9…結婚できないこともない
ミアとカイは、留学に来ることになったジュゼとアーティとチョークと一緒にスフィル辺境伯領へ戻ることになった。
「出発するまで3日ある。エスカー国にないことを楽しんでみてはどうだ?属性検査や、城下や、海が良いだろう」
国王が提案してくれたので、今日はミアとカイは王城内で属性検査をすることになった。
今はアーティとチョークも一緒に歩いて向かっているところだ。
「魔法を使うことはできるけど、エスカー国では属性までしっかり調べることはしないものね」
ミアがカイにそう言うと、カイは聞きたいことがあったことを思い出し、後方を向いた。
「……属性は何があるんだ?」
カイは警戒しながら、アーティとチョークの護衛兼従者たちに聞いた。
「基本となるものは、火、風、水、土です。稀にですが聖と闇もあります。第一皇子殿下は風属性、第二皇子殿下は土属性、第三皇子殿下は珍しい聖属性となっております」
カイはペコリとお辞儀して、ミアの方を向いた。
「姉上は何なんだろうな?」
ミアはその言葉を聞いてにこにこし始めた。
「何かしら。私、実はすっごく楽しみなの。カイは何属性かしら?? アーティとチョークも何属性かしら」
もう、責任を持って呼ぶことにしたミアは、アーティとチョークに話し掛けた。
今日も子どもの姿の双子たちは、名前を呼ばれて大喜びだ。
「属性検査は5才になったらするんだぞ」
得意顔でアーティが言いながらミアとカイの間に入って、2人と手を繋いだ。
「僕たちもう5才だからね」
そう言いながら、チョークはミアと手を繋いだ。
幾何学的な祭場のような建造物に着いた。
属性検査は簡単なもので、大きな大きな水晶のようなものに両手で触れると、水晶の中に映し出されるのだとアーティとチョークの護衛兼従者が説明した。
「俺から? いってくるね!」
1人ずつ入って行き、出口は別なので終わるまで皆の結果を知ることができない。
アーティ、チョーク、カイが入って行き、最後にミアが部屋に入った。
部屋の中央にアーティとチョークと同じくらい大きな水晶が置かれている。
「両手で触れたら良いのよね」
ミアがそっと触れた瞬間、真っ白に光り、目を開けられなくなってしまった。
「せ、聖属性です!」
◇
コンコン
珍しくジュゼが1人でミアを訪ねてきた。
同属性だと聞いて来てくれたのかもしれない。
属性研究をするくらいなので、アルカル国の方が魔法については研究されているはずだ。
エスカー国は一応反戦国なので、基本的に魔法は生活に少し役立てる程度にしか使わないし、そんなに魔力を持った人間がいない。
だから、聖属性はどんな魔法が使えて、どんな人たちがいるのか、戦う時はどんな役目があるのか等々、ミアは聞きたいことがあるのだ。
「一緒だったんだね」
ジュゼは少し悲しそうに笑う。
それを見て、ミアは何だか胸が苦しくなった。
「何で、そんなに悲しそうなんですか?」
ミアは気づいたらジュゼに話掛けていた。
ジュゼは奇麗な目でミアの目を見ながら答えてくれた。
「聖属性同士は結婚できないんだよね」
そんな縛りがあるのかと素直に聞いているミアを見て、ジュゼは優しく笑って続けた。
「あ、でも、そんな決まりはミアには当てはまらないから大丈夫か」
確かに、ミアはエスカー国の人間なので、そのあたりは関係ないだろうなとミアは考えている。
王族として婚約者を決めなければならないし、魔法の属性で結婚に縛りがあるなんて、ちょっと窮屈ね……
2人の会話がなかなか噛み合っていないけれど、今ここにはそれに気付いてくれる人がいない。
突然、ミアはパッと顔を上げた。
「ジュゼさんも幸せになってくださいね」
ミアがにっこりと笑うと、ジュゼも嬉しそうに笑う。
「そうだね」
ジュゼはミアの頬にそっとキスをした。
「っっ!!!!」
ミアは声にならない叫び声を上げた。
美形に頬にキスされるだけでもミアとしては驚愕なのに、頬といっても口に近い場所だったから、ミアの鼓動がおかしなことになっている。
たくさん聞きたいことがあるのに……
今のミアは真っ赤になる顔を手で隠すので精一杯のようだ。