不老であるが不死ではないのである。

 また、これとは別に、生への強い執着などにより、肉体から離れたにもかかわらず4次元空間にとどまるって霊となる魂もあることは前述の通りである。


2.4 転生


 死亡したことによって5次元空間に移行した魂は、縦横高さと時間軸上の移動が可能になる。ただし、一定の制限があり、自由に移動できるわけではないことは 2.1 節で述べたとおりである。

 新たに肉体が生まれる際には魂も生まれるのであるが、このときに5次元空間から魂が入り込むことがある。これを転生という。転生する際に魂が肉体を選ぶことはできないようである。

 どのようなきっかけでどの肉体に魂が入り込むのか、そのメカニズムはまだ明らかになっていない。新しい肉体形成時に上手く魂が作れなかった場合に5次元空間から入りやすいのではないか。あるいは新しい魂が弱い場合に5次元空間から入り込みやすい、などという説がある。しかしながら、転生した人物に話を聞いても5次元空間や転生時の記憶が残っていることは極めて希なため、詳しいことは解っていない。


 転生する際に、肉体と供に新たに生まれる魂と5次元空間から入り込む魂は競合することが多い。競合した場合、強い魂が残る場合と、両方とも残る場合がある。

 一般には、肉体との結合が強い魂が残り、弱い魂は消えたり5次元空間に追いやられたり、眠りにつくことになる。両方の魂が同程度に強い場合や、強い魂の心が優しい場合などは協調して共存する場合もある。

 共存する場合、肉体を制御する魂が時々入れ替わる多重人格者となることもある。


2.5 順行転生(生まれ変わり、輪廻転生)


 「順行転生」は転生の一種である。魂が時間軸を未来方向に移動した末に転生した場合をいう。「輪廻転生」とも言い、古くから知られている現象であり、狭義の転生は順行転生を指す。

 順行転生した魂は未来の知識などは持っていない。新しい時代を生きるため、過去の知識や経験を活かすのみとなる。

 順行転生は一部の宗教で教義に取り入れている。


2.6 逆行転生


 「逆行転生」も転生の一種である。魂が時間軸を過去方向に移動した末に転生した場合をいう。21世紀になってから認識されるようになった。

 逆行転生では魂が未来の知識を持っていることが多い。転生者がこれを活用すると歴史が大きく変わってしまう。このため、逆行転生が起きると平行世界が発生すると考えられている。


2.7 異世界転生


 「異世界転生」も転生の一種である。魂が6次元空間に入ることにより、第5の軸方向に移動可能となって引き起こされる事象であると考えられる。しかしながら、5次元空間のことも十分に研究されていない現在、6次元空間はまったく未知の世界である。

 異世界転生すると異世界にも平行世界が生じると考えられているが、妄想の域を出ない。


2.8 転生者


 転生した人を「転生者」いう。前回4次元空間を生きた記憶がある場合は、転生者が転生者としての自覚を持つ。

 しかし、5次元空間を経由した時点で、あるいは転生の最中に前回の4次元空間での記憶を失ったり、極端に薄れてしまうことも多い。この場合は転生していても初めての人生を送る自然人として生きることが多い。


2.9 自然人


 魂が転生せず、肉体とともに新しい魂を持って生まれた人を「自然人」いう。また、転生した魂が肉体に宿っていても、発現しなければ自然人とされる。


2.10 発現


 1回以上4次元空間を生きた魂が転生後、転生者としての自覚を持つ事象を「発現」いう。

 生まれる瞬間や胎児の時に発現する場合もあるが、幼少期に発現することが多いようである。希に心身が十分に成長してから発現することもある。

 発現するまでは肉体とともに生まれた新しい魂が肉体を制御しており、転生した魂は眠っている。しかし、転生した魂が発現すると前述の競合が発生し、強い魂が残ったり、協調して生きるようになる。

 転生した魂が発現する理由は、肉体が怪我や病気になったり、新しい魂に強いストレスがかかるなどして、新しい魂が弱ることであると考えられている。魂が弱って生存の危機が訪れると、眠っている転生した魂を肉体が呼び起こすという説もある。

 肉体とともに生まれた魂は弱っていることが多いため、転生した魂が発現すると、新しい魂は肉体を離れて5次元空間に移行し、転生した魂が体を支配することが多い。


 なお、転生した魂は1つとは限らない。1つの肉体に複数の魂が転生しており、それらが同時に、あるいは順次発現する場合もある。その際は、発現する都度競合が発生する。競合の末に複数の魂が協調することを選んだ場合は多重人格者になる。


3. 試論


 転生とは直接関係ないが、魂や時間軸の移動に関連する SF 要素を考察する。


3.1 霊


 肉体と魂を結びつける力が第5の力である。肉体から離れた魂を5次元空間に移行させる力も第5の力である。一方で、魂自身が第5の力を発揮して4次元空間に留まると霊になるが、ここではその原因を考察する。

 魂はダークマターで構成されている。ダークマターに作用する力を本書は第5の力と呼んでいるが、その詳細は不明である。だが、人生でやり残したことや気がかりなことがあると、それに対する想いから第5の力が強く働き、5次元空間への移行を妨げるようである。


 通常、ダークマターは通常物質と干渉しないので、霊が4次元空間(この世)に留まったとしても、周囲の人やものに影響を与えることはない。しかし、霊が発する第5の力が強すぎると、生きている人の魂に作用することがある。この作用によって人の気配を感じたり、死んだ人の姿が見えるなどの様々な現象を引き起こすと考えられる。

 この場合、霊と干渉される人の魂との相性や、その人の第5の力に対する感度によって結果が大きく異なる。このことから、大きく影響を受ける人を「霊感が強い」などという。霊感が強い人は少数派である。


 また、霊の発する第5の力が周辺に分布しているダークマターに作用することで、ラップ音やポルターガイストを引き起こすとも考えられる。この場合、写真や映像、音響に記録が残る。

 この現象が起きると霊感が強くない人でも異常な事態が起こっていることが解る。また、このような体験によって霊感が強くなることもある。


3.2 臨死


 肉体が生きているうちに一時的に魂が肉体を離れ、その後再び肉体に戻る現象を臨死という。この現象は、怪我や病気、高齢化によって第5の力が一時的に弱まることによって起こる。そして、体力の回復や魂の強い意志によって第5の力が復旧することで魂が肉体に戻る。

 多くの場合、臨死中に肉体を離れた魂は、俯瞰するように自らの肉体や親しい人を感じたり、耳で聞くように周囲の声を感じることがある。

 さらに、肉体を抜け出した魂は5次元空間まで移行することがあるが、魂がその場に定着せずに4次元空間に残っている肉体に戻ると蘇生することができる。ただし、短時間で魂が肉体に戻らないと、肉体は死に至る。


3.3 蘇生


 臨死のうち、心肺停止に至ったものの、その後魂が戻って心肺機能が回復する現象を「蘇生」という。蘇生は経験的に知られているため、遺体は死後24時間以上安置することになっている。


 魂が肉体に戻って蘇生した後、5次元空間の記憶を死後の世界として語ることがある。ただし、見た場所や範囲、さらにはそのときの心理状態や残った記憶の鮮明さなどに個人差がある。さらに、高度な思考を行うために必要な脳と分離しているため、鮮明に記憶することができない。このため死後の世界と言われる5次元空間の様子は4次元空間に正しく伝わっていない。


 なお、心肺機能が回復した時点で蘇生とされるが、脳が受けたダメージが大きい場合はその後意識が戻らずに植物状態になることもある。


3.4 タイムトラベル


 時間軸を移動する道具や乗り物を使用して、過去や未来に移動することを「タイムトラベル」いう。現在のところ道具が開発されていないどころか理論も確立されていない。

 タイムトラベルで未来に行った場合は現在に戻ってこられると考えられるが、過去に行った場合、過去の社会に干渉しすぎるとタイムパラドクスが発生すると考えられる。この場合、未来が変わってしまうので旅行者が元々居た時代に向けて時間軸を移動しても平行世界に入り込んでしまい、元の暮らしには戻れないと考えられている。


 一般に、SF作品では空間座標の定義には触れずに時間移動する。

 しかし、地球の自転、公転、銀河系の自転などにより、時間とともに空間も移動しなければ、過去や未来の同じ場所に移動することはできない。このため、SFに登場するタイムマシンはこれらの運動に関する計算能力があり、さらに空間移動能力も備えていると考えられる。場合によっては非常に遠い地点へ一瞬で移動することから、空間移動の面でも相対性理論を超えたものである。


3.5 タイムスリップ


 4次元空間の中で物体が時間を移動する自然現象。原理・原因は不明であり、相対性理論では不可能とされている。

 自然現象のため、行き先の時代を決めることはできない。持ち物など、周囲の物質も同時に移動することが多いが、なぜか人に都合の良いものだけが移動することが多く、衣服や持ち物は移動するものの、アスファルトや電柱、壁、動植物などは移動しないことが多い。また、移動によって体調に異常が生じることもない。

 さらに、移動した先は移動前と地理的に同じ場所であることが多い。そういった場所は瞬時に死に至るような場所ではないが、それは我々に伝わっている報告がすべて生き残った人物によるものであるからである。場合によっては海中や土中、空中や宇宙空間に出現して短時間で命を落とし、タイムスリップが起きたという記録が何も残らないこともあるかもしれない。

 移動した先が移動前と地理的に異なる場所である場合は、地球の自転や公転の影響と、移動した時間幅が関係していると考えられている。

 タイムスリップした場合、結果的に現代に戻れないことが多い。現代に戻れる場合は、平行世界を横断して元いた世界に戻ることが多い。原理・原因は不明である。神や大いなる意思の存在を考慮する人も多い。


3.6 タイムリープ


 肉体を離れて精神だけが時間移動することを「タイムリープ」という。量子論的な考察が行われている。

 本書では順行転生、逆行転生の原理としてダークマターが5次元空間を仲介する説を採用しているが、まだ決定的ではなく、タイムリープこそが真の原理である可能性もある。今後の研究に注目したい。


3.7 5次元空間管理機構


 5次元空間にも管理・統治機構があり、秩序があるとの考察、報告が寄せられている。

 古くから閻魔大王と天国、地獄の存在が言い伝えられている。また、昨今では死役所なる行政機関の存在が報告されている。

 残念ながら5次元空間での体験は記憶に残りにくいため、蘇生や転生によって4次元空間に戻った人物からも正確には報告されていない。


おわりに


 転生を扱った創作の中には極めて興味深い作品がある。筆者は喜んで拝読しているが、転生とは何かという根本的な問題が常に引っかかっている。その部分を少しでもスッキリさせようと考えた内容をまとめたモノが本作である。


 本作が一層読者をモヤモヤさせることになるかも知れないが、そこのところはぜひお楽しみ頂きたい。

 読者のご意見、ご感想をお待ちしております。


浅間数馬


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 転生とは関係ないが、ダークマターで構成された魂を題材にした作品があります。ぜひお読みください。

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